第238話 残り三秒…… 2
クソ、あと三秒……
俺は、目の前に迫り来る大きな尻尾を見ている事しか出来なかった……
「「「まだだ!!」」」
すると、俺が助けた三人が走り出す。
な、何するつもりだ!?
「オラッ!」
まず、一人が盾を持ち迫り来る尻尾に対して、自ら体当たりしたのだ。
もちろん、当たる瞬間にスキルでサポートをするが、当然直撃した者は明後日の方に吹き飛ばされる。
「俺もだ!」
間を置かず、続け様にもう一人も尻尾に向かって盾を持ちながら体当たりする。
当然一人目同様に吹き飛ばされる。
「こっちも忘れんじゃねぇ!!」
三人目も同様だ。俺は訳が分からないが、とにかく生き残る確率を上げる為にサポートだけは無意識に掛けていた。
だが、分からなかったのは俺だけで他の者は三人が何をしたいのか即座に察知した様だ。
「皆さん!!」
マーズが一言叫ぶと、次々と他の者達も三人同様、迫り来る尻尾に向かって、盾を持って突撃し始める。
「生きて帰る!」
まさか……。全員が尻尾に向かって走る姿を見て気がつく。
こ、これじゃ以前に俺が立てた作戦と同じじゃないか……
前の戦いの時に、俺はロピのツェーンショットの時間を稼ぐ為に、特攻作戦を立て、皆に実行して貰った。
その時は成功したが……今回は中型だぞ……?
心配する俺の目の前では次々と中型の尻尾に向かって走る者達が見える。
本来なら、三秒所か何分も経っている感じがするが、ロピの口からはカウントされた声がまだ聞こえて来てない……
その間にも、次々と体当たりをしては少しでも中型の攻撃がロピに接触する事を遅らせようとする者達。
「8……」
あと二秒もあるのかよ!?
「ワシらドワーフを舐めんな!!」
「私も加勢しよう!」
キルを初めとするドワーフ族とエルフ族であるシャレが尻尾に突進する。
いくら、小型を一人で仕留められる者達だとしても、中型の一撃を受け止める事はもちろん出来無い為、他の者と同じく吹き飛ばされていく。
だが、驚く事に中型の尻尾によるなぎ払いは目に見えて威力や迫り来るスピードが落ちていたのだ。
「いかせません!」
頭脳派のマーズまでもが盾を一つ持ち、尻尾に向かって突撃し吹き飛ばされる。
「ロピ殿の為に少しでも時間を稼ぐ!」
リガスは目を吊り上げて迫り来る尻尾を睨み付け、他の者とは違って大盾を持ち待ち構える。
すると、他の者達が身体を張って威力を落としてくれたお陰か、リガスは一瞬だけ中型の攻撃を受け止めて、吹き飛ばされる。
「9……」
あと一秒!
だが、防御の要であるリガスは既に居ない。
すると、ロピと俺の前にチルが姿を現した。
「アトス様と姉さんは、私が守る!!」
チルの手には大きなハンマーが握られている。
そのハンマーはドワーフ族のキルが使用している武器であった……
「アームズ……」
直ぐ目の前に尻尾が迫り来る状況の中、チルは冷静にスキルを発動して尻尾目掛けて、思いっきり巨大なハンマーを振り切った。
「アタック!!」
俺は防御のサポートか攻撃のサポートか迷ったが、一瞬だけチルがこちらを見たので、攻撃のサポートである赤ラインをチルの下に敷いた。
チルのフルスイングと中型の尻尾によるなぎ払いが衝突した時、鈍い音が辺りに響く。
皆のお陰で尻尾によるなぎ払いの速度がかなり落ちていた為、ハンマーと尻尾の衝突時、力が均衡して尻尾の攻撃が止まった……
「10……」
ロピのカウントが終わると、小石はとんでもない程の存在感を表していた。バチバチと鳴る小石は早く溜まっている電気を放出したいと言わんばかりに大きな音を立てていた。
「ツェーンショット!!」
「アタック!!」
ロピが撃った瞬間、スリングショットが粉々に壊れるのが視界の端に映る。
よし、これで中型も終わりだ! 俺だけでは無く中型に吹き飛ばされた者達も思っただろう……
だが、そうはならなかった……
「え!?」
「嘘だろ……?」
なんと、中型はロピの雷弾が当たる寸前で身体を捻る様にして、雷弾が当たる場所をズラしたのだ……
ロピの撃った雷弾は軌道上、頭に当たる筈だったが、尻尾付近に当たり貫通した。
雷弾自体は貫通した為、中型の内部で小石に溜まっていた電気が暴れ回った。
だが、当たる場所が悪かった為に中型はツェーンショットを耐え抜いたのであった……
「二人共逃げろ!!」
俺は、中型がまだ生きていると分かった瞬間にロピとチルに向かって逃げる様指示する。
中型は既にこちらにロックオンしており再び突進して来るのが見えた。
「お兄さん!」
「アトス様!」
すると、二人はその場から逃げる事はせずに俺に覆い被さる様に抱き付いて来る。
「おい、何やっている! 二人とも逃げろ!」
必死になって引き離そうとするが、左腕を失った俺に、そんな力は無い。
「クソっ……ガード!!」
既に、目の前には中型が迫って来ていたので二人に対して青のラインを敷く。
ロピとチルは、中型から俺を守る様に抱き着き、キツく目を閉じていた。
そして、少しして一瞬で気絶しそうな程の衝撃が自身の身体に伝わるのを感じた時には、中型に吹き飛ばされたのか宙を浮いていた……
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