第39話 アトス12歳になりました!

 スキルの話をカカから聞いた日から約二年の月日が経った。


 俺は十二歳になり、相変わらずデグとベムに迷惑を掛けながらも、一人暮らしを満喫していた。


 今までは、雑用やゴミ拾いなど身元不明の人でも仕事を斡旋してくれる、怪しそうな所に仕事を紹介してもらいながら、お金を稼いで暮らしていた。


 結局アレから人間族の住処からは一度も出てないので、スキルを試す機会が無かった。

 だが、今日から俺は十二歳になったので、冒険者になる資格を得たのだ!


 まぁ、パーティーは俺のスキルのせいで組めなさそうだが、薬草などの依頼を受けられるので、今よりずっと生活が楽になる。


 この二年間で俺はシクと行っていた訓練をずっと繰り返していた。

 そして、前よりも先読みの能力は上がった気もする。先読みの訓練にはデグに手伝って貰ったが、シクと比べると遅すぎて捕まる気がしない。なので、先読みの訓練は頭の中でモンスターや人を動かして先読みするシュミレーションに切り替えた。どれくらい効果があるかは不明だが、いい方向に転がってくれると嬉しい。


 デグとベムはあれから新しいパーティーメンバーが見つかり、四人パーティーで冒険者を続けている。

 一週間前から長期の冒険に出ると言っていたので、しばらくは帰って来ないらしい。

 デグは俺の事を心配しつつもカラッと別れたが、ベムは俺にずっと抱き着いて出発するまで離れてくれなかったな……。


 そんなこんなで、俺は今冒険者ギルドに向かっている。


「俺も、とうとう冒険者になれるのかー。これで生活が楽になるな!」


 やはり、怪しい所に紹介された仕事は全然稼げなかった。食べ物は基本安い食材だけで、たまにデグやベムがご飯を奢ってくれたりした。そんな生活を送っていると、デグ達に一緒に住もうと提案されるが、それは嫌だったので

断り続けていたら、諦めてご飯を届けてくれる様になったな……。

 

 二年間経っても、なんだかんだデグ達に迷惑掛けている事に申し訳無さを感じる。


 若干の自己嫌悪をしていたら、冒険者ギルドに着いた。


 ギルドの扉を開けて中に入る。こういう時の定番は、受付行くまでに冒険者に絡まれるのが定番だよな……。


 俺はビクつきながらも、ゆっくり歩を進める。


 だが、そんな事も無くすんなり受付まで来られた。

 よく見ると俺くらいの子供も普通に居る。やはりこの街では冒険者が一番儲かる為、12歳と同時に冒険者になる子供がかなり居るらしい。


「あの、すみません」


 俺は受付の女性に声をかける。


「はい、本日はどの様な御用でしょうか」

「冒険者登録の為に参りました」

「はい。それでは必要事項をこの紙にお書き下さい」


 そう言って、渡された紙にサラサラと適当に埋めていった。


「書きました」

「確認致しますね」


 女性は書き忘れが無いか確認後に、奥の部屋にしばらく行って帰ってきた。


「はい、ご登録完了致しました。明日から依頼を受ける事が出来ますよ」

「分かりました」


 こうして、俺は冒険者登録を終えて冒険者になった。普通はここからパーティーを探して、入れて貰ったり、パーティーを作ったりするが、俺には無理なので関係ないな……。


 俺は自分の家に帰る事にした。


 明日から、バンバン依頼をこなして稼いでやるぜッ!!


 冒険者になった事により気分が高揚しているのか普段行かない場所にでも行ってみる事にした。

 俺は普段の帰り道とは違う道を通って歩を進める。


 しばらく、歩いて居るとこの街のスラム街の入り口が見えてきた。


 そういえば、デグ達が言ってたな。スラム街だけは行くなって。

 どうやら危ない奴ばかりいるらしくて何をしてくるか分からないらしい。


 だが! 今日の俺はなんでも出来そうだぜ! って気分なのでスラム街入って見る事にした。


 もし危なくなりそうなら、すぐ帰ればいいよね?

 そこら辺の判断能力は、見た目通りの12歳とはわけが違うぜ! なんて言っても精神年齢は年齢の倍以上だからな!


 無駄にテンションを上げて、スラム街に足を踏み入れた。


 しばらく、歩いて居ると、どんどん道がボコボコになり舗装されていない道ばかりになる。

 そこらの地面に人が寝ていたり、その寝ている奴から何か取ろうとして居る奴などがいる。


 それに臭いな……。


 スラム街を散策して早々に後悔してきた為帰ろうとした時、遠くから騒がしい声が聞こえたので、最後の冒険だ! と思い見に行ってみることにした。

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