第300話 キル達との再会

 シャレ達、エルフ族に協力する事を伝えてから、何日か経過した時、エルフの村にドワーフ族が到着した。


「アトス、今キル達が到着したんだが一緒に出迎えに行くか?」


 お? もう来たのか早いな。


「行く行く」

「私も暇だからいくー!」


 結局全員でキル達を出迎える事にした俺達は村の入り口まで向かう。


「キル達元気かなー?」

「ふむ。ドワーフの村を出る際にアトス殿の事をかなり心配されていましたな」

「あはは、お兄さんあの時死にそうだったもんね」

「危険な状態でした」


 キル達との再会を楽しみに入り口に行くと見張りのエルフがシャレに向かって頭を下げる。


「シャレ様──今ドワーフ族代表のキルさんが見えています」

「ああ、門を開けてくれ」

「はっ!」


 門を開ける際に門番のエルフ達が一度俺の方を侮蔑する様な目で見て来るのを感じた。


 はぁ……、これ本当に大丈夫かね……?


 開門するとそこにはキル達ドワーフ族と、更には人間族のフィールやトインなど変異体の戦いで一緒だった奴らまで居た。


「アトス──元気そうだな!!」

「おい、見ろよ──アトスの奴元気そうだぞ!」

「オイラ達、心配してたんだぞ!」


 キルを始め、一斉に俺の所まで来ると再会を喜びあった。


「アトス、大丈夫そうで安心したぞ?」


 ヒゲモジャのキルが目を細めて嬉しそうにしていた。


「あぁ、皆んな、心配させて悪かったな──なんとか回復したよ」

「おめぇー、一向に起きなかったから

俺達なんて毎日通い詰めたんだぞ?」

「オイラ達に何か出来る事は無かったけど心配したんだぜ?」


 フィールとトインも笑顔で嬉しそうだ。


「あぁ、リガスから聞いたけど毎日見舞いに来てくれたんだってな──ありがとうな」


 俺達が話していると、横からシャレが話しかけて来る。


「折角の所悪いが、早速会議を始めたいのだが良いか?」

「あぁ、ワシらはその為に来たからな」


 そう言ってシャレがキル達を村に引き入れようとした時に大きな声でシャレを呼ぶ声が聞こえた。


「シャレちゃん!」


 呼ばれた方に顔を向けるとそこには眼鏡を掛けているトラクが居た。


「あー、エルフの眼鏡さんもいるねー」


 トラクはシャレに近付きお互いの事を抱きしめ合う。


「トラクも来たのか?」

「うん──だって、こういう時の為に今まで腕を磨いて来たんだし!」

「はは、そうだったな」


 シャレもトラクとの再会を堪能した後に以前と同じ広場的な所に全員で向かう事になった。


「すまないがアトス達も参加してくれ」

「あぁ、分かった」


 あまり参加はしたく無かったが、そうも言ってられないだろう。


 そして、広場にはエルフ族、ドワーフ族が集まる。


「キル」

「ん、なんだ?」

「これでドワーフ族全員なのか?」

「そうだ──緊急だと思い、急いでかき集めて来た」


 そこにはエルフ族と同じくらい、かなり多くの人数が居る。


 恐らく各種族1000人ずつ位は居るのでは無いだろうか?


「それにしても、この人数は……」


 全て合わせて2000人程の人数がこの場に居るのだ。


「ワシらドワーフ族もそうじゃが、エルフ族も実際にはまだまだ居るぞ?」

「そうなのか?」

「あぁ──ただ遠過ぎて呼び戻せ無かったり、そもそもどこに居るか分からない奴らもいるから、今回の件で集められるのは、これが限界だな……」


 それもそうだろう。この世界に住んでいる同胞を一か所に集めるなんて無理に決まっている。


「アトス達もステージに上っといてくれ」

 

 そう言われて、再びシャレの後を追う様にステージに登る俺とロピ、チル、リガスであった。


 フィール達は人間族と言う事も有り、そもそもエルフの村にまだ入れて無い様で、会議が終わった後に村に入れる様に手を回すとシャレが言っていたな。


「どれ、ワシも代表として上った方が良さそうだ」

「あぁ──頼む」


 ドワーフ代表としてキルと何人かのドワーフもステージに上がる。


「うわーすごいね……」


 ステージに上がり前を向くと、そこには数えられない程の人数の人間達が居る。


 数としては2000程だと分かっているが一斉に見ると圧巻である。


「この人数でも、まだ少ないって人間族側は一体何人いるんだよ……」

「ふむ。人間族はほっといたら、どんどん繁殖するって聞きますからな」

「ゴキブリみたいに言われているんだな……」


 俺達がステージに上がってから、ずっと騒ぎが止まらない。


「アトス先に言っとくことがある」

「なんだ?」


 キルが少し神妙な面持ちで自身の立派な髭を弄りながら呟く。


「あの戦いを一緒に共にした仲間達は俺も含めてお前を尊敬している──しかしそれ以外のドワーフ達は……人間族のお前に対して良く思ってない……分かるだろう?」


 はぁ……ドワーフ族もか……確かにさっきからエルフ達とは別の殺気立った視線を感じると思ったがそれか……


「でも、まぁ……多分大丈夫だ……」


 キルが何やら呟いたが、俺は聞き取れ無かった。


 そして、シャレとキルの言葉で周りが静かになっていく。


「俺もフィール達みたいに村の外に居たい……」

「ほっほっほ。諦めなされ」

「安心してください、アトス様に何かあっても私が守ります!」

「あ、あはは……なら私は人間族でも何でも無いから下で見ているね……」

「「「ダメ」」」


 こうして、会議が始まった……

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