第282話 モンスター

「ん? なんか騒がしいな」

「何かあったのでしょうか?」


 ロピの試し撃ちが終わりシャレの家に帰った俺達はリガスの美味しい料理を食べ終わり今は俺の部屋でゆっくりしている所である。


「少し見に行って参ります」

「あ、なら俺も気になるし行くわ」

「お供します」


 三人は部屋から出ようとする前にベッドで大口を開けている者に視線を向ける。


「すぴー……すぴー……」

「「「……」」」


 三人は見なかった事にしてソッと部屋から出て外に向かう。すると、木の下ではシャレと二ネットを含めて結構な数のエルフ達が集まっていた。


「どうかしたのか?」

「結構な人数がいますな」

「事件でしょうか?」


 俺が下に降りようとするとリガスに止められる。


「アトス殿は降りて行かない方が良いでしょう」

「アトス様には悪いですが私も同じ意見です」


 まぁ……俺はエルフに相当嫌われているからな……

 二人の指示に従う様に俺はツリーハウスからは降りず二人だけが降りて状況を聞いてきてくれるらしい。


「はぁ……何話しているんだろう?」


 既に日が完全に落ちている為、上からでは炎の灯とその周りで照らされているものしか見え無い。


「俺も獣人だったらここから見えたり聞こえたり出来たかなー?」


 結構長く掛かっているし一度部屋に戻るか。


「おーい、ロピー寝るなら自分の部屋で寝ろー」


 俺は自分の部屋に戻りベッドを独占しているロピに話し掛ける。


「うへへ……私は強いんだよ……」

「あぁ、ロピが強いのは今日で分かったから起きろー」


 結構強く揺らした事とまだ本格的に寝ていた訳では無い為ロピの目が覚める。


「あれ? 私寝てたの?」

「あぁ、リガスの料理を腹一杯食べた後直ぐにな」

「美味しかったよねー」


 まだ、食べ足りないのかロピの口からはヨダレが垂れていた。


「あれ? 二人は?」

「あぁ、なんか騒がしいから外を見たら下にシャレ達が集まっていたから状況を聞きに下に降りている」

「そっかー。何があったんだろうね?」


 二人で話しているとチルとリガスが戻って来る。


「あ、二人ともおかえりー!」

「どうだった?」


 二人は少し表情が険しかった。


「どうやら、モンスターが現れた様です」

「ふむ。それも複数現れた様でこれから討伐しに行く様ですな」

「そうか──なら俺達も手伝うか」

「えぇ、私もそう思いシャレ殿に進言した所、他のエルフ達が断ってきましてな」

「あらら、また何で?」

「どうやら村で起きた出来事は村の者で解決したいとの事でした」


 成る程な……でも複数出たとか言ってたけど大丈夫か……?




 一方、先程までツリーハウスの下で作戦会議をしていたシャレ達がチーム編成も完了してモンスターの場所に向かう様だ。


「よし、それじゃ向かうが皆無理はするな」


 シャレの言葉に武器を手に持ったエルフ達は頷く。


「では出発する!」


 周りは暗闇で光源は松明のみの筈だがエルフ達は昼間と変わらないスピードでモンスター達が現れた方向へと走り出す。


「アトス達に手伝って貰った方が良かったんじゃ無いか?」


 シャレは隣を走る二ネットに話し掛ける。


「いけません。所詮は他所者です」

「そうだが、別に助けて貰うくらいはいいんじゃないか?」

「それを出汁に何を要求されるか分かったもんじゃありません。特にあの人間族は──」

「アトスはそんな人間では無いぞ?」

「シャレ様、油断してはダメです。人間は皮をかぶるのが上手いですからね」


 二ネットの言葉にまだ納得のいかない様子のシャレだったが今はモンスターを討伐する為に大きな大鎌を持ちながら走り続ける。


「シャレ様、発見しました! どうやら数は五体です!」


 夜目が特に効くエルフの言葉に戦闘が近い事を悟ったシャレ達は表情を引き締める。


「よし、作戦通りに頼む」


 シャレの言葉にエルフ達はそれぞれのモンスターに向かってバラけている。大体1チーム五人で編成しているが、シャレの所だけはシャレと二ネットの二人だけであった。


「ではシャレ様、まずは私が先に小型の注意を惹きつけます」

「あぁ、気を付けろ」

「はい」


 二ネットは片手に剣を持ち小型に向かって走り出す。身のこなしは流石、シャレの側近をしているだけあり中々のものだ。二ネットは小型に向けて幾度も剣で叩き斬る。


「うん……どうやらドワーフの村の時みたいな感じの小型では無さそうだな」


 シャレが言っている小型とは恐らく頭を使って戦う小型の事であろう。


「皆! 今回の小型は大丈夫だ──いつも通りの戦いで早めに倒すぞ!」


 シャレの指示により全体的に様子を見る感じの戦い方から次は積極的に倒す戦い方に切り替わった。


「シャレ様、お願いします!」

「あぁ、任せろ」


 全体の指示が終わりシャレは自分の大鎌を構えて小型を二ネットみたいに幾度も叩き斬る。すると、二ネットとは違いどんどんと小型の外皮に傷を付けていき、少しすると小型が倒れた。


「流石です」

「私なんてまだまだな事をこの前の戦闘で思い知らされたよ」


 苦笑いした後にシャレと二ネットはそれぞれ、まだ倒していない小型達に向かっていき、気が付けば小型五体を三十分もしないうちに倒し切ってしまった。


「ふぅ……皆、ご苦労──後は家でゆっくり休んでくれ」


 帰りはゆっくりと村に戻りシャレが最後に労いの言葉を掛ける。誰一人として怪我が無いにしても、やはりモンスターとの戦いは気を使う為、エルフ達の顔にはどこか疲れが見える。


「シャレ様も今日はゆっくりお休み下さい」

「あぁ、そうさせて貰う」


 モンスターを倒した事にシャレを含めて他の者達は安堵して眠りに着くが、次の日もまた小型が五体現れた……



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