黒雷無双

第6話 成長

俺はグリフィス、とある森の奥地で暮らしている。普段はグリフと呼ばれている。今は森の中にいるグランフォースボアという猪を狩った帰りだ。

「ただいまー………ってあれ？師匠はいないの？」

「あら、お帰りなさいませグリフ様。あの方は今頃野良の龍種でも狩っているところですよ。」

この女性メイドさんはミランダさん。師匠のもとでずっと付き人をしている。

「じゃあ、まだ帰りは遅いかな？」

「そうでしょうね。何せグリフ様のために張り切ってらしゃいましたから。」

「別に張り切っちゃいねーよ。」

そう言いながら右肩に討伐した赤い龍を背負って現れたのはこの世にわずか４人しかいないランクS冒険者が１人、「真炎」の異名を持つレヴェーナ・ヴォルカニカである。

「おかえり、師匠。また随分派手にやったみたいだね。」

「おうよ、こいつが思いの外ヤンチャだったもんでな。久々にいいサンドバッグになった。」

そういって右肩の赤い龍を地面へと置く。その姿を見るだけで赤い龍がどれだけ悲惨な目に遭ったのか容易に想像できる。

「ミランダ、こいつでうまい飯つくってくれ。私はそれができるまで寝る！」

「畏まりました。腕に寄りをかけてつくらせていただきます。」

「なら俺が火龍を運ぶよ。グランフォースボアもついでに運んじゃうからそっちも調理よろしくね。」

「すみません、お願いします。」

それから２時間ほど経って、３人は１つの丸テーブルを囲んでいた。テーブルには様々な料理が置かれ、その中には先程グリフィスとレヴェーナがそれぞれ狩ってきた猪と龍も調理された状態で置かれていた。

「それじゃあ、グリフの誕生日を祝って……乾杯！！！」

「「カンパーーイ！！！」」

俺が誕生日となった日からこの森で人らしい生活を始めて４回目の誕生日を迎えた。といっても俺がいつ産まれたのか、今何歳なのかは知らない。一応師匠が俺の身長から予想して今年で10歳ということになっている。誕生日に関しては何かから推測したわけではなく、野生児だった俺を拾って育て始めた日を誕生日としたのだ。

「まさか、ろくに言葉も話せなかったリアル野生児がここまで利口に育つとはなぁ。」

そう言いながら手に持った一升瓶を直飲みする。

「師匠………その話はやめてくださいよ…。今となってはそのことを思い出す度に恥ずかしさで悶えてるんですから。」

「そういうわりに冷静ですね、グリフ様。」

「なんかこうやって受け答えするのに慣れちゃって……。」

そんな話をしながら和気藹々と過ごす。

そしてしばらくして話も一段落したところで師匠から驚きの一言が飛び出した。

「さぁ、グリフ。殺り合おうか。」