名犬ダックスフンドシ
卯野ましろ
名犬ダックスフンドシ
「寒いねー」
「わんっ」
少女は愛犬のダックスフントと散歩している。外は寒くても、彼女たちの心は温かかった。
しかし、飼い主の心が凍てつくときがきてしまった。
「え……」
彼女の目の前に、すっぽんぽんの変態男が現れた。この寒い時期に。
「……」
少女は呆然としていた。口をポカーンと開け、目を丸くして、棒のようになっている。
「ようよう、嬢ちゃん♪ オレと遊ぼーよ♪」
ノリノリで話しかける男。もちろん少女は無反応。それを見て「よし!」と思ったのか、男は少女たちに近寄ってきた。
「ね~え? ちょっと無視ぃ~?」
「……わんっ!」
ダックスフントがタイミング良く吠えた。
「……あっ、ちょっと!」
少女が数秒ぶりに声を発した。愛犬が、てててっと歩き出したからである。飼い主の手から力が抜けたので、犬は簡単に前進できたのだ。
「おっ、何だお前。おっちゃんと遊びてーのか? かっわいいな~! こいつぅっ♪」
この変態野郎は、ロリコンでもあり犬派でもあるようだ。かわいらしいダックスフントを見て、気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「ほらほら~♪ おいでおいでっ!」
男は今、手招きではなく丸出しのソレをフリフリしている。
「うぅ~……わんっ!」
そのとき、とうとう犬が爆発した。
「んぁ!」
チーン。
男は誘爆した。楽しそうに揺れていたソレは犬ロケットによって大ダメージを受け、男の動きは封じられた。
ダックスフントの逆襲は、それだけではなかった。
がぶっ!
「ギャーッ! 痛いっ! 痛いよぉ~っ!」
犬は少々モジャモジャな男の下っ腹に噛みつき、それによってアソコがうまい具合に隠れた。これはチャンスである。
「……はっ! 通報通報!」
愛犬のおかげで飼い主はスマホを取り出し、警察に連絡することができた。
男は無事、捕まった。
もちろん犬は、その後すぐさま動物病院へ連れていかれた。汚いものに触れてしまったが、異常なしであった。家族は安堵した。
「いやー本当にすごかった! チョコってば隠すの上手なんだもん!」
「アハハハハ!」
数日後、あのとき凍りついていた少女は忌まわしい珍事を見事に笑い話へと昇華させていた。たくましい。
「あれはね、もうフンドシ! 名付けてダックスフンドシだね!」
「アーッ、ハッハッハッ!」
少女のクラスメートは、みんな大爆笑していた。また、このエピソードはこれからずっと少女の定番ネタとして生き続けていった。
ちなみにチョコという名は、彼女の体の色と、誕生日がバレンタインデーであることが由来だ。
バレンタインデーは、フンドシの日でもある。
名犬ダックスフンドシ 卯野ましろ @unm46
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。