第285話 モンスター 4

「私も雷弾に続かないとな」


 何やらボソリと呟いたかと思うとシャレと二ネットが小型に向かって飛び出す。


「シャレ様、私が隙を作ります」


 そう言って、二ネットが剣を片手に小型の目元部分を執拗に斬り付ける。


「アタック!」


 俺のサポートでいつもより剣の刃が食い込む事に驚きながらも、二ネットは小型の視界を奪う様に立ち回り、その間にシャレが後ろに回り込んでいる。


「あの、大鎌さんの側近の人、強いねー」

「あぁ──無駄がない動きだ」


 動き的には、休憩所での戦いでリガスと一緒に防御役を買って出たイケメンのスタイルに似ている。


「シャレ様、お願いします」

「任せろ」


 シャレが攻撃位置に着いた事を確認した二ネットは邪魔にならない様にその場から離脱する──小型は視界を遮られていたので、後ろにシャレがいる事を知らない。


「フンッ!」


 禍々しいと表現しても良いくらいに大きな鎌を小型に対して振り斬る。


「アタック!」


 そして、シャレの凄い所は大鎌を起用にくるりと回して直ぐにまた上段から下段に向けて振り下ろしたのだ。


「器用だねー」


 ロピの声に頷いていると、シャレが何度も斬り付けていた小型は倒れた。


「うん──やはりアトスのサポートがあると、直ぐに倒れてくれるな」


 これで二体……


 続いて、チル達の方を見る。


「ほっほっほ。久しぶりの戦闘ですな」

「腕が鳴る」


 二人は小型に向かって走り込んでいる。


「それでは、私がひとまず」

「うん」


 リガスが走るスピードを上げて、小型に向かって勢い良く蹴り付ける。すると、小型にダメージは無さそうだが、少しよろけて標的がリガスに移り変わった。


「ほっほっほ。来い、虫けら共!」


 リガスは実に楽しそうな笑みを小型に向ける。


「なぁ……」

「んー?」

「リガスって戦闘の時性格変わらねぇ?」

「……うん……なんか若くなるよね……」


 俺とロピがリガスについて話していると、リガスに気を取られている小型の脇に素早く到着し拳を構える。


「アームズ……」


 そして、握り締めた拳を思いっきり脇腹に突き刺した。


「アタック!」


 とんでも無く鈍い音がここまで響く。そして小型は直ぐにチルに向かって攻撃をするが──


「カネル!」


 リガスにより防御され、再びチルに攻撃される。チルの拳を二発受けて既にヨロヨロな小型だが、最後の力を振り絞り二人に攻撃する。


「ほっほっほ。最近は強いモンスターと戦いましたからな、これくらいなら──」


 そう言って、リガスは大盾を起用に使い、小型の攻撃を受け止めるのでは無く受け流した。


「ほっほっほ。流石に、カネルが無い状態で受け止めるのは無理ですな」

「リガス、流石……」


 そして、これで決めてやると言わんばかりにチルは腰を落として強力な一撃を小型に対して放った。


「ふむ。お見事です」


 リガスの言葉と共に小型は地面に倒れ込む。


「リガス次に行くよ」

「かしこまりました」


 二人は倒したと思ったら直ぐに別の小型に向かって走り出す。


「大鎌さん、準備出来たー」


 先程同様にロピのフィンフショットで更にもう一体、シャレと二ネットで更にもう一体、チルとリガスで一体、エルフ達で二体を倒して、残り二体まで減らす事が出来た。


「す、凄い……昨日の倍の数相手だと言うのに怪我人が一人も居ない……」

「はは、二ネット、どうやら驚いている様だな」

「シャレ様……」

「これがアトスの力だ──恐らく我々だけなら村人が避難する時間を稼ぐ程度で全滅していただろうな」


 苦笑いしながら、シャレは二ネットに話しかけていた。


「人間族がこんなに強いとは……」


 二ネットが改めて俺の方を向く。


「これでアトスの実力が分かっただろ? ──よく分からない奴と言われているが、アトスのスキルは受けた者しか実感出来ないからな」

「えぇ、確かにそれには同意します──ですが受けた者ですら人間族の力に気付かない者は多いと思います」


 二ネットはもう一度俺の方を向くが、まだ小型が残っているのに気が付き、直ぐに前を向く。


「よし! ──とりあえずは、あと二体だ倒し切ってしまおう!」


 シャレの言葉に二ネットは表情を引き締めて頷く。


「あと、二体か……ん?」


 全体を見回していると、モンスター達より更に奥の方で何かが動いた様に見えた。


「まだ、モンスターが居るのか?」


 草木などで見えないが何かが居るのは分かる──あれ? 人間か?


 何の種族かまでは分からないがロングコートにフードを目深に被っている人物がジャングルの奥の方に向かって走り去るのが見えた。


「エルフ族の人かな?」


 俺は少し気になりつつも、残り二体のモンスターに集中する事にした。


 だが、二体と言っても直ぐに倒し終わる。


「ふぅ……十体と聴いて少し焦ったけど

なんとかなるもんだな」

「ほっほっほ。それ程我々が成長したと言う事でしょう」

「それに頭を使うモンスター達じゃ無かったから楽だったね」


 ロピの言う通り、最近相手にしていたモンスター達は頭で考えて行動するものが多かった──そして今回は何も考えないでひたすら突っ込んで来るだけの小型……一体この差はなんなんだ?


 そんな事を考えていると、シャレから声を掛けられる。


「アトス、前回と言い、今回と言い助かった」

「いや、俺もシャレには色々お世話になっているからお互い様だ」

「ふふ、ますます人間族らしく無いな──それじゃ今日はお礼の意味も込めて豪勢な料理を作ろう」

「やったー!」


 俺では無くロピがとんでも無く喜び両手を空に向けて喜んでいた──そんなロピを微笑ましいのか柔らかい笑みを浮かべたシャレ。


「よし、帰るか」


 村の村長である、シャレの一言で俺達はエルフ族の村に帰った。




 一方、アトス達が戦闘を終わり去った後にフードを目深に被った人間がジャングルから出てきた。


「クソ……全滅しなかったか……」


 そう言ってフードを目深に被った人間はその場を後にした。

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