第284話 モンスター 3

「あそこだ……」


 俺達は小型を倒す為に総勢30人以上で森を走っていると、先頭を走っているエルフが急に止まる。


「シャレ様、小型を発見しました!」


 エルフの声に俺達も同じ方向に視線を向けてみると、そこには確かに小型が十体程エルフ族の村に向かって進んでいた。


「クッ……今まで、こんなに一斉に小型を見る事は無かったのに、どうなっているんだ……」


 シャレは小型を凝視しながら呟く。


「大鎌さんの村ではこんな事あんまり無かったの?」

「あぁ──大体は一体とかで多くても二体同時に村に向かって来る時があったくらいだ」

「ふむ。それは確かにいきなり増えましたな」


 5体でも多いのに昨日に続けて今回は10体か……何か怪しいよな……


 この場にいる誰もが変だと言う事は分かるが原因が分かる筈も無く、まずは討伐する事にした様だ。


「アトスは、全体を見回してサポートを頼みたい」

「あぁ、任せろ」

「雷弾もアトスの近くで全体的に攻撃して貰えれば助かるが、攻撃する際は周囲に伝えてくれ」


 当然だな……ロピのツェーンショットを見たシャレなら。


「分かったー! 今の私は最強だから任せて!」


 ロピの姿を見るとフル装備状態であり、背中に大型スリングショット、腰に中型スリングショットそして胸に小型スリングショットと、背中は漆黒、腰は黄色、胸は茶色と訳の分からない色合いにはなっているが──かっこいいぜ……


「剛腕と鉄壁も基本は好きに動いてくれ。私達と連携を合わすよりも、そっちの方が能力を発揮出来るだろう」

「分かった」

「ほっほっほ。助かります」


 チルとリガスが頷く。


「シャレ様、この者達をそんなに勝手に動き回らせて良いのですか?! ──特に人間族を!」


 二ネットの声にシャレは少し面倒臭そうな表情を浮かべた。


「大丈夫だ。そもそも、この四人は我々より数段強い」

「う、噂は確かに聞いておりますが、人間族に関してはよく分からない噂ばかりなので信じられません」


 二ネットの言葉に俺は少し落ち込む。

 そうだよな……俺の二つ名はよく分からない奴だもんな……

 慰める様に隣に居たロピは無言で俺の肩を叩いてくれる。


「まぁ、見ていろ。それにアトスの場合は戦闘に邪魔にならない場所だから実害は無いだろ?」

「そ、そうですが……」


 チラリと俺の方を見る二ネットに、一応好印象を持ってもらえる様に微笑む。


「やっぱり信じられません!」

「おい!!」


 思わず、突っ込んでしまった……だって、笑顔を浮かべた瞬間否定されるなんておかしいよな?


 納得のいかない二ネットを黙らせたシャレは素早く作戦をエルフ達に伝えて襲撃をするタイミングを伺っている。


「向こうはまだ此方に気が付いて無い。小型達があの大きな木に着いた瞬間一斉攻撃をするぞ」


 シャレの言葉にエルフ族全員が静かに頷く。そして、俺達が待ち構えているとも知らずに小型が大きな木の近くに差し掛かった時──


「行け!」


 シャレの鋭い一声で周りに居たエルフ達が一斉に駆け出し、それぞれの小型に最初の一撃を与える。


「アタック!」


 俺は全員に対して赤のラインを敷く。


「な、なんだ?!」

「いつもより攻撃が通るな……」


 初めて、俺のサポートを受けるエルフ達は何やら混乱している様だ。


「皆、安心しろ──それがアトスの能力だ!」


 エルフ達の動揺を抑える為にシャレが声を掛ける。


「こ、これが……あの人間族の力なのか? ──こんな強力なスキルを人間族なんかが使えるなんて……」


 シャレの側近である二ネットが一瞬こちらに驚愕した様な視線を送って来たが、今は気にしている暇はないので、戦いに集中する。


「ガード!」


 小型達の攻撃を、エルフ達が防御する為に盾を構えていたので次に青のラインを敷く。

 うん──前のドワーフ達の戦いで大分慣れたのか、この人数程度なら余裕でサポートし切れる自信があるな。


 またしても俺のガードの効果に驚愕するエルフ達だが──それもそうだろう、本来小型の攻撃はとてつも無く強力な為三人以上で防御する必要があるし、受け切ったとしても衝撃が強過ぎる為何度も受けれる訳では無い──だけど俺のサポートにより防御が格段に上がり小型程度なら何度も防御する事が可能だ。


「皆んな、これで分かっただろう──アトスが居れば小型の十体なんて余裕だ! 気を引き締めていけ!」


 俺のサポートの能力が優秀な事は納得したが、やはり人間族と言う所に引っ掛かりを覚える者が多い。


 すると、隣に居たロピの方からバチバチと音が鳴るのが聞こえる。


「大鎌さん、準備出来たよー」


 ロピは黄色い、中型スリングショットを構えている。確か、武器素材の効果は貫通だ──


「分かった──雷弾が攻撃するから下がれ!」


 シャレの言葉に一体を五人で相手していた班が小型から離れる。


「いっくよー、フィンフショット!」

「アタック!」


 ロピの放った雷弾が小型の脳天部分を貫き反対側から雷弾が貫通する。

 そしてロピの攻撃を受けた小型はのけ反り、暴れ回るが少しすると地面に倒れた。


「流石、雷弾だな」


 ロピのフィンフショット一撃で倒れた小型を見た他のエルフ達は又もや信じられない様な表情をしている。


 俺達は少し慣れたけど初めて見る奴らからしたら、とんでも無い事だよな──これで、ツェーンショットなんか見せたら気絶するんじゃ無いか?


 難なく一体倒したが後九体もいる為気は抜けない。

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