第216話 ティア2メーカーの破滅フラグしかない品質管理に転生してしまった

自動車会社もついに赤字決算が出てきましたね。

リーマンショックの時を思い出しちゃいますね。

弊社、製造部門は週休5日となりまして、あの時よりも酷いかな?

間接業務部門は不具合の連絡を受けるためだけに出社しておりますが、測定室にタブレットを並べてトレーディングルームにしちゃいました。

測定器はスタンドアローンですし、会社のネットワークに繋ぐわけにもいかないので、回線は自前なんですけどね。

おっと、品質管理に関係ない方向に脱線してしまいましたね。

それでは本編いってみましょう。



 何故か俺は前世の作業着を着て客先のエンジン工場で自社の部品の選別を行っていた。

 夢なのかとも思ったが、触った部品の感覚、重量がやけにリアルである。

 不具合内容は寸法公差外による他部品との接触。

 その接触のせいでエンジンが組み立てられないというものだ。

 原因は設計ミス。

 弊社に展開された図面の原点と、ラインでの組付け原点が違っており、組付け不良がでて初めてそれがわかったのだ。

 さらに、レイアウトがギリギリであって、一般公差ではなく特別公差が設定されるべきだったのだが、設計間でその情報のやり取りがなかった。

 正確にはやり取りのエビデンスがなかった。

 客先の設計者は口頭で伝えたと言い張るが、こちらの設計者は聞いていないという。

 図面の原点と組付け原点が違っても、公差が厳しければ組付けには問題がなかったのだろうな。

 てか、そんなもんでなんで俺が呼び出されて選別しなきゃならないんだよ。

 対策書を書けというなら、お前の所の設計者にも対策を書かせるぞ。

 じゃないと再発するからな。

 水平展開で世界中の設計者にやらせるんだろうな!



 ……って言ってやりたい。

 弊社の取引量の50%を占める得意先にそんなことは言えないけどな。

 まあ、せめて対策書の発行に抵抗するくらいか。 


 って、夢の割にはやけにそんなところも細かく決まっているな。

 何故だろう?

 いや、今はそんなことよりも、急遽作成して持参した簡易治具で選別をしないと、このあとデポでの選別が待っている。

 ゆっくりやっていると次便が出発しちゃって、またここに戻ってこないといけなくなる。

 集中、集中。


 あれ?

 異世界に転生して冒険者ギルドで品質管理の仕事をしているはずなのに、なんでこんなことをしているんだ?

 やはりこれはおかしいぞ。

 そう思っていると、どこからともなく声が聞こえた。


「――アルト」


 確かに転生後の俺の名前が呼ばれたぞ。

 そう思った瞬間、目の前にあったエンジン工場の景色が消えた。

 そして、見慣れた迷宮の景色に変化した。


「あれ、迷宮?」


 目の前にはシルビアがいた。

 俺をのぞき込むような姿勢だ。

 ああ、迷宮の地面で仰向けに寝ていたのか。


「そうよ。迷宮で探索していたらナイトメアの魔法で寝ちゃったのよ。夢でだいぶうなされていたわね」


 シルビアが説明をしてくれる。


「ナイトメアは?」


「あたしが倒したわ。だから魔法が解けたんでしょ」


 シルビアの説明で納得した。

 ナイトメアの魔法で悪夢をみさせられていたのか。

 前にもこんなことがあったな。


「さあ、帰るわよ」


 そう言って手を差し伸べてくれるシルビア。

 あらやだ、惚れちゃいそう。

 シルビアに手を引いて起こしてもらう。

 ようだな、帰ろう。



※作者の独り言

ただの愚痴ですが、流石に部品とかシチュエーションは違います。

エンジン工場じゃないです、念のため。

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