第394話 用語解説69

品質管理部なら知っていて当然な単語を解説




・ファクトリーオートメーション


 工場の自動化。

 危険な作業なども自動化して安全性を向上させたりもするが、殆どが合理化目的で実施されている。

 作業者が「うるせーこと言うなら機械にやらせろ」と言った結果、本当に機械による自動化が実現して不要になってしまうブーメランが発生することもしばしば。

 モデルチェンジで類似品なのに、作業者を排除してしまったなんて事も。

 FMEAやFTAを実施した結果、人による作業は無くせばいいじゃないっていう結論になり、かつ予算がつけばすぐにでも出来ます。

 品管と生産技術が望む理想郷、どこかにあるユートピア。

 どうしたら行けるのだろう、教えて欲しい。

 でも、どこまでいっても最後は人間によるミスが残るのも事実。

 パラメータ打ち込みミスだったり、設備の劣化の見逃しだったりがあります。

 不具合の対策でも自動化して完了ではなく、運用する作業者の教育をどうするかまでが必要ですね。

 検査まで自動化されたラインで不良が流出したら、次は何をすればいいのかわかりません。

 廃業?



・加工不能な図面


 製造業じゃない人はわからないかもしれませんが、今の技術でもなんでも加工出来るわけではありません。

 ところが、世の中にはそんな加工不能な寸法を描いた図面が存在します。

 今もどこかで生み出されているのは、ツイッターで皆さんの反応を見ると明らか。

 本来はそれは設計部門から外に出る時に止めてもらうべきなのですが、設計者も全てを知っている訳ではないので酷なお願いです。

 で、それを社内の加工部門や外部に発注するのですが、昔は作る側も専門知識が十分にあったので、設計者に加工不能であるフィードバックが行われておりました。

 自分が昔所属していた会社では、ベテランの職人が客の設計者を怒鳴っていたりもして、設計者もそうやって育っていったのですが、最近は部門ごとの垣根が高く頑丈になったせいか、購買調達部門が発注先を選定したら図面が間違っていても、受注した会社に図面通りのものを作らせろという設計者が多いですね。

 しかも、モデルチェンジの時でも図面を直さない。

 間違いを認めたら死ぬ病気か?

 で、購買調達部門も図面の読み方や加工なんて知らなくても、見積もりとる業務は出来ちゃったりするので、自分が発注しようとしているものが加工不能だなんて気づきません。

 受注側も安さが売りで、図面の公差の意味なんて知らない海外メーカーだったりするので、ものが出来上がって受入検査で不良というか、図面とアンマッチが発覚します。

 品管としては図面が間違っており、製品は使用上問題がないのはわかっているので、設計部門と購買調達部門に図面の訂正を提案するのですが、そこで直す直さないで喧嘩になったりすることがしばしば。

 設計部門が品管部門よりも社内ヘイト集めている気がするのはそういうところだぞ。

 そして、それを直ぐに使いたい試作部門や製造部門からの要求で、購買調達部門に泣きつかれます。

 作品中では検査規格書を使って、設計変更をすることなく良品としていますが、他には特採申請書を書いて使うこともあります。

 噂では検査成績書を偽造して合格にする荒技もあるとか。

 あくまで噂ですよ。

 これらはあくまでも暫定対策であり、根本は加工不能な図面を出図しない、社外に出さないを対策しないとダメですね。

 じゃあどうすればいいってなるのですが、設計を外注するくらいしかないのかな。

 外注先がミスをしないわけではなく、外注先にミスを対策させることなら、社内のパワーバランス関係ないので。

 まあ、設計部門の反対にあうんでしょうけど。

 製造部門以外の問題って解決しない事が多いですよね。



・支給品


 弱小メーカーにとっては金額的にも品質管理的にもありがたい制度。

 無償支給ならそもそも見積もりに載せなくて済むし、有償支給であってもコストの交渉は客先が担ってくれる。

 それに、支給品に不具合があった場合も、連絡はするけど調査と対策も客先が担ってくれます。

 納期の管理もか。

 今話題の半導体の調達なんて、弊社じゃ100%無理ですね。

 ダイカスト品の切削なんかは、鋳巣が出て不良になった場合でも、客先からの支給であれば費用を請求できます。

 それが自己調達だった場合は補償の交渉だったり、対策なんかは自社の責任になるので大変です。

 特にノウハウが無い製品や工法だったりすると、素人が医療ミスの裁判で戦うくらいに無理筋。

 自己調達したところで、バカみたいな利益を乗せるなんて出来ないので、全部支給品にしてもらいたい。



・タバコを吸った


 読者に基本知識として美味しんぼを求めるのはどうかと思いますが、問題が発生してそれを解決していくストーリーは非常にパク……、参考になります。

 そこに品質管理的な目線を足してやろうと思って、今回はいつもと違う行動をとってしまった作業者の例を書いてみました。

 最初からタバコを吸っていたのなら教育不足なんですが、特別な条件下でそうするのであれば、そこの変化点を対策していくのが品質管理の考え方。

 なにも品質管理部門がやる必要は無く、管理監督者がそういった変化点を作らないようにすればいいのです。

 時代が進めば始業時のメンタルヘルスチェックで、感情の振れ幅を数値化して測定出来る仕組みが出来るのかもしれませんが、今のところはそんなものは工場には存在しないので、上司の能力がものをいいます。

 客の監査当日に朝礼で、「いつも通りに作業していれば問題ないです」と話すなんてのもその一環でしょうか。

 これを不良の対策としてやらなければならないとなると、どうすればいいのか常に悩みますね。

 感情のない機械に作業させればってなるのですが。

 製造も楽じゃないよってお話。

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