第7話 訓練 2

 「アトス、起きろ朝だぞ」

 「んっ……」

 「ご飯出来ているぞ」

 「……あと五分……」

 「何を訳わからない事を。まったく……ほら起きろ」


 前の世界では当たり前のやり取りでもこの世界では通じないか……


 とりあえず起きるしか無さそうだな。


 「……ん、おはようシク」

 「全く、昨日は帰ってからずっと寝ていたというのに」


 そう言いながらも俺の前に朝ごはんを用意してくれる。昨日の分のイノシシ肉だ。前なら朝からこんなボリュームの有る物を食べられ無かったが、やはり体は子供の為難なく腹の中に収まってしまう。


 「今日はご飯を食べた後雑学だからな」

 「うーん……はーい」


 まだ完全に目が覚めてないから生返事になってしまう。


 「シク……美味い」

 「そうか。いっぱい食え」


 朝ごはんも終わり雑学の時間になる。この時間はいつものルーティンになる。勉強は嫌いだが算数や社会などと違って生きる為の勉強だし必死にはなるな。


 「よし、アトス。昨日の復習からするぞ」

 

 そう言って講義が始まる。


 「昨日も教えたがまずモンスターの大きさはどう分類される? 」

 「えーと、確か小型、中型、大型、特大型だな」

 「その通り。では小型と中型の討伐人数はどうだ? 」

 「小型が五~六人。中型が十五~二十だな」

 「その通り。よく覚えてて偉いぞ」


 こちらに近づき頭を撫でてくれる。

 精神年齢的には、もう三十を超えているが、嬉しい。


 これが母性なのか?!


 「シク、大型と特大型の討伐人数は? 」

 「その二つに関しては分からない。実際に倒した歴史が無いからな」


 やはり、昨日言った通り、大型と特大型は架空のモンスターであり実際には存在していないと言われている様だ。


 「それでは、小型と中型の見分け方を説明する」


 「見分け方? 大きさだけじゃないのか? 」

 「もちろん大きさの違いもある。まず小型は一~五メートル。中型が十五~二十メートル程ある」


 俺が転生した時に襲われた大きいイモムシは大きさ的に中型か? でもツノみたいなのが生えていた様な……


 「大きさ以外も区別する方法がある。それは強さだな──小型より大きい筈の中型だが移動スピードは小型よりも早いし、頑丈で力もある」


 確かに、あの時の中型は小さい木などは倒しながらも追いかけて来てたもんな。


 「いいかアトス。モンスター達は人を食う。そして食った後は成長する」

 「成長すると、どれくらい強くなるんだ? 」

 「小型で大体人を一人食べる事により、討伐人数が五人増えると思え」

 「中型は?」

 「想像がつかない。だが小型より成長度合いは大きいと聞く」


 もう、アニメや漫画みたいに一人でモンスターを倒しまくるのは不可能か。

 

 俺の異世界最強の夢が……


 「シク、この世界に魔法とかある?」

 「魔法? なんだそれは」

 「うーん、手から火や水などを出してモンスターを倒したり?」

 「うーん。アトスがどんな事を想像しているか分からないがスキルと言うのはある」


 お?! スキル! いきなりテンションが上がってくる。

 やはり男として、俺も異世界転生物は大好きだ。


 「スキル!? シク、それはどんなのだ!」

 「いきなり、騒いでどうした?」

 「男として! 特殊な能力を使うのは夢なんだ!」

 「そ、そうか……」


 表情はいつも通り変わらないが、珍しく戸惑った態度を取った。


 俺変な事言ったか……?


 「シク! そのスキルについて教えてくれ!」


 これで俺も異世界最強でウハウハだな。


 「いや、今日の雑学はここまで。スキルについてはまた今度の講義で説明する」

 「そんな……」


 テンション高い俺に戸惑ったのかシクはスキルの説明を先延ばしにした。


 絶対次の講義では説明してもらおう!

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