第220話 名前の付け方
会社の名前って時代がわかるんですよね。
今回はそんなお話。
それでは本編いってみましょう。
今日はスターレットが俺の所に相談に来ていた。
「知り合いが新しくパーティーを立ち上げるんだけど、冒険者ギルドに登録する名前で悩んでいるのよね」
相談窓口のカウンターに肘をつきながらスターレットはため息をついた。
名前なんてなんでもいいじゃないかと思うけど、仕事を受ける時の名乗りとかあるから、あまり卑猥だったりふざけた名前は付けられない。
俺が今まで聞いたことある名前だと、カイエン隊、魂の
最後のは違ったかもしれない。
尚、一度決めた名前は簡単には変えられない。
何故なら冒険者ギルドの記録に残して、他の冒険者ギルドとの連携もあるため、ポンポンと変えられてしまうと、記録を探すのが大変になるからだ。
このへんはネットとコンピューターがあれば楽なのだが、残念ながらそんな文明の利器はここにはない。
「名前に流行りはあるの?」
俺はそういった事情に疎いので、相談に来たスターレットに逆に訊ねる。
「色やモンスターの名前を入れているのは結構あるわね。あとはリーダーの名前をそのままとか」
そうか、言われてみればこの世界で知っているパーティー名ってそういうのだよな。
俺は納得した。
「じゃあ、まずは色を入れてみたらどうだ?」
「これが意外とかぶるのよね。これだって決めて冒険者ギルドに登録に来たら、『その名前は既に登録されています』って言われることが多いのよ」
「そうか……」
ネットゲームかよって言いたかったけど、わかってもらえなさそうなのでやめておいた。
そういえば、前世でも会社名が同じってのはあったな。
あれは法人登録する地域が別なら同じ名前でも登録できるので、○○製作所や○○鉄工所って同姓同名の会社がいくつもあったのを覚えている。
「そういえば、鉄工所の隠居した先代が名前で時代がわかるって言ってたな」
思っていたことが、つい口から出てしまった。
「何?」
スターレットが不思議そうな顔をする。
「前世でも名前が被るってのがあったなと思い出していてね」
俺は照れ隠しで笑いながらスターレットに返事をした。
○○製作所っていうのはかなり古い名前だ。
戦前から高度経済成長前くらいまではそういう名前が多かった。
その後○○精密や○○精機っていう名前が出てくる。
工作機械の精度が上がって、精密加工を出来るようになって、それを売りにした社名になっていくのだ。
そして○○テックというカタカナの会社が最近になって出てきた。
DMG森精機やフジテックといった大手は違うが、街の小さな金属加工業ではそういった流行りがあったのだと教えてもらったのだ。
協力メーカーの社長連中と話してみると、この話は当てはまるようで、会社創業のタイミングにピタリとあてはまた。
自分の居た地域だけかもしれないけど。
次はどんな名前が流行るのかわからないが、ナノの加工をする時代に、百分台でしか加工が出来ないのに精密って名乗るのはちょっと恥ずかしいので、時代が変わってもおかしくない名前がいいな。
じゃあ富士フイルムはどうなんだよっていわれるとそれまでですが。
「そうだ、時代が変わってもおかしくない名前がいいな」
「どういう事よ?」
「例えば『スターレット魔法隊』って名前にして、魔法使い主体のパーティーを作ったとする。何らかの理由で魔法使いがいなくなったらその名前はおかしいだろ。そういうことだよ。カイエン隊はリーダーがカイエンである限りおかしくはないし、カイエンが引退するならパーティーは解散するから問題ない。そういった名前がいいんじゃないかな」
「成程、伝えてみるわ」
スターレットは喜んで知り合いの元へと向かった。
その背中を見て一抹の不安がよぎる。
「ちゃんと理解できたのかな?」
後日、スターレットの知り合いがパーティーの登録にやってきた。
「『未来への翼』か」
レオーネから書類を見せてもらい名前を確認するとそう書いてあった。
「まあいいんじゃないかな」
若いうちは自分たちの未来、年を取ったら後進へ希望の翼を託したいという事だそうだ。
若干眩しくて恥ずかしいけどな。
※作者の独り言
会社名で創業した年代がわかるのって自分の地域だけなのか?
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