第261話 シクの異変……

「山神様、行きましょ!」

「シク様、力をお貸し下さい」 


 レギュとベムに言われて現在、村の入り口に向かって走っている。


 どうやら、小型五体がこの村に向かって来ている様だ。


「最近、モンスターが多い……」

「前はこんなに出なかったんですか?」

「出現する頻度も少なかったし、ましてや一度に五体なんてあり得なかった……」

「住人が増えたからでは無いか?」


 私の言葉にベムは目を見開いて答えて来る。


「流石、シク様です……感銘致しました……」

「やっぱり、山神様は何でも知っていますね!」

「……」


 何故だろう……誰でも考えつく様な事しか言ってないのに此処まで言われると逆にバカにされている感がする。


 それから直ぐに小型達が居る所まで到着する。


「居ますねぇ……」

「五体も居ると厄介……」


 小型達はゆっくりと、しかし確実に村に向かって進んでいる。


「五人ずつに分かれるか」


 デグの指示により五人で一体を討伐する事になる。


「シク様、私とレギュで注意を惹きつけます」

「がんばります!」


 ベムとレギュの戦闘スタイルは基本遠距離での弓による攻撃だ。


「わかった。私は直接攻撃するが、恐らく攻撃力が足りないぞ?」


 私の疑問に獣人族達が話し掛けて来る。


「シク様、俺達にお任せ下さい」

「あぁ、俺達二人で小型を倒せるので注意さえ惹きつけてくれれば行けます」


 どうやら獣人族の若い者達が攻撃を担当してくれる様だ。


「よし、お前ら行くぞ!」


 デグの声で一斉に向かっていく。

 まず、ベムとレギュが弓矢で小型にチョッカイを掛ける。

 そして、次に私が拳に炎を纏わせて攻撃に移るがランクが低い為小型からしたら目眩しにしかならない様だ。


「クソ……私にもっと力が有れば……」


 自分の余りにも弱い攻撃に腹を立てていると、獣人族二人が左右から小型の急所だと思われる所に攻撃を喰らわしている。


 二人の攻撃をくらい悶絶する様にして小型が距離を取り始める。


「もう一度やるぞ」


 私の声に反応して直ぐ様、ベムとレギュが再び弓を構えて小型に向けて放つ。


「ここか?」


 私も拳に炎を纏わせて次は獣人族二人がやった様に急所に向かって拳を叩き込む。


 すると、先程とはまるで別の攻撃を食らった様な反応を示した。


「流石、シク様だな!」

「あぁ、ネークが言ってた通りだぜ!」


 何の事か分からないが獣人族二人が私の攻撃した後をすかざす同じ箇所に攻撃を喰らわせた事により小型を倒した。


「流石、シク様です……」

「山神様、凄いです!」


 二人の眼差しを私は否定する。


「いや、今のはそこの二人が倒したようなものだ」

「いやいや、あのシク様の攻撃がキッカケですよ」

「えぇ、俺達はその後を攻撃しただけです」


 何故、ここまで私を敬ってくれるか分からない。


「そんな事より他を手伝おう」


 私は直ぐに周りの加勢を行おうとするが、他も大体が留めを刺していたので特にする事は無くなった。


「みんな無事か?」


 デグの言葉で怪我した者が居ないか確認するが、どうやら今回は無傷で小型達を倒す事が出来た様だ。


 そして、村に戻ろうとした時にある異変が私の身体に走った。


「ん?」


 何故だが足が上手く動かない……


「どうかされましたか……?」


 ベムが私の異変に気が付いたのか心配そうにしている。


「いや、少し足に違和感があってな……」

「それは大変です……帰ったら直ぐに見てもらいましょう……」


 気にしなくて良いと断ったが、ベムとレギュがそれを許してくれず、またそれを聞いていた若い獣人族二人が騒ぎ結局はデグの村長命令により、村に着いたら見て貰う事になった。


「山神様、本当に大丈夫ですか? 私が運びましょうか?」

「いや、問題無い。少し違和感があるだけだ」


 村に帰る途中も、デグやネーク、コナ、ラバ達など色々な者から心配された。


「よし、皆んなお疲れ。この後はシクさんを見て貰うが、他に怪我した者は居ないか?」


 村に到着しデグが最終確認をするが、特に怪我人は居らず、私だけ見て貰う事になった。


「なぁ、別に皆んなついて来なくても問題無いぞ?」


 私の後ろにはズラっと列が発生していた。


「い、いやホラ、やっぱり心配でよ!」

「シク様にもしもの事があったら……」

「あはは、皆んな山神様が心配なんですよ!」

「同じ獣人族として付いていかせて下さい」

「シク様はアタシらの恩人だからね!」


 ここまで直接的な言葉で言われると流石に無碍に出来ない為、私はこの村の医者の所に足を伸ばした。


「すまない、誰か居るか?」


 建物の中に入ると直ぐ様、一人の老婆が出てきた。


「おやおや、シク様どうかされましたか?」

「貴方は確かレギュのスキル儀式の時に」

「こんな老いぼれを覚えて頂き嬉しいですなぁ」


 老婆はニカリと歯を剥き出しにして笑った。


「それで、本日はどうされましたかな?」

「少し、足の様子を見て貰いたくてな」

「なんと!? どこか怪我でもされたのですか?」


 老婆は心配そうに私の事を見ている。


「いや、特に怪我はして無いと思うんだが、足に違和感があってな」

「ほぅ……」


 老婆はその場でしゃがみ私の足を見始めた。

 その間、デグ達は静かに私の背後で診察の様子を見ていた。


「むむむ?!」


 老婆が驚いた様子で目を見開き私の顔を見て来た。


「シク様、これは怪我ではありませんな」

「そうか」


 私は内心で何も無かった事に安堵する。


「しかし、ちょっと確認したい事があるので、付いて来て下さい」

「ん?」


 疑問に思いながらも私は老婆に付いて行くと、そこはスキル儀式を行う場所であった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る