第89話 モンスターとの戦闘

「「ふーんーふーん」」


 先程まであんなに喧嘩していたのに、ロピとチルはもう仲直りをしてお互いの手を取り合って鼻歌を二人で口ずさみながら前を歩いている。


「チルちゃん、見て鳥がいるよ!」

「美味しそう……」

「チルちゃんは食いしん坊なんだからー」


 二人は笑いながらどんどん前を歩いて行く。


「ほっほっほ、流石姉妹ですなあんなに早く仲直りするなんて」

「そうだな」


 俺とリガスも二人を見て微笑んでしまう。


「お兄さーん! 魔族さーん! 早く早く」


 気付いたら二人は大分先に進んでいた。


「アトス殿……どうやらモンスターの気配です」


 リガスは物静かにモンスターの接近を教えてくれた。


「お、お兄さん! モンスターの気配」


 少し遅れてロピがモンスターの接近について教えてくれた。


「リガス、近いのか?」

「えぇ。恐らく逃げても向こうは完全にこちらを感知しているので、追いかけてきますな」

「お兄さん、どうするの?」


 ロピとチルがこちらに戻ってきた。

 モンスターか、どうする……? 

 オークとゴブリン達の村での出来事を考えたら小型相手なら倒せる可能性はある。


「モンスターの大きさは分かるか?」

「ごめんお兄さんそこまでは分からない」

「私も分かりかねます」

「アトス様、戦いましょう」

「でも、チルちゃん危なくない?」


 ロピは心配そうにチルに聞いている。


「確かに危ないけど今の私達がどれくらい戦えるか試してみたい」

「ほっほっほ。私の主人はお転婆ですね」

「チルちゃん、言い出したらきかないしねー」


 うーん、ロピが言うように危険は危険だが、チルが考えている事も分かる。今の俺達四人でモンスターを倒せるなら、かなり今後の動き方が変わってくるしな。


「よし、戦闘するか」

「ありがとうございます、アトス様!」

「だが、危ないと思ったら直ぐに逃げるからな」

「はーい」

「それと、戦闘は小型相手のみだ」

「分かりました」

「それじゃ、モンスターを迎え撃つ!」

「「「はい!」」」


 俺達は少し開けた場所まで移動してモンスターを待ち構える。構成的には前衛としてアタッカーのチルとタンクのリガスで二人だ。後衛としてサポートである、俺とロピの二人になる。前衛は開けた場所の真ん中で構えを取っている。そして後衛の俺達はジャングルの茂みに身を隠す様に戦闘態勢を取っている。


「リガス、この前みたいに盾でモンスターの攻撃受け切れる?」

「ほっほっほ、チル様の命令でしたらいくらでも」

「無理はしちゃダメ」

「かしこまりました」


 前衛は前衛で作戦会議を行なっている。


「では、まずはモンスターの攻撃を盾で防ぎますので、チル様は腹部に一撃をお与え下さい」

「わかった!」

「その後は。私がひたすらチル様に降りかかる火の粉を受け切ってみせましょう」

「頼もしい」


 どうやら、モンスターの初撃はリガスが受け止める事になった。あの時みたいにスキルを発動すればリガス一人で小型の攻撃を受け止める事が出来るだろう。


「お兄さん、私達はどうする?」

「そうだな、俺はスキルでチルとリガスのサポートをするから、ロピはスキルで相手の気を逸らしてくれ」

「はーい!」


 そう言って、チルは地面に転がっている小石を集めだした。

 少し待機していると、地面が微かに揺れ始めた。そして次第に時間が経つにつれて振動は大きくなり最終的には、どんな人でも気づく程地面からの振動が強くなる。


「アトス様、そろそろ来ます!」

「よし、小型なら戦闘。中型なら直ぐ逃げるからな」

「「「はい!」」」


 そして、茂みの奥から草木を掻き分け、倒し、踏み散らかしながらモンスターがやってきた。


「小型です!」


 チルが周りに聞こえる程大声を上げる。そして小型は突進をする為にチルの方向に向き走り寄る。


「ほっほっほ。モンスターって言うのはどいつも学ばないんですかね。主人に手を出して良いわけないだろう!!」


 リガスが普段の口調とは真逆に声を荒あげる。そして、素早くチルとモンスターの間に移動して持っている盾を地面に突き刺す。


「カネル!」


 リガスの持っていた盾が大きくなりリガスの身体を隠す。そして小型の攻撃を受け止めた。接触時にとてつもない衝撃音が鳴り響く。だが、リガスは一人で小型の攻撃を受けきっている。


「チル様!」

「うん!」


 チルはリガスの合図と共にリガスの後ろから前に飛び出して小型の腹部に潜り込む。


「やべ!」


 俺は前にも見たはずなのに、リガス一人で小型の攻撃を受けきった状況に魅入ってしまい、リガスに対してのサポートを忘れてしまった。チルのサポートはしないと、流石に攻撃が効かないだろ。


「アームズ……。アトス様お願いします!」

「アタック!」


 俺はチルの下に赤いラインを敷く。

 そして、チルは小型の腹部に潜り込みこの前同様鋭い一撃を放つ。鈍い音がした後に小型はチルとリガスから距離を取った。


「雷付与!」


 小型が距離を取る為に一度後ろに下がるタイミングでロピが小石に電気を付与して小型に投げつける。小型に当たった瞬間に電気が流れる音が聞こえたが小型は一瞬動きが鈍ったが直ぐに元に戻り後ろに下がっていく。


「うぇーん、またみんなに役に立たないって思われるよー」


 ロピはスキルが小型に効かない事を気にしているらしい。人間相手ではかなり強いんだけどな……。

 そして、小型は少しの間まるでこちらの様子を窺っているかの様に止まっている。

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