第299話 アトスの選択 2
シャレから協力を求められてから次の日の朝に俺達は再び集まっていた。
「それで……どうだろうか?」
緊張した面持ちで聞いてくるシャレに俺は応える。
「皆んなで話し合った結果協力する事にしたよ」
「本当か?!」
「あぁ、俺らが協力した所で、どれくらい戦力になるか分からないけどな」
俺達四人が加わった所で、戦力の差がどれ程埋まるか分からない。
「ほっほっほ。謙遜ですな」
「アトス様がいれば人数の差なんて直ぐに覆せます」
「あはは、お兄さんのスキルはこういう時に絶大な効果を発揮するよねー」
三人の言葉にシャレは千切れるんじゃ無いかと言うくらいに首を縦に振る。
「わ、私もそう思う──あの変異体の時もアトスが居なければ皆が全滅していただろう!」
そう言って貰えるのは嬉しいが、本当に俺のスキルでどれくらい差を埋められるかは未知数だな。
俺はシャレに対して気になった事を伝える。
「シャレ──協力する事は良いんだが、エルフ族の奴らの問題は結局どうするんだ?」
あのエルトン達の戦いの後にマーズの手紙が来て忙しかったのか、その事については話が進んで無い様子だ。
「前にも言ったけど、お兄さんが戦わないなら私はむりー」
「姉さんの言う通りです──私もシャレ達に協力しない」
「ほっほっほ。そうなると必然的に私もですな」
三人の言葉にどんどん顔を青くするシャレ。
「か、必ず説得してみせる──もう少し待ってくれ」
それから、これからどうするかをシャレから聞いた。
どうやら、ドワーフ族は早速エルフの村に向かって来ている様で近々到着するとの事だ。
「獣人族はどうなんだ?」
「それが分からないんだ……」
「分からない?」
「あぁ──手紙は確かに渡したと部下が言っていたが、返事が来ない」
獣人族は人間族に次ぐ人口の多さの為、獣人族の協力無しでは戦争など話にならないであろう。
「大丈夫か? 獣人族無しで」
「もう少し待って返事が無い場合は私自ら協力を申し込みに行こうと思う」
流石に、エルフ族代表が行けば話を聞いて貰えるか……
「獣人族ってどんな人達なのー?」
「ロピ……お前がそれを言うのか?」
「だってー、私達小さい頃には既に人間族の住処に連れて来られてたから、詳しい事は分からないもーん」
そう言えば、ロピとチルに初めて出会った頃は二人が、まだ10歳にもなっていない時だったもんな……
ロピの問いに答える様に口を開くシャレ。
「獣人族は人口が多い為、多岐に分かれて暮らしている──それこそ種族間同士でも時には争いが起きるくらいにはな」
「でもエルフさん達だって分かれて暮らしているよー?」
「確かに我々もそうだが、エルフの場合は人数もそこまで多くないので種族同士では争ったりしない」
ロピは納得したのか、ふーんと言う感じで頷いていた。
「あはは、なんか獣人族って野蛮だね──ッいた!?」
ロピの言葉に頭を叩くチル。
「な、なんで今、お姉ちゃんを叩いたの?!」
「その言葉はダメ──獣人族が嫌がる言葉」
「え、そうなの?」
何故か俺の方に確認する様、ロピが顔を向けてくるが、俺も分からない為、横にいるリガスに顔を向ける。
「そうなのか?」
「ふむ。確かにチル様の言う通り野蛮人と言う言葉は、人間族が獣人族に対して蔑む時に使う言葉ですな」
リガスの言葉を聞いて、流石に悪い事をしたと思ったロピは反省した様だ。
「そっか……これから気をつけないとだね……」
「姉さんは思った事を直ぐに口にするから気をつけて?」
「うん! ありがとうチルちゃん!」
「姉さんの為だから当たり前」
「えへへ」
何やら、妹の愛が嬉しかったのかロピはチルに抱きつく。
「なぁ、リガス」
「はい、なんでございましょう?」
「ロピって姉だよな?」
「ほっほっほ。それがロピ殿の良いところですな」
リガスの言いたい事が何となく分かってしまう俺であった。
「ま、まぁ、兎に角獣人族に対してはこれからも同盟を結んでくれる様に頼み続けるつもりだ──いくら人数が多いと言っても獣人族だけでは流石に勝てないからな」
シャレはロピとチルのやり取りを見て、若干ペースが乱された様だ。
「それと、ドワーフ族達が来たら一先ず再び会議をするから、その時はアトス達にも参加して欲しい──皆にアトス達の協力を得た事を、そこでもう一度伝える」
「また、この前みたいになるのが目に見えているけど平気か?」
「そ、そこは私がなんとかする!」
「また、戦いになるなんて、嫌だぜ?」
「ほっほっほ。私は大歓迎ですぞ?」
「アトス様、私も、もっと戦いたいです」
リガスとチルの返答に俺とロピは顔が引きつる。
「とにかく! 次はアトスの事を認めさせてみせる!」
それから、シャレは迎えに来た二ネットと一緒に村の会議に参加すると言って家を出た。
会議に向かう前にニネットが俺達に対して感謝の気持ちで頭を下げていたが、前回の事もあり俺は数歩程距離を取ってしまう。
そして、その様子を見たニネットが珍しく、くすりと笑ってシャレと一緒に会議に向かった。
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