第90話 四人居ればモンスターでさえも……
ん? 何か違和感があるな……。小型はまだこちらを探る様に様子を見ている。
「ふむ。チル様どうされますか?」
「突っ込む!」
「かしこまりました」
チルとリガスが小型に向かって走り出す。リガスが少し先を先行してチルを守る様に自身の身体で小型からチルを隠す。
そして、小型もチル達に向かって走り出す。
「チルちゃん気をつけて!」
リガスが再び盾を地面に突き刺し小型を迎えるように待つ。
「カネル!」
「ガード!」
リガスのスキルのタイミングで俺はリガスに対して青ラインを敷く。この前とは違ってしっかりとリガスに対してスキルの効果が発揮した。そして、小型が盾に接触しリガスが抑え込む。
「ほっほっほ。アトス殿のスキルは素晴らしいですね、先程と違って今回は全く衝撃がありませぬ」
「アトス様は最高にて最強……」
チルが訳分からない事を呟きながら再び小型に攻撃を放つ。そして一発で終わらせずに何発も連続で攻撃し続ける。
「アームズ……」
「アタック!」
小型もただやられている訳ではなくダメージを与えているチルを引き離そうと色々と攻撃をする。だが、その度にリガスが盾で防いだり、受け流したりする。
「カネル!」
「ガード!」
小型も流石にここまで攻撃を防ぎ続ける人間に会ったことが無いのだろう、距離を取る様に後ろに下がりながら攻撃をしているが、チルとリガスが上手い具合に距離を離されない様に立ち回っている。
「これで、終わり!」
チルは先程から何度も拳を叩き込んでいる箇所に再度攻撃する。
すると、一際大きい打撃音が鳴り響いたと思ったら小型は動かなくなり地面に沈む様に倒れこんだ。
「流石、私のご主人様、シビれる様な攻撃ですな」
「全てはアトス様のお陰……」
「それにしても、アトス殿のスキルは凄いですね、小型の攻撃に対する衝撃が一切無くなりましたよ」
「まぁ、一応Sランクだからな」
リガスは珍しかったのか、とても驚いた表情で暫し固まる。
「なるほど……。道理であの絶大な効果を得られる訳ですな」
「アトス様は最強なの」
何故かチルが胸を張って自慢気にリガスに語り始める。
それにしても、本来小型をこの人数で討伐するのは危ないかもしれない。
だがSランクスキルを持つ俺と特殊スキルを持つリガスが居ると小型を倒す事も可能になるのか……。
今の戦闘から見て小型一体程度なら問題無く討伐出来そうだ。ただ、二体以上は難しいかもしれないな。
「アトス様の凄さ分かった?」
「ええ。チル様とロピ殿の命の恩人って事ですね」
「そう! だから私はアトス様に仕えるの!」
「ほっほっほ。私はチル様に仕えて、チル様はアトス殿なんて、なんだか不思議ですな」
「確かに!」
二人はたわいの無い話で笑いあって居るが、若干一名は地面に座り込み何やら落ち込んでいる様子だ。
「ロピ、どうしたんだ?」
「お兄さん……。また私だけ何も出来なかった……」
オークとゴブリンのいざこざがあった際に小型との戦闘で全く役に立たなかったと落ち込んでいたが、今回の小型との戦闘でも同じ結果になってしまい、かなり落ち込んでしまっている様だ。
「大丈夫だ。これから一緒に強くなろうって言っただろ?」
「……うん」
「ロピのスキルの使い方に関してはみなんで考えよう」
「そうだね……」
「元気だせ」
そして、俺はロピの頭を優しく撫でてあげる。
「……えへへ」
俺が撫でるとロピは直ぐに笑顔を取り戻し、いつもの調子に戻った。
「ありがとうお兄さん! スキルについては考えてみる! それとこの事はチルちゃんには内緒にしてね?」
「あぁ。大丈夫だ言わないよ」
「えへへ、お兄さん好きー」
いつもの抱きしめ方とは違って今回は甘える様にロピが抱きついてきたので優しく抱きしめ返す。
そして暫く休憩してから再び移動を始める。
「アトス様、私達だけでも小型なら倒せますね!」
「あぁ。小型を倒せる事を知ることができたのは大きいが、油断はするなよー?」
「はい!」
「ほっほっほ。お二人とも真面目ですな」
「そこが良いところでもあるんだよ!」
「ロピ殿は不真面目ですかな?」
リガスは冗談を混ぜ合わせつつロピと笑いながらやり取りをしている。
今回スムーズに戦闘を終わらす事が出来たが、この先どうなるか分からない。やはり基本は小型との戦闘は避けての移動を心掛けよう。
「みんな、今回小型を討伐して俺達四人でも倒せる事が分かったが、基本は小型との接触は避けて移動をする」
「はーい、お兄さんに賛成!」
「アトス様に従います」
「私はチル様に従います」
今のままでも小型に勝てる事が分かったが、やはり不安は付き物だ。我が家に着いたら四人の連携を訓練しないとな。
「とりあえず、家に向かって移動だな。まだ半分も来てないし」
「長ーい、私疲れたー」
「姉さん、もう少しで日が暮れるから我慢して」
「ほっほっほ、今日はロピ殿の為に美味しい料理を振舞いますよ?」
「本当!? 魔族さんの料理美味いから楽しみー」
「それは、俺も楽しみだな!」
「では、もう少し移動しましょうか」
「「「はーい」」」
俺達三人はリガスの励ましに対して元気よく返事をして歩き出した。
こうして、小型との戦闘も難なく片付けて怪我も無く移動を開始した。
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