僕はエージェントアーロン-3 笑驚

店内の注目を集めていた。


原因は、僕に声をかけた2人ともう1人含めた3人だ。

特筆すべきはその容姿。

一人は50代位の初老の男。身長180位で、ピシッと伸びた姿勢と長い脚で上下黒のスーツを着こなしている。

一人は20前後の少女。身長は160程、腰まで伸びたツインテール、膝上ほどのフレアスカート、ノースリーブのシャツにインナー、全て黒で統一されている。ここまでは一般的な服装だが明らかに特異な部分が存在した。その少女には腕が六本存在しているのだ。腕を隠すためだろうか(ほとんど意味をなしていないが)ケープのような物を羽織っている。

最後の一人は魔法使いだ。100人いれば100人が答えるであろうオーソドックスな魔法使い。つばの広い三角帽、ぶかっとしたローブ。全て黒で統一されている。そして、兎だ。・・・。使い魔とかじゃなくて、その恰好をしている人が兎なのだ。


従業員と他の客はポカンと奇人三人を見ていた。そんな人達に話しかけられている僕にも視線を向けている人がいる。そらそうだ、奇人三人に話しかけられてるのがどのような人物か気になるのは不思議じゃない。

「あっはっはっはっ・・・!!」

陽炎は、僕の後ろで机を叩きながら店内の雰囲気に合わないほど笑っていた。

「先輩!先輩!ププッ・・・!!先輩ってアーロンって名前でしたっけ?ふっ・・!」

違うよ。と言いたいが否定できない。

「もしかして、「夢」の「俺」のことですか?アーロンって・・・プーッ・・・!!」

「何がそんなに可笑しいの。」流石にそろそろ反論する。いつまでも馬鹿にされてるのも気分は良くない。

「いやだって、可笑しいでしょう。ついさっき「夢」の仮説をだした所なのにいきなりこんな人達が出てきて・・・ははっ・!!アーロンって言われて先輩滅茶苦茶反応してるんですもん。はっはっはっ・・・!!いい演技でしたよ!はっはっはっ・・・」

どうやらドッキリか何かと思ってるらしい。もう、ほっておこう。今大事なのはこの奇天烈集団の相手だ。

向こうも同じような事を思ったのだろう、先に男が口を開いた。

「お嬢さんそろそろよろしいかな?我々と君たちで今後の事を話したいのだが・・・。」

陽炎がまた吹き出して笑いだす。

「あっはっはっはっはっ!!!何ですかそのキャラ!洋画のエージェント○○みたいな喋り方!!お腹痛い・・・・ククッ・・・!」

更に陽炎は礼儀も知らねぇといった感じで後ろの二人を指さし

「周りのお二人もグットです!先輩が私の仮説を予想してたかどうかは知らないですけど、如何にも「異世界」って感じで良い!あっはっはっ!!」

流石にやかましかったのだろう。見かねた従業員がやってきた。

奇人三人の一人が従業員に気づいたようで。

「ごめんなさい。私たちも騒ぎは好まないの。私は好きだけどね。」

腕が六本ある彼女は、魔法使いの兎に言う。

「ティム。眠らせよっか取り合えず。」

「・・・・ん」

兎は短い返事でローブから杖を取り出し数回振る。空中に光の玉ができそして次の瞬間・・・

パンッ・・

と風船が割れるように弾け、小粒の光が奇人三人と僕ら二人以外の人間に直撃する。

「・・・・・・はっ?」

先ほどまで爆笑していた陽炎も、流石に目の前の光景に驚愕の色が隠せないようだ。

辺りを見回すと直撃した人間は全員気持ちよさそうに寝息を立てていた。


「さっお二人さん。話をしよう。」


「先輩これ本物なの?」

すまんな陽炎。

記憶にあっても、僕も初めて生で見るんだ。

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