第210話 工程で使用する工作機械は適切に設定されていますか?

「剣と斧はどちらが強いかって?」


 今日はサッカースクールがないので、シルビアとスターレットが相談窓口である俺の所に遊びに来ている。

 スターレットは冒険者だからいいのだが、シルビアは一応は冒険者ギルドの職員なので、遊びに来ているというのはいかがなものか。

 まあ、最近では新たな収入源として、冒険者ギルド主催のサッカースクールを開講して、希望者から参加費を募っている。

 お笑いの専門学校みたいなもんだな。

 シルビアとプリオラはそこの講師なので、授業がないときは暇なのだ。

 そして、相談に来るような冒険者もいないので、冒頭のような深夜のファミレスでの会話のようなことになっているのだ。


「剣と斧を比較したときに、斧は重心が先端にあるから、一撃をかわされた時にスキが大きくなるっていうのがあるわね」


 シルビアがバトルアックスを振る真似をして説明してくれる。


「そのかわり、当たれば威力は剣の比じゃないわ。斬るというよりも叩き潰す感じだけどね。だから初心者があつかうなら、剣よりも斧の方が楽なのよ。技術よりも振り回す力があればいいんだから」


 と付け加える。

 成程、と思った。

 そんなメリット、デメリットがあるのか。

 斧というと山賊の親玉が持っているイメージなのだが、よくよく考えたらハルバードなんて騎士の持つ武器だしな。

 あ、銀河の英雄たちが戦う小説でも、未来なのにハルバードで戦っていましたね。

 未来なのに白兵戦かよって。

 アニメ版では光線銃とハルバードで戦ってたりとかもうね。

 いや、きっと説明されていない裏設定があるに違いない。

 これ以上はやめておこう。


 武器の選択は工程設定に似ているな。

 ものを作る目的ではなく、敵を倒すための工程設定だが。

 工場でも似たような工作機械でどちらを使うかっていうので悩む時がある。

 縦型と横型の旋盤やマシニングセンターにも、それぞれメリットとデメリットがあって、どちらを選択するのかは工程設定者の腕の見せ所である。

 縦型横型だけではなく、複合旋盤にするのか、それとも旋盤とマシニングセンターに分けるのかなんかも頭を悩ませるところだな。

 複合旋盤というのは旋盤にマシニングセンター機能がついている工作機械のことだ。

 ワンチャックで旋盤加工とマシニングセンターの切削加工が出来るメリットがある。

 半面デメリットとしては、どちらかの加工をしているとき、反対の刃物は停止しているので、加工時間が長くなってしまうというものがある。

 どちらが良いのかというのはその会社の考え方と環境次第だな。

 償却の終わった設備が余っているなら、新規に複合旋盤を導入するよりも分けたほうがいいっていうのもあるし、人件費を抑えたいなら、材料供給をつけた複合旋盤で、夜中も無人で稼働させるという手もある。

 そうか、環境しだいだな。


「スターレットの質問は状況設定がないな。どんな状況で使うかで変わってくるだろ」


 とスターレットの方を見た。


「言われてみればそうね。迷宮で使うのであればって条件にするわ」


 設定が追加された。

 迷宮で使うのであればどちらがいいのだろうか?


「剣の方が圧倒的にバランスがいいわね。バトルアックスでもハルバードでも振り回すと疲れるでしょ。ちょっと戦ったら動けなくなるなんて危険よ。っていうかそもそもジョブが剣士なんだから、斧を使うってありえないけどね」


 シルビアの言葉でファイナルアンサーだな。

 適性ジョブがないのに斧を使う意味がない。

 剣よりも斧と相性の良いモンスターと戦うのがわかっていない限り、剣士のジョブであれば剣を使うべきだな。

 工程設定でも、余っているからといって小型の製品を加工するのに、大型の加工機械を使っちゃった例はあるのだが、とても効率が悪かったな。

 適切な道具を選ぶというのはどこでも一緒だ。

 余っているからとかいう理由で遊休設備を使うのも考え物だっていうのを思い出した。

 リーマンショックの時にも、とある大手企業の社長が銀行出身の人になったことがあるが、数字しか見ていないので、遊休設備を使えと一律に命令してしまったせいで、小物の加工に巨大な門型マシニングセンターを使っていたのがあったとか。

 とある巨大匿名掲示板の情報なのでどこまで本当かはわからんが。

 効率悪いので、余計に利益が無くなったと聞いております。

 例えるなら近所のスーパーマーケットにスーパーカーで買い物しに行くようなもんですわ。

 確かに余っている車なのかもしれないが、とても効率は悪いぞ。

 もっと燃費のいい車で行けばいいだけなんだから。

 適切って大切ですね。


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