2ようこそ【機関】へ
ようこそ【機関】へ 金貨
「うん、これでいいだろう。」
サニーはそういって古びた電話ボックスの前に立ち止まった。
「はは~ん。これが偽装されたいわゆる次元転送装置なんですね。当たりでしょ先輩?」
どうだ?と言わんばかりのドヤ顔を向けてくる。内心ちと腹が立つ。
だが、アーロンは陽炎の相手をする余裕が無かった。
「店を出たときから、何だが顔色悪いですね。どうしたんです?」
答えたのはアーロンではなくサニーだった。
「ほっといて良い。「移動術」には弱い奴が多い。それを思い出してるんだろう。」
弱ってる奴は置いていく、と言わんばかりに話を切り替える為、サニーはポケットから金貨を取り出す。
「さて陽炎氏。【機関】に所属してもらう為、これから私が教える【機関】のイロハのイから経験して覚えてもらうぞ。」
「はい!宜しくお願いします!!」
アーロンと打って変わって元気一杯な陽炎である。
見かねたアリアが声をかける。
「はい、薬。一応袋もあるからやばかったら言って。まぁその時に私が大丈夫かわかんないけど……。」
アリアに渡された薬を水を含まず三錠ほど飲み込む。
幾分気分は楽になった…気がする。
「この金貨は、機関の通貨だ。ありとあらゆる機関が提供するサポート・サービスを利用できる。エージェントも博士も共通だ。」
「ふむふむ。」
「用途の一つとして、通貨を利用できる機械に金貨を入れると……」
金貨を投入した次の瞬間、電話ボックスから聞き慣れない機械音が響き渡った。
例えるなら、車から機械生命体に変形するような音か。音が大きく、電車の通る錆び付いた高架下にいるような気分になる。四人は特に動じなかったが初めて見る陽炎は驚愕の表情を浮かべている。
音が止み、辺りが静寂に包まれる。
見た目には特に変化はない。
第一声は陽炎があげた。
「……これ五月蝿いですねぇ。」
「しょうがない。次元間を超えて変形させ、TPOに応じ必要な機能を加えるからな。これでも随分改良された方だ。」
サニーは受話器を手に取り番号を入力した。
そして思い出したように。
「アーロンここからしばらくはお前が説明しろ、記憶の確認も踏まえてな。俺は先に行って待ってるぞ。」
「……了解。」
「せ~んぱいっ。お願いしますね。」
少しご機嫌にアーロンに近づく。
「お前は気楽でいいな・・・。今サニーが入力してるのは自分のIDだ。入力が終わったら・・・。」
説明と同時に受話器が応答する。。
『ご機嫌用ォ。エージェントサニーィ。ご用件はァ?』
「任務完了だ。帰還する。」
『りょーか~いィ。アーロンちゃん元気にしてたァ?今度のアーロ
「早くしろ。」
『つれなぁいィ。もう少しぐらい・・・』
「・・・・・・・・。」
『沈黙がこ~わ~いィ~。じゃあ行くよォ。動かないでねェ。』
一連の流れを見ていた陽炎は総括するように言う。
「サニーさんが怒ってますよ先輩。誰ですか声の主は。」
「ただのオペレーターだよ。AIの。無駄に人格が形成されてる。製作者の趣味・・・分身代わりだっけか。エンジニア・ミーコ。元・発明家、研究員、エージェント、ハンターと職を転々としてる【機関】の変人だ。」
「へぇ~。是非会って見たいですね。」
「・・・。そう思えるお前も十分変人だな。まっ今みたいにオペレーターが応答してくれるから必要な事を要求して。」
電話機から妙な光が放出される。虹・・・と言うほど鮮やかでは無く、どんよりとした深緑色になった、かと思えば温かい暖色に変化する。安定しない光に包まれる内、エージェントサニーの体が奇妙に揺れ始める。やがて体は受話器の中に吸い込まれ始め・・・。
「すっごーい。消えちゃった。」
陽炎は小さな拍手を送る。ティムが割って入ってきた。
「・・・・次、ウチの番。」
金貨を用意し電話機に近づく。目の前に来るとピタっと足を止めた。
「?どした。届かないなら手伝おうか?」
気分を変えるため、アーロンが茶化しながら言う。
次の瞬間。
「・・・ッ!伏せて!!」
ティムでは無くアリアが叫んだ。
衝撃音と共に電話機が弾け飛ぶ。
「陽炎ォ!!」
続いてアーロンが叫ぶ。
視線の先で、陽炎が前のめりに倒れようとしている。
喉には風穴が開いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます