第173話 連続

「やっと終わった……」


 午前中から相談された内容の解決方法を探して仕事をしていた。

 重点管理メーカーことカイエン隊から、シルビアが厳しすぎるという相談を受けて、双方の意見を聞きながら、落としどころを探っていたのだ。

 あんまり厳しすぎると、管理される側も続かないからね。

 途中で暴れるシルビアをなだめていると、恐怖にかられたカイエンが逃げ出して、それをみんなで追いかけてということをしていたため、余計に時間がかかってしまった。

 時刻は既に15時になろうかというところ。

 やっと仕事に区切りがついたので、相談窓口に戻ってきて、報告書を書いたら昼食にでもしようかと思ったら、相談窓口に2件ほど相談の書置きがあった。


「うぼぁぇ」


 と変な声が出てしまう。

 前世でもこんなことあったな。

 選別に行って帰ってきたら、次の不具合の連絡が来ていたのだ。

 同じ部署で、誰も対処していないので、結局自分が対応が遅いと客先から怒られながらも対応したのだ。

 選別中に、次の選別場所の連絡が来たなんてのもあったけど。

 中部から九州、そして関東へとか長距離トラックの運転手じゃないんだから。


「どれどれ」


 俺は昼食を諦めて、書き置きの内容に目を通す。

 前世でもこんな事あったな。

 自分の中の最高記録は22営業日連続流出不具合発生だ。

 選別が終わると次の選別で、対策書を書く暇が無かった奴だ。

 あの時の影響はかなり尾を引いたな。

 なにせ各メーカーから重点管理メーカー指定をいただいて、翌年、翌々年と品質改善計画の作成をすることになった。

 しかも、品質会議では各サプライヤーが集まる中で、前に出ての改善事例発表だ。

 恥ずかしいったりゃありゃしない。


 前世の思い出はおいといて、相談内容は自分たちの失敗事例を見直して、次につなげたいので改善方法を相談に乗ってもらいたいというQCサークルの指導みたいなものと、新規の素材を開発したいから手伝って欲しいというものだった。

 後者はオッティだな。

 新規の素材とは随分と踏み込んだものだ。

 まあ、オッティは後回しでいいか。

 俺は前者のパーティーが待っているという彼らのホームに向かう事にした。

 その日、食事を摂ったのは22時だった。

 閉店直前の居酒屋に飛び込んで、直ぐにできるものをお願いしたのだ。

 24時間営業の店が欲しいところである。

 働き方改革?

 知りませんな。



※作者の独り言

1日2件の流出不具合発生とか、対応するのは無理ですよね。

流石に部署に自分しかいないという訳ではありませんが、日々の仕事もあるので、1件の流出不具合の対応ですら厳しいというのに。

取引のある会社では、詳しい内容は教えてもらえませんでしたが、品質管理の半数が選別に行ってしまい、しかも3日間帰ってこないので、他の対応はできませんと断っていたというのがありました。

弊社の購入部品でも、寸法が怪しいものがありましたが、無理すれば使えないことも無かったので、暫定で使用するという事で臨機応変に対応しました。

まあ、無理なものは無理なので、妥協も必要ですよね。

一番悪いのは集中的に不良を流出させる製造現場だぞ。

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