第40話 スラム街での出来事……

 

※胸糞悪いシーンが含まれる為、苦手な方はお気をつけ下さい。




騒がしい方に、ゆっくり静かに、バレないように建物の物陰から覗いてみた。


「ギャハハ、コイツ殴るの最高!! オラッ!!」

「だな! 蹴った時に悲鳴を我慢する所も良いぜ!」


 ガラの悪そうな男二人が何かを蹴っているらしい。ここからだと見え辛い為何を蹴っているか分からない。


「それにしても、アイツも物好きだよな」

「確かにな。こんな小さい奴、相手に殴ったり蹴ったりしても、そこまでスカッとしねぇよな!」

「ギャハハ! あれは病気だな病気!」


 二人で笑いながらも、俺から見えない何かを楽しそうに蹴り続けている。


 俺は何を蹴っているのか気になっていたので少しずつ移動を試みた。


「しかも、毎回だろ? あんな小さいの相手するより、スゲー美人を痛ぶった方が面白い反応していいよな!」

「そのとおーり!」

「だが、エルフ相手なら俺はやってみたいぜー」

「見た事ねぇーが、めちゃくちゃ美人って聞くしな」

「どうやら、お偉いさん方はエルフを奴隷にして囲っているらしいぜ」

「金持ちは羨ましいねー」


 少しずつ移動して、やっと蹴っている何かを見つけた……。

 だが、見た瞬間俺は怒りを覚え、身体が勝手に動いていた。


「それにしてもよ! お前の姉がアイツに毎回やられているのにお前はされない理由わかるか?」

「……」

「それはな! お前のねぇーちゃんがお前に手を出さない代わりに自分が身代わりになっているからだよ!」

「──ッ?!」


 男達が蹴っている人物が、びくりと体を震わせた。


「ギャハハ! こいつ今頃気付きやがったのかよ!」

「すげー顔! コイツの顔いつも表情変わらなかったけど、今は最高だわ! お前の姉はアイツが相手だから、俺らより酷い事されているぜ、きっと!」


 するとボロい古屋から男が出てきた。


「ふぅ……。お前ら、あんまり妹を虐めてんじゃねぇぞ」

「お! 終わったのか? なら早く飯行こうぜ!」

「だな。おい! また来るからな!」

「「……」」

「──ッチ、姉妹揃って、だんまりかよ」


 今のやり取りを走りながら聞いていて俺は理性が振り切れる感じがした。


「──ッフザケンナよ! お前らッ!」


 三人の中の一番偉そうな奴を不意打ち気味に思いっきり殴った。


「──ウッ!! なんだ?!」

「おい、ガキ!! 何のつもりだ?!」

「殺されてぇか!」

「うるせぇ!! お前らこの子達に何しやがった!!」

「あ?! そんなのお前に関係あるのかよ!!」

「ただ、済むとは思ってねぇーよな?」

「ギャハハ、バカだよなコイツ」


 俺は三人に殴られる。


 だが、怒りが収まらない為、全力で抵抗したが大人三人に勝てる筈も無く殴られ続け身体が動かなくなる。


「ク、クソ……」

「ガキが、調子に乗るからこんな事になるんだよ」

「そうだぞガキ。それにこいつらは獣人だから、いいんだよ!」



 やっぱり……。俺は獣人少女が男二人に蹴られ続けているのを見て身体が動いてしまった。


 理由としては、やはりシクと重ねてしまったからだろう……。

 それに、コイツらの話を聞く限り、姉の方は毎回男に……。


「それに、コイツら獣人は、どうせ働く所がねぇんだよ。だから俺が目的を果たしたらその分の対価をしっかり払っているんだぜ?」

「ギャハハ、お前そんな事言って、昼ご飯も食べられ無いくらいしか払ってねぇーじゃん!」

「本当だよな! ヒデェーよな!」


 男達はニヤニヤしながら俺を見ている。

 クソ! クソ! クソ!!


「なんだ? その目はよ!」


 そう言って再び男達に蹴られる。本当は、こんな奴ら、ボゴボコにしたいが俺は戦闘向きでは無いしスキルもこの場をどうにか出来るスキルでは無い。


 気を失う寸前に俺は獣人の姉妹を見る。

 すると、獣人の姉妹は、この世に絶望している表情をしていた。


 それを最後に俺は気を失った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る