第217話 あの日出た不具合の原因を僕たちはまだ知らない
給料明細を見て吃驚。
弊社元々の給料の六割しかもらえないので、新入社員の初任給よりも安い!
まあ、稼働日数考えたらそんなもんですね。
来月は更に減るのが確定!
流石に会社もバイトを認めてくれますので、他の人達は稼働していない日は日雇いのバイトとかしているみたいです。
私は子供の面倒を見なければいけないので、バイトに出るわけにもいかず、毎日家にいます。
証券会社へ支払う売買手数料が10倍になってるのは気のせいかな?
実は対策書をいくつか抱えているのですが、残業禁止で、出勤も制限されており、期限までにどうやって提出したらいいんだよって話ですが、他の会社も同じような状況なんですかね?
流石に選別に来いってのは無くなりました。
それでは本編いってみましょう。
降り注ぐ日差しが痛い。
暑いを通り越して痛いのだ。
ステラにも夏がやってきた。
俺は昼休みにティーノとメガーヌの店に行った帰りに歩いている最中だ。
「こんなに暑いとあの不具合を思い出すな」
ふと前世の記憶が蘇ってきた。
シールの剥がれである。
暑い季節には必ず発生した不具合だ。
接着剤が高温で効き目が無くなるのか、脱脂不足が原因なのか、貼り付け時の押す力が弱いのか、そもそも接着剤が規格を満たしていないのか全くわからなかった。
まあ、暑い時期にしか発生しないので、気温が関係しているのだろうとは推測できたのだが。
じゃあどう対策をするかっていうと、これがとても難しい。
シールは購入品なので、基本的な知識が弊社にはなかった。
接着剤が機能しなくなる温度が何度からなのか?
それはどのくらいの時間がかかるとなのか?
貼り付け時の押す力はどの程度が適切なのか?
全てが手探りであった。
繰り返される着荷検査。
全数写真撮影して出荷時に剥がれていないことをエビデンスとして残す。
そうそう、俺が出荷検査していて見逃していると疑われたんだよな。
社内の会議で名指しで言われたので、じゃあ他の人がやればいいでしょうと言って席を蹴った思い出が。
勿論演技だったけどな。
結局誰がやっても剥がれは発生したんだ。
「結局原因は特定できずに推測でのみしか語れなかったんだよな。再現トライしても全て可能性があってなんともいえなかったし。まあ、毎年夏の時期になるとっていうのが決まっていたのだけど、大体その時期に新人作業者がラインに投入されているので、気温との因果関係以外にもなあ」
此処にはいない前世の同僚たちに話しかける。
端から見ると危ない人だな。
オッティがいてくれたらわかってくれたのになあ。
俺は照り付ける日差しから逃げるように早足で冒険者ギルドを目指した。
※作者の独り言
夏は接着剥がれが多くなりますね。
それとシールキャップの外れる不具合。
毎年発生するので、冷蔵車での出荷しか解決策はないって言ってますが、熱で剥がれるエビデンスがないんですよね。
ああきっと妖精さんがいたずらしているんでしょうね。
品質管理部門の対策を叩く前に、接着剤の選定を失敗した設計が責任を取るべきだと思うんですよね。
それと、受注のたびに冷凍車での納品を訴えているのに、いっこうに言うことを聞かない営業。
面倒なので、気温が25度を越えたら着荷検査でいいよね?
ずっと客先で着荷時だけ仕事をするのでよければそうしますよ。
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