第178話 閑話休題
とある会社の会議室。
「さて、新規製品についての会議はこれで終了します」
司会進行役の営業が、会議の終了を宣言した。
全くもって面倒な公差の入った図面は、暫くは見たくはない。
どうせ半年後には、夜中まで見ることになるのだろうから。
俺は目の前のカップに残ったコーヒーを全部飲むと、椅子から立ち上がって自分の事務所の席に帰ろうとした。
それを呼び止める奴がいる。
「なあ、異世界転生小説ってしっているか?」
生産技術部のやつだった。
何を唐突にと思ったが、俺も嫌いではないので、少し話に付き合う事にした。
というか、この時既に小説投稿サイトに投稿していた。
誰にも言ってないけどな。
「あれだろ、異世界に行ってこちらの知識を使って成り上がる的なやつ」
「そう、それだ。だが、色々と間違った知識が書かれていてね、ツッコミどころが満載な小説もあるぞ」
「俺も読んだことがあるが、金属加工やメッキ、塗装の知識なんてネットで全て揃う訳じゃないだろ。間違っていても楽しく読めればいいんじゃないか?正しい知識なんて専門書で読めばいいだろ」
品質管理としては些か不適切な発言かもしれないが、民明書房が嘘だからと謂って、あれを無くしたとしたら作品の面白さを損なうだろう。
そういう事だ。
「でも、あまりにも間違っていると流石にな」
「それは確かに」
装飾メッキのタッチ跡の処理とかで不良が出ないのはおかしいです。
いや、みんな気にしていないだけかも知れないけど。
「ところで、クラスごと転生するのがあるだろう」
奴の声が大きくなった。
興奮してきたのか?
「あれが、この会社だったらどうなると思う?」
「んー、設計や生産技術は道具や武器を作るよな。それを製造が使って魔物と戦う。納期が魔物に変わるだけだな」
「そうだな。実際には加工となると工作部門だったりするのかもしれないけど。ところで、品質管理って異世界に行ったら何をするんだ?」
「作った武器の工程能力測定?」
俺も回答に困る。
品質管理なんて、異世界に行ってもハイトゲージで敵をぶん殴る以外に、戦う手段を持ってないだろ。
何を作るわけでもないし。
そんなきっかけで異世界に品質管理の概念を持ち込む話が出来上がるのだが、まさか共用のパソコンでみんなでアカウントを作っていたら。複数アカウント疑惑でバンされちゃうとはね。
中身は別々の人だったのに……
関係者以外で200人くらいブックマークしてくれていましたが、突然消えてごめんね。
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