第4話 What's the first word of the world?

 世界で一番最初に出来た言葉というのは、なんだろうか。唐突にそんなことが気になった。

 人類がまだほかの人類と、あるいは野生動物と闘っていた時、どんな意味の言葉が最初に発せられたのだろうか。少し考えてみたい。


 もともと、声というのは、敵を威嚇するため、または仲間に敵が来たことを知らせるために獲得した器官だと記憶している。これは定かでないが、ホエザルなどは音の高低によって、敵の種類まで判別していたんじゃなったか。

 俗にイケボと言われる人も、その声は異性を魅了するためでは無く、低周波でよく響く「威嚇ツール」としての役目を負っていることを覚えておいてほしい。いや、別に覚える必要はないか。


 話を戻そう。声は威嚇or報告用ということだった。だが、人間以外の動物のそれは、文字に表してみると、「ヴォホゥッ!ヴォヴォヴォ!」とかいう感じになって、表現を統一できない。ここでの言葉は、もっと画一的なものということにする。


 であるならば、人間でいうところの「敵が来たぞ!」というのが、世界で一番最初の言葉だろうか。これをもう少し分解すると、「敵」「が」「来た」「ぞ」となる。敵=名詞、が/ぞ=助詞、来た=動詞、と考えると、この世界で一番最初と言えそうなのは、なんだろうか。そもそも文法というのは、どういう風に構成されていったんだろうか。いや、それについては長くなりそうなので、誰かに任せよう。

 まぁ、先の候補の中だったら、名詞が最初に来そうな感じはする。最悪「敵!」と叫ぶだけでも効果はありそうだ。


 …いや、待てよ。「敵」というのは少し抽象的だな。もっと範囲の狭い「ライオン」とか「ウサギ」とかの方が先だろう。

 じゃあ、何の動物を表す言葉が一番最初に作られたのだろうか。うーん……。

 あっ、それはもしや「人」か? 人は昔から集団で行動してきたから、生まれたときから人は人に囲まれていたはずだ。

 ……生まれたときから? つまり、赤子のときから?

 ここにきて、「人」ではなく「ママ」説が出てきた。我らの母は、言葉の母でもあったのかもしれない。

 それに、そろそろ俺は出かけなければならないので、そういうオチにしておこう。



 そうして彼は凡人らしく、世間と同じような時間に、普通の人が勤めるような会社に向かうのでありました。

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