第306話 付与スキルとは……?
「これを何処で手に入れた……?」
本から俺に視線を変えて最古のエルフが質問する。
「ドワーフの村の奥にあるジャングルで見つけたけど?」
「……」
「最古のエルフよ、解読出来そうか?」
シャレの言葉に曖昧に頷く。
「これから中を読むが、表紙に書かれている文字は古代文字だ」
「そんなに、古いのか……」
「本の見出しには、付与スキルについてと書いているな」
「──ッ!?」
最古のエルフの言葉に驚く。
それは、今俺が一番欲しかった情報が本の中に詰まっている可能性がありそうだからだ。
「な、なんて書いているんだ?」
「まぁ、待て──暫くじっくり読ませて貰う」
文字に関しては問題無く読めるのか、それからは一言も話さず読むのに集中する最古のエルフであった。
そして、どれ程時間が経過したか分からないが俺達が部屋内をウロウロして時間を潰していると、パタンと本を閉じる音が一瞬響き、皆が椅子に座っているエルフに注目する。
「ふむ。アトスとか言ったか?」
「あぁ」
「お前はもしかして付与スキル所持者なのか?」
最古のエルフの言葉に頷く。
「それは珍しい──私も今まで生きてきた中で二人しか会ったこと無い──ランクは?」
ランクについて言おうか悩んでいると、直ぐに次の言葉が飛んできた。
「あぁ──やっぱり良い。この本には付与スキルに付いてと、昔の事が書かれている──スキルの方は興味が無いが歴史の事はとても興味深い事が書かれていた」
「歴史?」
「ふむ。まぁまずはスキルについての説明の方が嬉しいだろう?」
最古のエルフの言葉に俺は素直に頷く。
「本には、付与スキルについてこう書かれている」
そう言って、最古のエルフはツラツラと読み上げていく。
付与スキルとは線ではあらず、円である。
しかし、付与スキルとは円でもあらず、本質は線と円を掛け合わせたものである。
この本を読んだ者は、先ず円を意識するべし。
そして円の後は再び線を意識するべし。
「──と書かれている。他にも書かれていた様だが、あまりにも古過ぎて掠れて読み取れん」
最古のエルフの言葉について考える。
「線では無く円? 何の事だ?」
「謎かけなのかなー?」
「ふむ。恐らく続きが掠れた部分に書かれていたのでしょう」
「アトス様、早速特訓しますか?」
チルの言葉に頷く。
「あぁ──まだ何の事か分からないがヒントは得られたからな、取り敢えず円を意識して見るか!」
そう言って、俺達が家を出ようとすると、止められた。
「少し待て──歴史の方も聞いていくが良い」
あまり興味が無いんだけどな……
俺がどうしようか悩んでいると、同じ事を思っていたのかロピが口を開く。
「あはは、大丈夫だよ、歴史なんて興味ないか──ッイタ!?」
「姉さん、ここまで解読してくれた人に失礼」
ロピが失礼な事を言った為、妹のチルがチョップで指導した。
よ、良かった……ロピの様に口にしないで……
何やら周りを見ると、聞く気満々の雰囲気が出ているので、俺も従って大きなテーブルを囲む様に座る。
「うー、チルちゃんがぶった……お兄さんも歴史なんて興味無いよね?」
「……」
俺にだけ聞こえる様にロピが呟いて来るが、俺は聞こえないフリをして最古のエルフが話し出すのを待つ。
「此処には1000年以上生きている私ですら遥か昔に感じる程前の出来事が書かれていた」
「最古のエルフよ、どの様な事が書かれていたんだ?」
「モンスターについての歴史だ」
その言葉に皆が表情を変える。
「この本に寄れば、モンスターは今より更に強かった様だ」
「今より強い……?」
ただでさえ、今でも苦戦する相手なのに今より強いってどういう事だよ……
「それと、あまり信じられない事も書かれている──どうやら、昔のモンスターは人間の言葉を理解し話す事が出来た様だ」
「「「「「──?!」」」」」
会話だと……?
「更にモンスターの事が書かれている様だが、こちらも古過ぎて掠れて読み取れんな」
「他には何か書かれているのか?」
「他にも、嘘か本当か分からない事が書かれている──どうやら、そんなモンスターと常に争っていた者達がいた様だ」
「人間達だろ?」
「いや、本によると人間では無くドラゴンと書かれているな」
この世界、ドラゴンなんているのか?!
俺は、気になり周りに問いかける様に話す。
「え? ──この世界にドラゴンなんて居るのか?!」
俺の言葉にシャレが答える。
「いや、居ない筈なんだがな……空想上の生き物として子供の頃に寝る前とか話を聞くぐらいでしか知らないな」
「お兄さん、私とチルちゃんもお母さんから、ドラゴンのお話は良く聞いてたよー」
「はい、母が寝る前に良く話してくれました」
どうやら、以前俺が住んでいた所と同じ様に空想上の生き物としては、皆が知っている存在だが、実際に見た者は居ないって事か──俺が頭の中で結論付けていると、最古のエルフが皆に言い聞かせる様に口を開いた。
「ドラゴンは居る……」
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