第262話 スキル儀式

「ん? 何故こんな場所に?」


 そこは薄暗い部屋でありレギュがスキル儀式を行った場所である。


「まだ、ハッキリした事は分からないので、先に確認させて下さい」


 そう言うと、私に座る様に指示した後に周りで待機してい者達にも静かにする様に伝えている。


「それでは……」


 何やら老婆が私達では理解出来ない言葉をブツブツと呟き始めた。


「シク様も、眼を瞑って目の前の水晶玉に手を置いて下され」

「あ、あぁ……」


 言われた通りに、眼を瞑って、水晶玉に手を置く。


 これでは、スキル儀式の時と何も変わらないな。

 暫くすると水晶玉が熱くなって来て触っているのも辛くなる。


「クッ……」


 そして、どんどん熱くなったと思うと水晶玉から何やら鈍い音が聞こえた。


 ん? なんか音がしたが大丈夫か?

 私自身手の平が熱すぎてそれ所じゃ無いな……


 そして、更に時間が経過すると老婆の呟きが止まり眼を開ける様に言われる。


「む?」


 眼を開けて水晶玉を見るとヒビが割れているのが分かった。


 私が壊してしまったのか?


「お、おい。アレってアトスの時と似てないか?」

「うん。アトスはスキル儀式の時に水晶玉が割れたって言ってた……」


 後ろの方でデグとベムが何やら小声で話しているのが聞こえる。


「シク様、少々お待ちを」


 そう言うと老婆は立ち上がり何処かに行ってしまう。


「一体、何なんだ……?」


 不思議そうにしているのは、私だけでは無く、デグ達全員が老婆のしている事に対して、何をしているのか分かっていない状況である。


 すると、老婆は直ぐに戻って来てとても嬉しそうに、そして誇らしそうな表情を浮かべている。


「ふふふ、シク様やりましたよ!」


 何やら興奮している様で先程より声が大きい。


「どうしたんだ?」

「これを見て下され!」


 老婆はプレートを私に見せて来た。そしてそこには信じられ無い事が記載されていた。


スキル:身体強化(部位:足 Aランク)


「なんだこれは? 私は既にスキルを所持しているが?」

「えぇ、ですから二個目ですよシク様」

「二個目?」


 私が何が何やら分かっていないと背後の方で盛り上がっているのが聞こえた。


「お、おい……もしかしてシクさんってダブル持ちか?!」


 ダブル?


「きっとそう……流石シク様……」


 ベムなんかは感動しているのか、涙目である。


「ダブル持ちなんて自分初めて見たッス!」


 ラバの言葉にネークやコナも目を見開いて頷いている。


「デグよ、ダブル持ちとは何だ?」

「あ、あぁ。ダブル持ちとはスキルを二個所持している事だ。今この世に存在する中でダブル持ちは一人しか居なかったんだよ」

「一人?」

「人間族にて、遠距離最強と呼ばれている炎弾だな」

「炎弾?」


 聞いてばかりであるが、全て知らない事ばかりである。


「炎弾は身体強化と武器強化のダブル持ちで、身体強化で木を引っこ抜いて、武器強化で木に炎を纏わせるらしい」

「そして、敵に向かって投げつけます……」

「その威力は一撃で小型を倒せる威力って聞くッス!」


 小型を一撃……それは凄いな。


「俺達獣人族の間でも炎弾は有名で、見かけたら村を捨てろと言われているくらいです」

「噂で聞く限りだとアタシらの様な他種族が嫌いな様で他種族を見つけたら殺すって聞いたよ……」


 そんな奴もいるのか。危ない奴とは極力関わらない様にしよう。


「そんな事よりも、シクさんもう一つのスキル見せてくれよ!」

「私も見たいです……」

「山神様、私も!」


 皆が押し寄せる様にプレートを覗き込む。


「す、すげ!?」

「シク様は神以上の存在となりました……」

「わぁー……」


 全員がプレートを覗き込み驚愕している。

 レギュなんかは驚きのあまり拍手までしており、それに続く様にベムも手を叩いていた。


「Aランクとかシクさん……流石だぜ……」


 それから、周りの話を更に聞くとダブル持ちは本当に珍しく生きているなかでは、この世で二人目だと言う事らしい。


「こうしちゃ居られない。村人達に言ってくるぜ!」

「じ、自分も行くっす!」


 何故かデグはとても嬉しそうな表情を浮かべて建物から出て行く。


「俺達も他の奴らに伝えに行きます」

「アタシら獣人族の中にダブル持ちが出た事を聞いたらきっと喜ぶよ!」

「あぁ、俺達獣人族の誇りだ」


 ネークとコナも嬉しそうな表情をして建物を出て行く。


「シク様、早速試しに行きましょう……」

「私も山神様のスキルがどれだけ凄いか見てみたいです!」


 二人が目を輝かせながら言ってくる。


「ふふふ、シク様が足に違和感を感じたのは恐らく今回の事が原因でしょう」

「そうか、それにしてもよく分かったな?」

「他の人は分からなかったらしいですが、足が少し光を放っておりましたので、もしかしたらと思って」


 老婆は私の足を見ながら何度も頷いていた。


「まさか生きている内にダブル持ちに会えて、更にスキル儀式まで出来るとは私は嬉しいです」


 老婆はハンカチを取り出しながら目元を拭っている。


 この事をデグやラバが村に言い回った事により、ガバイ達との対立していた件で動きを見せ始めたのだった……




 

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