第41話 スラム街での出来事 2
チンピラみたいなのに、ボゴボコにされ気絶してから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。目が覚めたら真っ暗になっており、獣人の姉妹は居なくなっていた。
──ッそして、俺の着ている物も無くなっていた?!
「流石にパンツまで取られるとは思わなかったな……」
あちこちに痛みが走り顔を歪める。
「先読みの訓練しても、相手の攻撃とか読めないな」
俺はしばらく裸で呆然と辺りを見回した。スラム街では裸の人間はそれ程珍しく無いが、流石にモロ見えの奴は居ない。
段々と意識が覚醒してきて急に羞恥心にかられ、急いで大事な所を隠した。
だが、俺の事を気にする人などは居なく、朝と同じく道に寝ている者も居れば、その寝ている人から何かしらを盗もうとしている人も居る。
あの子ら、こんな場所に住んでいて大丈夫なのかな……。
俺は気になったが土地勘の無いのに探しようが無い。
「とりあえず、今日は帰るか」
俺は、スラム街から出て全速力で家に帰る。
次の日、目が覚めた俺は本来なら冒険者になったので早速依頼をこなして行きたい所だが、昨日の獣人姉妹がどうしても気になってしまい、もう一度スラム街に行く事にした。
「また、変な奴に絡まれたくないな……」
昨日殴られたり、蹴られたりした時の痛みがまだ残っている為、次にまた会ったら同じ目に遭わされるかもしれないという恐怖感に駆り立てられる。
しばらく歩いたらスラム街の入り口に辿り着いた。
スラム街に住む住人達は基本スラム街を出られない様になっている様だ。
「刑務所みたいだな」
スラム街の住人はスラム街を出られないが、その代わり罪人や人間族の住処に来た獣人族などはスラム街に逃げ込む事で奴隷にされなくて済むらしい。
しかもスラム街は法が無い為、殺人、暴行、強姦などしても罪に問われないので犯罪者などには楽園となっている。
「恐らく、あの獣人姉妹も奴隷にならない様にスラム街に住んでいるんだろうな……」
俺は昨日と同じ道を慎重に歩いて行くが、獣人姉妹は見つからない。
更に奥へと歩いて行くと柄の悪そうな者達が増えていく様な気がする。
注目を浴びている感じだったので、メイン通りではなくて更に人気の無い道を通る事にした。
──ッ居た!!
「あの子達昨日の獣人姉妹だな……」
俺は見つから無い様に獣人の姉妹を見る事にした。
「姉さん、水とパン盗って来たよ」
「チルちゃん、ありがとうー」
「姉さん、他に何か手伝う事はない?」
「もう、ご飯出来るから座っててー」
「うん」
どうやら、妹の方はチルと言うらしい。チルは常に気難しい表情である。
一方姉の方は常にニコニコ笑っている。
二人の獣人はシクと同じく見た目は人間族とほぼ同じで耳だけ獣耳になっている。
「おまたせー。チルちゃんいつも質素なご飯でごめんねー」
「全然大丈夫。姉さんのご飯はいつ食べても美味しいから」
「ありがとうー」
そして二人は薬草的な草のみを食べて居た。
あれが、朝食か?! あんな量でお腹が満たされる筈も無い……。
「姉さん、今日も美味しいよ」
「良かったー。本当はもっとチルちゃんに食べさせてあげたいんだけどねー」
「ううん、これで十分お腹いっぱい」
ニコニコしていた姉の表情が一瞬だけ申し訳無さそうになり、また直ぐに笑顔に戻った。
「こんなんじゃ、お姉ちゃん失格だねー」
「そんな事ない。姉さんは最高の姉さん」
「ありがとうー。これからもバンバン稼ぐよー」
「ね、姉さん。その事なんだけど私も姉さんの代わりに稼ぎたい」
「それはダーメ。チルちゃんは私と違って綺麗なままでいて欲しいからー」
「姉さん……」
妹のチルが物凄い悲しそうな表情になる。姉は、あの男に……。
俺は我慢出来なくなり、せめてご飯だけでも、どうにかしてあげようと姉妹達に近づいてみた。
「ねぇ、君達」
「「──ッ!?」」
声を掛けた瞬間、姉妹の行動は早かった。二人は即座に逃げ出したのである。
「──ッえ?! ちょ、ちょっと待って!」
俺は姉妹を追いかけるが、さすが獣人。子供でも走るスピードが物凄く早く、俺は全力で追いかけても距離が縮まる所か徐々に離されていく。
クソ! 全然追いつけねぇ!?
俺はとうとう姉妹を見失ってしまった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます