第123話 比重2

 さて、カイロン伯爵が帰宅して聞いた情報では、俺も王宮に出向いて国王の目の前で王冠の鑑定をすることになったようだ。

 偶然ステラを訪れた御使いを手厚くもてなしたところ、国王の困りごとに手を貸してくれる事になったと。

 事前の打ち合わせ通り、将軍と手柄を分け合うために、カイロン伯爵と将軍二人のもてなしに俺が感謝したことになっている。

 うっかり変なことを言わないようにしないとね。

 そして、鑑定は明日。

 国王の予定ってそんなに簡単に決められるのかって驚きだけど、本人じゃなきゃいけない事っていうのも少ないのかもしれないね。

 将軍の方は金細工師と一緒に登城することになっているようだ。

 あとは、王冠に混ざりものがあったときに口封じをされないための一工夫だよね。

 それについては考えがあるんだ。


 明けて翌日。

 俺はカイロン伯爵と一緒に馬車で登城。

 オーリスはお留守番となった。

 城につくと伯爵と一緒に案内されて国王の前にでる。

 国王の横には宰相っぽい人がいるのだが、宰相なんだろうな。

 そして、俺達の横には将軍と金細工師がいる。


「そなたが御使いであるか?」

「はい」

「この王冠の金が純金であるかどうか本当にわかるというのか?」


 俺を見て疑う国王。

 まあそうだろうな。

 どう見ても一般人で神々しさの欠片もないからな。

 国王の前にある王冠を指さして


「では同じ重量の金をここに出しましょう」


 と言って、重量測定のスキルを使い、王冠の重量を計測して、同重量の金塊を出現させる。


 ざわざわ……


 室内がざわつく。

 何もない空間から金塊が出現したので、みんなが驚く。

 この世界に存在する魔法でも金塊を作り出すなど聞いたことないからな。

 ちなみに、カイロン伯爵が事前に説明して、王冠の装飾は外してある。

 そうでないと計測ができないからね。


「さて、私が見たところその王冠は不純物を含んでおりますね。純金ではありません」

「やはりか」


 国王はある程度予測はついていたみたいだな。

 しかし、諦めが悪い人がいた。


「そんなことはない!そいつは口からでまかせを言っているんだ!!」


 それは金細工師であった。

 金をちょろまかしたのがばれたら処刑だから必死になるよね。


「大体、見ただけでわかるわけないだろう。そんなの出鱈目に決まっている!!」

「神から授かった能力でわかるのですが、あなたたちの目でもわかるように見せてあげましょう」


 そうして室内に運び込まれてくる水槽と天秤棒。

 天秤棒の両端に王冠と金塊を吊るすと均衡が保たれた。

 俺のスキルで同重量にしてあるから当然だが。

 そして水槽には水がいっぱいに入っている。


「さて、こうして空中でバランスが取れている王冠と金塊を水の中に入れてみましょう。純金であれば水の中でもバランスが保たれるはずです」


 ゆっくりと水の中に王冠と金塊をいれると、金塊のほうが下に沈んでいく。

 つまりは王冠のほうが比重が軽いということである。

 金の含有量が少ないのが目で見てわかったはずだ。


「どうですか、これでわかったでしょう。王冠には銀が15%程度混じっています」


 誰も声が出ない。

 ただ水槽を見つめているだけだ。

 そんななか真っ先に動いたのは金細工師であった。


「うわあああああ。ばらしやがって!!!殺してやる!!!」


 隠し持っていたナイフで俺に襲い掛かってきた。

 にやり、計算通り。

 俺は人の名前をノートに書いちゃう新世界の神みたいな笑いをした。


「愚か者め。神罰を食らうがよい」


 俺は金細工師の体内にフッ化水素を生成した。


「ぎゃあああああああああああ」


 ナイフを落として床を転げまわる金細工師。

 フッ化水素が体内を侵食しているのだ。

 とても耐えられないだろう。

 その姿をみて、さらに固まる国王と宰相。

 程なくして金細工師は絶命した。


「神罰です」


 ( ー`дー´)キリッ

 っという感じで言い放つ俺。


「あの、我が国にとどまるお考えは……」


 やっとのことで声を絞り出す宰相。


「いえ、旅の途中ですから。無理に引き留めて神罰がくだらぬように気を付けてください」

「はい!」


 目の前で神罰を見せられたらそうなるよね。

 金塊を無造作に作り出せる人材なんて手放したくはないだろうけど、手を出せば死が待っている。

 果てしなくリスクが高いのだ。


「せ、せめてなにかお礼をさせてはいただけませぬか」


 国王がフリーズからリブートしてきた。

 お礼か。

 特に考えてはいなかったな。

 あ、そうだ。


「では、フォルテ公爵の関係者の捜索と処分を終了してもらえますか。旅の途中で私に水と食料を恵んでくれた人に話を聞いたら、仕えていた公爵が反乱を企てて失敗し、その罪に関連して自分も追われていると言ってました。聞けば反乱も鎮圧されて、家も取り潰されその子供たちが残っていたとしても歯向かうだけの力はないでしょう」

「そんなものでよければ。既に反乱は鎮圧しており、領地も取り上げているため問題ありませぬ」


 よし、これでグレイスの問題も解決だな。

 公爵家の令嬢に戻ることはできないが、追手におびえる生活はなくなる。

 あ、驚かせたお詫びに少しくらいはサービスするか。


「折角なので、ここにオリハルコンを置いていきますね」

「「「えええええええ!!!!!」」」


 この場にいる全員が驚いた。

 俺が100ミリのブロックゲージを作り出して、国王に手渡す。


「よろしいのですか?」

「少量ですから使い道はないですけどね」

「あ、ありがたく……」

「それでは皆さんごきげんよう」


 そういって俺は退室した。

 このまま公爵の邸宅に帰っても、いろいろとありそうなので、帰りは一人でステラに戻ることを伝えてある。

 万が一国王からの口封じがある場合も結果は一緒だしね。

 そうして俺は一人ステラへと向かった。



品質管理レベル36

スキル

 作業標準書

 作業標準書(改)

 温度測定

 荷重測定 new!

 硬度測定

 三次元測定

 重量測定

 照度測定

 投影機測定

 ノギス測定

 pH測定

 輪郭測定

 マクロ試験

 塩水噴霧試験

 振動試験

 引張試験

 電子顕微鏡

 温度管理

 照度管理

 レントゲン検査

 蛍光X線分析

 粗さ標準片作成

 C面ゲージ作成

 シックネスゲージ作成

 定盤作成

 テーパーゲージ作成

 ネジゲージ作成

 ピンゲージ作成

 ブロックゲージ作成

 溶接ゲージ作成

 リングゲージ作成

 ラディアスゲージ作成

 ゲージR&R

 品質偽装

 リコール



※作者の独り言

フッ化水素の取り扱い怖いですよね。

リアルに死ねる。

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