第260話 モンスターの気配?

 現在は毎朝の日課である見回り中である。

 

 あの事件から少し経過したが、表面上は何も変わらずいつも通りの暮らしをしている。

 だが、細かい所では影響が出て来ているのも確かである。


 まず、見回りに関してはガバイ側の村人からは来なくて良いと言われ範囲が半分になった事。そして、ガバイ達三人が村での発言力をどんどん高めている事である。


「どうしたもんか……」


 力尽くで追い出す事は恐らく可能だと思うが、それをやるつもりは無い。

 しかし、この状況が長く続く事に限界を持っている者達もいる。


「あそこまでされたら俺達獣人族は共存出来ない」

「あぁ、旦那の言う通りアタシらをゴミを見る様な目で見ているアイツらとは安心して一緒に暮らせないね!」


 最もな意見だな……泥団子とはいえ、子供が標的にされたんだ、誰だってそんな奴らと一緒に住みたいなんて思わないよな。


 獣人族はガバイ達の言動に腹を立てている。

 悔しいがガバイ達の思い通りになっている事だろう……


「ネーク、やっちまおうぜ!」

「そうだ! 人間族なんて非力なんだから直ぐだぜ?」


 獣人族の若い者達が過激な発言をする。


「それはダメだ」

「なんでだよ!? 人間族がクソな事はこの前で分かっただろ!」


 この前とはガバイ達の事だろう。


「確かに、我々は人間族に良く思われてないが、そうじゃない人間達も居るのは分かるだろう?」


 ネークの目線が俺に移ると同時に他の獣人族達も俺の事を見る。


「確かにデグ達は良い人間族だ……だけどよ!!」


 ネークが言葉を遮り更に話し始める。


「デグ達だけじゃ無いさ、アレを見てくれ、あんなにも我々を好きになってくれる人間族もいるんだぞ?」


 穏やかな笑みで向いた先には、一人のお年寄りが居た。


「おーい、お前達早くワシの畑を手伝わんか!!」


 強い口調だが笑顔で手を振っているお年寄りが嬉しそうにコナに近付いて行く。


「コナよ、良く来たな! 今日も手伝ってくれ!」

「あぁ! アタシらその為に来たのさ」

「本当にお前は可愛いのぅ……」


 コナは頭を撫でやすい様に年寄りに近付きしゃがむ様に膝を突く。

 そして、コナ自身も嬉しそうに目を細めていた。


「ジィさん、今日は何するんだ?」


 先程過激な発言をした若者も、お年寄りとコナのやり取りを見て怒気が抜けたのか苦笑いしつつもクワを片手に持ち質問する。


「ほぅほぅ、若いの! やる気があって大いに結構。ついて来い!」


 ジィさんを先頭にネーク達獣人族がズラリと列を組んで畑に向かっていく様は、なんだかおかしい。


「みんなこうだったらいい……」

「ベムさんの言う通りです! みんな仲良くが一番です……」


 レギュが何故か浮かない表情だが何か思う所があるのか?


 レギュの様子を見ていたベムは直ぐに異変に気付き、そっとレギュの事を抱き締めてあげていた。


「ベムさん?」

「もう、レギュは私の妹だから何かあっても守ってあげる……」

「へへ、ありがとうございます!」


 ベムとレギュの様子を見ていたシクさんは一度大仰に頷いていた。


 見回りする箇所も半分に減った為、俺達は一件辺りに掛ける時間を増やした。

 なので、ジィさんはコナに会える時間が増えてとても嬉しがっている。


「コナ、ここを掘ってみるんじゃ」 「あいよ!」

「おい、若いの! ここをほれ!」

「おいおい、ジィさん。コナと俺達だと扱い違いすぎねぇーか?」

「うむ。どうやらお前達は力が有り余っているみたいだからな」


 笑いながら話すジィさんに獣人族も笑いながら作業する手を動かしていた。


「やっぱり、共存は可能だ」

「自分もそう思うッス!」

「だが、やっぱりガバイ達を追い出さないと対立しちまうな……」

「そうッスね。ガバイ達が居なければ村人達としっかり話し合えるッス」


 俺の考えではシッカリと話し合えば、目の前の光景みたいに人間族と獣人族が共存するのは可能だと考えている。


 そして、手伝いが終わりネーク達が戻って来た。


「もういいのか?」

「あぁ。だけど若い者達はまだ残るそうだ」


 人間達に歩みよっている事が嬉しいのかネークは遠くでジィさんと他の獣人族のやり取りを見ている。


「アタシは見回りが終わったらココに戻って来るけどね」

「はは、お前はジィさんのお気に入りだもんな」

「嬉しいものさ。アタシらをここまで受け入れてくれるなんてね」


 コナもネーク同様にジィさん達の方を見ていた。


 すると、村の見張りが慌てた様にこちらに向かって走って来る。


「デ、デグさん! モンスターです!!」


 その言葉を聞き他の者達も反応する。


「何体だ?!」

「小型五体です……」


 五体だと!?



「この人数で足りるか……?」


 ネークが声を掛けて来る。


「デグ、若い者達も出させるから早く行こう」

「あぁ助かるぜ!」


 ネークは、若い者達に声を掛けて、戦闘が出来る者を引き連れる。そして、非戦闘員はジィさんが預かってくれる事になり俺達は急いでモンスターの場所に向かう。


「村には直ぐ着きそうか!?」

「いえ、直ぐにでは無いですが確実にこちらに向かって来ています!」


 何故か最近モンスターが多く無いか……?

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