第344話 用語解説59
品質管理部なら知っていて当然な単語を解説
・工具補正
刃物の長さや径をマシニングセンターに入力する。
弊社では刃物を交換した際に、長さが変わるのでそれを補正していた。
補正後の製品寸法を測定して、補正の正しさを確認するのだが、寸法の小数点以下しか確認しておらず、1ミリ間違ったことに気が付かなかった不良が発生している。
手入力のため間違いやすい。
そしてロットアウトへと……
マシニングセンターで一度アンクランプしてしまうと、追加工する際に同じ座標にセットするのが難しいので、はっきり言って捨てたほうが二次被害がなくて済む。
済むのだが、捨てることをよしとしない人がおりまして、二次被害覚悟での追加工となったりします。
なので、工具補正は間違わないで欲しい。
間違わない仕組みはあるけど、ルールを無視するから機械的に補正を間違わない仕組みにして欲しい。
似たような仕組みは三次元測定機にもあって、スイベル長の変更時にはキャリブレーションといって、主軸からプローブまでの距離を再測定して機械に覚えこませる作業をします。
プローブの大きさも種類があるので、プローブ変更時にもキャリブレーションしていますね。
忘れても動いちゃいますけど。
うっかり忘れや勘違いを防ぐ対策されてないな……
そんなうっかりミスで流出した製品ですが、まあ色々あってなんとかなりました。
骨を折ったのはこちらなのに、どうして作業者の武勇伝になるのか納得がいきませんね。
おまん、ミスしただけやろと。
・鋳造
溶かした金属を型に流し込み成形する工法。
大昔から存在するが、いまだに不良が無くならない。
そのくせ異世界だと主人公たちは苦も無く鋳造しちゃうから許せない。
おっと、本音が出てしまいましたね。
鋳造にはロストワックスっていう蝋を使ったものや、砂型を使うもの、ダイカストなどがあります。
基本的にはたい焼きと同じ作り方なので、それをイメージしてください。
あんな作り方なので、そこまでの精度は出ません。
そんなわけで、私のお気に入りの小説にあったように、時計に使用するねじを鋳造するってどうやってやるのか不思議です。
というか、ねじの鋳造って見たことないですね。
鋳造したものにねじを加工するっていうのはありますが。
指輪の鋳造技術を使って、歯車とねじも同じように鋳造することが出来る世界とやらがあるらしいのですが、確かに指輪についてはこちらの世界でもロストワックスによる製造がされています。
歯車についてはホブ盤だったりプレスが主流でしょうか。
中世でも歯切り盤があったようなので、中世風の異世界でもこれは出来そうですね。
鋳造歯車もありますが、懐中時計で使用する歯車を鋳造出来るかというと疑問です。
しかも、鋳型が何度も使えるようなので、蝋を使っているのにロストワックスでもない。
色んなところから突っ込みが入りそうなので、理論武装してみようと思いました。
地球でできなくても、異世界なら出来るとすれば問題解決ですね。
実際の鋳造はそうはいきませんけど。
鋳造の何が一番つらいかって、暑さよりも臭さですね。
型から取り出した製品をサンダーで仕上げるのですが、粉塵が舞っておりそれがとても臭い。
そんなもんを吸い込んでいるのだから、体にいいわけがない。
どう考えても悪い。
ついでに、水蒸気爆発の危険もある。
鋳造の仕事って大変なので、あんまり異世界に持ち込まないでね。
・ハイドロフォーミング
水の力で成形する工法。
水に限ったことはありませんが、液体ならといいつつも殆どが水ですね。
水でパイプの中間部分を膨らませることや、パイプ内部を水で満たして曲げることが出来ます。
作品中でもちょっと触れましたが、パイプを曲げる時に中にマンドレルを入れます。
でも、マンドレルがあるままだとパイプが曲がらないので、パイプの送りに合わせてマンドレルが後退します。
つまり、曲げ加工の最中ずっとマンドレルがパイプに当たっている事はありません。
そのため、どうしても出来ない加工があります。
マンドレルなしでも曲げ加工は出来ますが、扁平が酷くなってしまいます。
なので、あまり推奨できるものではないですね。
ところが、パイプ内部に液体を満たしておけば、常にマンドレルが当たっている状態を作り出せるのです。
小さなRで曲げるならハイドロフォーミングですね。
それが出来ないと、溶接やロウ付けで形状を作ることになります。
パイプの中間を膨らませるのも、ハイドロフォーミングを使わなくても出来ますが、手間とか不良率を考えたらどちらがいいのかっていうのはありますね。
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