第288話 モックアップ
今回も相変わらず想像で書いてます。
どこかの会社のやり方と同じだったなら、それは偶然の一致ですね。
それでは本編いってみましょう。
今はオッティのプラントに来ている。
魔王討伐のための、武器を造るというので呼ばれたのだ。
「で、なんで粘土で出来たブロードソードを見せられているんだ?」
俺の目の前には、粘土で出来たブロードソードが有った。
まるでモックアップだな。
「これが対魔王の切り札となるブロードソードのモックアップだからな」
オッティは胸を張る。
やはりモックアップか。
モックアップっていうのは、模型の事だと思ってもらえばいい。
ネットで検索すれば画像はいくらでも出てくる。
何故かって?
それは具体的なことを言いたくないからだよ。
「量産するわけでもない、一品もののブロードソードのモックアップなんて必要ないんじゃないか?」
そう、モックアップを造るのなんて、量産する製品のデザイン確認のためだろう。
一個しか作らないものならば、モックアップなんて必要ないのではないかと思うぞ。
「ほら、俺たちティア2だったから、モックアップってよく知らないじゃないか。発泡ポリスチレンの切削を依頼されたくらいで。一回くらいやってみてもいいだろ」
オッティはモックアップにあこがれを抱いていたのか。
たしかに、モックアップなんてティア2には関係なかったからな。
それでも発泡スチロール的な何かを切削したのは覚えている。
切削油が使えないから、木工用の工作機械で三次元加工したんだったよな。
ビーズが結構欠けちゃったけど、そこは大目に見てもらった思い出がある。
納入は凄く大変だったな。
セキュリティが厳しすぎて。
死ぬまで忘れていたよ。
転生したので思い出しました。
「じゃあ、この後何度も試作イベントを実施して、最終的な形状を決めていくのか?」
そんなことはないだろうと、半分冗談で言ったのだが、
「そうだな。イベントの名前をどうしようか決めていないが、開発コードだけは決めてあるぞ」
そうオッティから返されてしまった。
ブロードソード一本作るのに、そこまでやるのか。
というか、開発コードまで取ってあるのか。
「開発コードを念のため聞いておこうか」
「それは『T-705』だ」
オッティの口から出た開発コードはT-705だった。
それは勿論あれだ。
「魔王がマークⅡなら、この開発コードしかないだろ」
「ああ。だがオッティがそれを知っていたとは驚きだ」
この開発コードはファビピラビルのものだ。
ファビピラビル、商品名アビガン。
富山化学工業が開発を行っており、上市前に会社が富士フイルムに買収されてしまった悲劇の薬品である。
まあ、悲劇っていうのは開発に期待して株を買っていたのだが、上場廃止となってしまい、俺が損をしたっていう悲劇だな。
だって、薬剤耐性を生じないから、他のインフルエンザ治療薬よりも有効だって言われていたんだもの。
売り方からは売れない薬とか馬鹿にされていたけど、まさか15年経って人類の切り札っぽくなっていようとはね。
まだ上場してくれていたら、あの時の損失を取り戻せたかもしれないのに。
うん、品質管理関係なかった。
「これが人類反撃の切り札であり、希望だ」
オッティがモックアップのブロードソードを眺めてそう呟いた。
これも10年後には人類を救った武器として、どこかの神殿とかに奉納されるのかねえ?
※作者の独り言
モックアップとか、試作車両とか中々見る機会がありませんよね。
光造形で作った部品を搭載した試作車両の話を聞きましたが、見たことがないので嘘だか本当だかわかりません。
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