第91話 モンスターの気配
小型との戦闘をしてから数日が経った。あれからもモンスターの気配は感じるものの、遭遇しないように迂回したりして、なんとか一度もモンスターとの接触はない。
だが、モンスターの気配があまりにも多い為その度に道を変えたり時には遠回りしたり、半日その場で待機したりと考えていた帰り道の日程と大きくかけ離れてしまい食料などが底を突いた。
食料だけなら野性の動物を狩って調理すればいいが、やはり木々が立ち並び視界が悪いジャングルを歩き回っている為、みんな疲れが溜まっている。どこかで村を見つけて何日か休みたい所だな……
「お兄さーん、私流石に疲れてきた」
「だなー。俺もかなり……」
「チル様は大丈夫ですか?」
「……うん」
チルの表情を見る限り疲れが溜まっているのが分かる。恐らく、本当に疲れていないのはリガスだけだろう。この男は常に涼しい顔をしている。夜の見張り番でも一番長い時間やっているはずなのだが一切疲れた顔を見せない。
「魔族さんは疲れていないの?」
「ほっほっほ。昔はこれより過酷な状況が何度もありましたからな」
「過酷な状況?」
「三日三晩小型から追いかけ回されて逃げ切った時などは流石に疲れましたな」
「「「……」」」
俺達三人は言葉が出なかった。三日三晩だと? 俺はシクと小型から逃げている時なんて半日もしないで息が切れて足が上がらなくなったぞ!?
「魔族ですからな。魔族の身体能力は恐らく全種族の中で総合は一番ですな」
「それにしたって、おかしいよー!」
「うん、姉さんの言う通りおかしい」
「魔族って、生息数自体少ないんだよな?」
「ええ、私は親を含めても数人しか会ったことがありませんな」
相当長生きしている、リガスでさえ数人とは、本当に少ないんだな。恐らく一番人数が多いのは人間族だろう。それは人間族の住処が安全の為街の人達は安心して子供を作れるし育てられるからな。その次ら辺に獣人族が来る感じだろうか?
そんな考え事をしているとロピから話しかけられる。
「お兄さん、またモンスターの気配だよー」
ロピとチルも流石にこんな頻繁にモンスターの気配を感じると最初の頃の様な驚き方をしなくなった。それと、俺達四人なら小型一体を倒す事が出来るのも、慌てない原因の一つなんだろう。
「早く逃げよう」
「もう、疲れたー」
「姉さん、しっかり」
「それでは、私が先行しますので付いてきてください」
リガスを先頭にまた俺達はモンスターから逃げ出す。
「ん?」
「どうしたの?」
「チル様、モンスターの気配がいきなり消えました」
「え? ほんとだ……」
「魔族さん、何で消えたか分かる?」
「恐らく、討伐されたのかと」
討伐されたって事は、近くに人間がいるのかな?
「よし、討伐した人間に接触しよう」
「え……、お兄さん大丈夫? この前のオークみたいにややこしい事になっちゃうんじゃない?」
「その可能性は捨て切れないが、やはりみんな疲れが溜まっているし、一度しっかり休息を取った方がいいだろう」
「アトス殿に賛成でございます。みなさん疲れが溜まっていらっしゃるので、どこかで休息は必要かと」
やはりリガスも思っていたのか、このまま疲れた状態だと逆に危ないと思ったのだろう、俺の意見に賛成してくれる。
「アトス様とリガスが言うなら」
「私も、お兄さんが言うなら」
「ありがとう、とりあえずモンスターの気配が消えた所までいってみよう」
俺達は慎重に進みながら気配の元まで来た。
すると、やはりモンスターが倒れていた。どの種族が討伐したか分からないが、モンスターのあらゆる箇所に切り傷が付いているので、恐らく刃物系の武器で倒したと思われる……
「リガス、この辺に人間の気配はあるか?」
「いえ、もうこの辺りには気配が無いですな」
「なら、ここら周辺を少し探してみようか」
「お兄さん、足跡があるよ?」
ロピの見つけた足跡を見ると結構大きい足跡が何個も付いていた。尚且つ人間族の足跡とは明らかに違うが何の種族かまでは分からなかった。
「では、また私が先行します」
それから半日程、ジャングルで探し回り遠目だが村を発見した。
「お兄さん、なんでここで止まっているの? あの村に入らないの?」
「まだ、様子見しよう。せめて何の種族の村なのか見て確認する」
「さすがアトス様です」
そして俺達は一際高い木を探し、そこから村の様子を伺う。結構な時間を監視していたが、誰一人村の中で歩き回っている様子は確認できなかった
「お兄さん、今日はここで泊まる感じ?」
「相手の種族が確認できなかったから今日はここで野宿だな」
俺達は野宿の準備する為に村から更に離れた場所で、準備をしている。明日早くから観察して大丈夫そうなら接触してしばらく休ませてもらう。
「みなさん、ご飯出来上がりましたよ」
「わー。美味しそう!!」
「うん、うまそう」
「お! リガスの作った料理か、美味そう……」
リガスの作った料理も食べ終わり明日に備えて寝る事にした。
「ふぅー食べ過ぎた」
「姉さん食べすぎ」
「あはは、チルちゃんも結構食べてたじゃん」
「いや、お前ら二人が食い過ぎだろ」
あれやこれやと準備や食事をしていると、辺りがすっかり暗くなり、交代で寝る事にした。
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