第280話 準備会議
テーパーゲージを手に刺して、とても痛かったです。
労災にはなりませんでしたが、気を付けないといけませんね。
品質管理の人間が気を付けると言っては駄目か。
真因を突き止めて、対策をしないといけませんね。
お昼食べたあとに眠くなるから、仕事は午前中だけでよいですか?
それでは本編いってみましょう。
今日は王都で会議があるので呼ばれてきた。
なんの会議なのかというと、魔王討伐の準備会議なんだとか。
そんなもの、自分には関係無いんじゃないかと思ったが、神託によって選ばれていたのを思い出した。
上司(神)の命令は絶対なので、諦めて会議に参加すべく王都にいるわけである。
そして、王城の会議室には俺とオッティ、エメロードがいる。
書記は文官の人がやってくれるようだ。
ホワイトボードがないのが残念だな。
最近はプロジェクターだったりもするけど。
エッチな動画が会議中に流れる地獄を見たり聞いたり。
パソコンを私用で使うのはよくないですね。
「それでは第一回、魔王討伐準備会議を開催します」
エメロードの声が会議室に響いた。
「今回は討伐総責任者と討伐のマスタースケジュール作成担当者。それからその進捗管理責任者を決定します」
エメロードの話では、これから計画を作成するにあたり、責任者を明確にしていこうというのだ。
「なあ、オッティ。これって品質管理の出番はないよな?」
「生産技術でもないぞ」
俺とオッティは顔を付き合わせてヒソヒソと会話をした。
ほら、準備会議って基本的に設計の仕事じゃないですか。
弊社だけ?
完全なOEMで客先から図面もらって、場合によったら生産設備も貸与されるなら、設計っていうことは無いのでしょうけど。
時々ありますよね。
大陸の方なんかでは、そちらの方が経営が楽なので、人と場所だけ準備しているところとかあるし。
しかも、規模がすごい。
まあ、その辺は品質保証体系図とかにうたってあるのかな。
でもね、品質管理が開発総責任者として登録されちゃったりするのは不味いと思うの。
なんで客先の設計とこちらの品質管理が新規開発の打ち合わせしなきゃならないのってなるよね。
ギリギリ生産技術でもいいかなとは思うけど。
あ、今回は魔王討伐か。
「はいそこ、意見があるなら大きな声で発言してください」
エメロードから注意されてしまった。
「ちょつといいか?」
それならばとオッティがエメロードに質問をする。
「なんでしょう?」
「討伐総責任者になるとどんな権限があるんだ?それと責任者になるからには、何らかの特典があるのかとは思うが……」
そこだよな。
権限も特典も無しに、責任だけ押し付けられても困る。
さて、今回はどんな事になるのだろうか。
エメロードは頷くと、説明を開始した。
「それについてご説明いたします。討伐総責任者はその名誉が与えられます。この名誉は国民だけに限らず、全世界の人類から称賛されることでしょう。これ以上何を望むことが有りますでしょうか?」
どうだといわんばかりに胸を張る。
あ、これはダメなやつだ。
全力で回避しないと。
やりがいだけで仕事を押し付けてくる経営者は最悪だよね。
若い奴らが定着しないとか嘆いているけど、お前の経営手腕に問題があるだろうと言ってやりたい。
中小は特にそんなのの巣窟。
見てて辛い。
転職した方がいいよ。
「魔王討伐は辞退します」
俺は降りる事にした。
「同じく。危険手当ても無しに命は賭けられないな」
オッティもそういって席を立とうとした。
「待ってください。せめて、名前だけでいいから総責任者ということで」
すがるエメロードを引き剥がそうとするオッティ。
あー、前世で見たな。
責任者なんてやりたくないから、みんな逃げるんだけど、無理やり名前だけでも書いて、そのまま押し付けちゃうやつを。
新規プロジェクトの開発チームの名簿提出って揉めるよね。
役職手当てを貰っている人は諦めて欲しい。
というか、開発プロジェクトから逃げる奴はマジでいらない。
個人的には開発は楽しいです。
量産って飽きるよね。
毎日同じことの繰り返しをするのが辛い。
だからといって、名誉だけで魔王と戦いたくはないですが。
「わかりました……」
結局エメロードが折れて、総責任者として登録されることとなった。
※作者の独り言
開発プロジェクトの組織図作るので揉めるの、時間の無駄ですよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます