第301話 異種族会議

 ステージ中央では、エルフ族代表のシャレとドワーフ族代表のキルが中央に立っていた。


 そして、二人の目の前には綺麗に半分に分かれてエルフとドワーフが客席で二人が話すのを黙って見ていた。


 すると、シャレが一歩前に出て話始める。


「ドワーフ族達よ──今回同盟を組んでくれる事を感謝する!」


 シャレの手紙で集まったドワーフ達に一度感謝の意を表す。


「既にキルから聞いていると思うが、これから約一年後に人間族達との戦争が起きる──忌々しい事だが、我々エルフ族だけでは到底勝てる相手では無い!」


 シャレの言葉にエルフ達だけでは無くドワーフ達ですら忌々しそうな表情を作っていた。


 そして、俺は気になった事をリガスに質問する。


「エルフ族は分かるけど、なんでドワーフ族も人間族を恨んでいるんだ? ──武器だって売っているんだろ?」

「ふむ。理由はエルフと同じですな──ドワーフ達の場合は、武器や防具製造の技術が欲しいが為に奴隷にされています」

「なるほど……」


 シャレはそんなエルフやドワーフ達に向かって話し続ける。


「今回は、そんな戦力差を埋める為に同盟を組む事にした──だが、ハッキリ言って我々エルフ族とドワーフ族を合わせても、到底勝てる見込みは無い……」


 シャレの言葉に分かっていた事だが、皆が暗い顔をする。


「しかし、今獣人族を始め、色々な種族に声を掛けている──だから我々は残された、この一年間で戦争の準備に全力を出したいと思う! ──その為には皆の力が必要なのだが協力してくれるだろうか?」


 その言葉に一斉に返事をするエルフやドワーフ達──その声は門の外にいるフィール達にも聞こえただろう。


 すると、シャレの横に居たキルが次に話し出した。


「まず、手始めにワシらドワーフ達は、人間族に一切の武器製造をしない事を誓おう!」


 キルの言葉にドワーフ達が頷く。


「あたりめぇーだ! ──あんな奴らに作る武器なんてねぇーよ!」

「今まで作った武器を回収してーくらいだ」


 続いて、シャレが話す。


「我々エルフ族の方はエルフで作っている薬草などを全面的に売らない様にする」


 シャレの言葉に次はエルフ達が頷く。


「シャレ様の言う通りよ!」

「私は、前々から人間族なんかに売るのは反対だったよ!」


 人間族とういう悪に皆が怒りを覚えている様子だ。


「クソ、考えれば考える程人間族がウゼェー! 次見たらぶち殺してやる!」


 ドワーフ族達がそう言い放っているのが聞こえる。


「……な、なぁ──俺帰っていいか?」


 二種族の怒りが人間族に向いている事に恐怖を覚えた俺は今直ぐにでもステージを降りてフィール達の所に合流したい気分であった。


 すると、少し静まり返った所でシャレが一瞬こちらを向いてコクリと頷き再び前を向いた。


 ──ま、待て。今のコクリは何の了承だ?! 


 何やら良い予感が一切しない、この状況に俺は無意識に身体が震えている。


「皆聞いてくれ」


 シャレが全員に話し掛ける様に大声を上げる。


「今回の戦争で我々に協力してくれる者を紹介したいと思う!」


 大体の者が、この場で紹介するくらいだから、とんでもなく強い奴が現れると期待している様子が見て伺える。


 しかし、エルフ族に関しては既に以前の会議で話を聞いていた為、殺意の篭った目で俺の方を向いていた。


 や、やめてくれよな……こんなタイミングで紹介なんかしたら、どうなるか分かるだろ……やっぱりシャレは天然なのか?


「我々に協力してくれるのはこの四人だ!」


 シャレは勢い良く手を俺達に向かって掲げる。


 すると、ドワーフ達は不思議そうな表情をしていた。


「おい、人間族が一人いるぞ?」

「盛り上げの為にこの場で殺す用だろ?」


 などと、恐ろしい事を言っている者が居た。


 だが、シャレはしっかりと説明する。


「ここにいる、人間族も我々の協力者であり、私が頭を下げて協力を申し込んだ」


 シャレの言葉を聞いた瞬間ドワーフ達は烈火の如く怒り始めた。


「ふざけんな! これから人間族と戦争するのに、人間族の力を借りる気なのか?!」


 ごもっともな意見だ……


「そんな奴の協力なんていらねぇーよ!」

「そうだ! てか、ソイツを寄越せ俺がぶち殺す」

「いや、待て俺にやらせろ!」


 人間族である、俺を否定していた筈が、いつの間にか誰が俺を殺すかの話に切り替わっていた。


 そして、エルフ達は、そんなドワーフ達の反応を見て喜んでいた。


「はぁ……シャレ──協力はしたいがコレじゃ無理じゃないか?」


 俺の言葉に、またもや慌てるシャレ。


「ま、待ってくれ! 直ぐ納める!」


 アワアワして、どうするか考えているシャレ。

 そんなシャレを横で見ていたキルが一度ため息吐いてから大声を上げる。


「静まれ!」


 その声は凄く通り皆が静かになる。


「ワシからも言っとこう」


 周りが静まり返り皆がキルに注目している所でキルは俺の方に向き、頭を下げた。


「アトス、我々に力を貸してくれ──頼む」


 その姿にドワーフ達は唖然としていた。

 まさか、ドワーフ代表のキルが人間族なんかに頭を下げるなんて信じられないのだろう。


 そして、キルに続いてシャレも俺に向かって頭を下げる。


「アトスよ、私からもお願いだ協力してくれ」


 シャレがキル同様に頭を下げた事に次はエルフ達も驚いた表情になる。


 そして、二人が暫くの間頭を下げ続ける……

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