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F-2に積まれたAIは、空戦時にカメラとセンサーから情報を取得、それらをCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネット)アルゴリズムで学習したモデルに従い、逐次状況を識別、判断する。それと共にLSTM(Long-Short Term Memory:長/短期記憶)アルゴリズムで時系列的に敵の動きを予測する。まさに深層学習をフルに使ったシステムで、ハードウェアは超高速演算を実現するためのマルチコアCPUが2基と、4枚並列接続されたGPUが搭載されており、データストレージは衝撃に強いSSDを6個使ってRAIDアレイを組んでいる。フライト中はタッチパネルで操作も可能だが、戦闘中にいちいち手で操作などしてられないので、日本語(一部英語)によるボイスオペレーションも可能だった。
このAIが俺のフライトを学習し、いずれは俺にとって代わって機体を動かし空中戦をするようになる、というわけだ。そしてそのAIには、こんなふざけた名前が付けられていた。
Universal Knowledge and Information Coordination for Automatic eXclusive Engagement(自動的な単独交戦のための知識と情報の包括的統合)
こと、UKICAXE……と書いて、「ユキカゼ」、と読むのだという。
……。
まあ、アメリカのスペースシャトルも試作機は「エンタープライズ」で三号機は「ディスカバリー」……いずれも元ネタは説明不要なほど有名なフィクションの宇宙船……だったし、日本製だから元ネタも日本の作品から、というのも筋が通っているとは言える。元ネタから考えれば、これほどピッタリな名前も他にあるまい。とは言えちょっと長いので、ボイスオペレーション時には、俺はTACネーム的に"ユキ"と呼ぶようにしている。
しかし、これがまずかった。
どうやら俺は、自宅のベッドでフライトの夢を見て、寝言で"ユキ"の名を呼んでいたらしい。
"ねえ、「ユキ」って誰?"
次の日の朝、彼女は般若と化していた。そこから先は……あまり思い出したくない。とにかく、そういうことが色々積み重なった結果、今日に至る、ということなのだ。
「カーシーさん、団司令がお呼びです」
「ええっ? 団司令が?」
俺は仰天する。団司令直々の会見とは……俺は何をやらかしたんだろう? 何も身に覚えがないんだが……
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