コタツのなか
今夜、頭を丸めることもできず心の行き場を失ったぼくは、こたつの中に引きこもっている。大いなる夜の輪郭は意外と小さくてかわいい。ぼくはもう一度スマートフォンの画面を開く。設定で画面を暗くしているが、それでも光が強すぎて目を細める。いっそのこと目を閉じてしまいたい。だが目を閉じたところで、眠ることなんて出来ないことは幾度と経験して知っていた。夕方のぼくは、不安と期待が入り混じっていた。それでも明るくて元気なのが取り柄のぼくは迷ったらやるという選択をとってきた。そして今回も。やめろやめろという嫌なフラッシュバックを押し切って、眩しいくらいのハッピーエンドをついつい期待してしまった。今よりもきっと楽しいことが起こるってことを、ぼくだけは信じてしまった。
「そうさ、惨めな虫さ!俺はこたつに居住むでか芋虫さ!」
声に出さなければ、危ない気がした。自分の今やってることの滑稽さを俯瞰して笑っておかないといけなかった。二十二歳の男が振られたショックで、夜更けに炬燵に潜って自分は芋虫だと独り言を叫んでいる。友達に電話して、笑ってもらえばいい。でも今は誰とも話したくなかった。
――――メッセージなんて送らなければよかった。
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