第5話 決着

お互いが本気になって戦い始めた。少年はこれまで培ってきた身体能力と野生の勘を、レヴェーナは自ら確立した戦闘技術を武器にして戦っている。これによって天秤は大きく傾くことになる。

「やはり、野生の勘に頼っているからか動きが誘導しやすいな。ただ力任せに攻撃するだけでやられるほど私は弱くないぞ。」

そう言いつつレヴェーナの両手には白い炎が圧縮された形で燃えている。そして、その手によって少年の攻撃はすべて在らぬ方向に逸らされていた。

「グル?」

自分の攻撃が当たらないことに疑問符を浮かべながらなお攻撃を続ける少年。しかし、その動きはよくなってきている。

(この少年、まさか私の動きから学びとろうとしているのか!?)

レヴェーナが驚いている間にもどんどんと動きはよくなり、しまいにはレヴェーナが両手に白い炎を圧縮したまま維持したように少年の両手にも黒い雷が圧縮され始めた。

(見ただけで真似できるセンスもなかなかだけど、何よりも一般常識も何もない状態で私の技術に目をつけるとは恐れ入るな。この子はもしかしたらさらに化けるかもしれないな。)

だんだんとレヴェーナが押され始めてきたが彼女には焦りがないどころかこの少年に自分の戦闘技術を叩き込もうと画策し始めてしまった。そして、そうと決まれば彼女がやることは1つ。さっさとこの少年を打ち負かし、1から育てあげること。というわけで彼女はこの少年に奥の手の1つを使った。

「お前はこれから私の弟子にすることにしたから、さっさと叩きのめしてやる。人の戦闘技術の極致をその身に刻むといい。[魔鋼流 真型 白夜礼賛]」

そういった途端にレヴェーナの全身から白い炎が吹き出し、それらの炎が片手へと一極集中する。その右手を地面に対して平行に引いたところで少年の前へと瞬間的に移動する。それは異常なまでに発達した身体能力を持つ少年にもかろうじて目で追えるといったレベルの速さだった。少年がレヴェーナを完全に知覚したときにはもう遅く、少年の腹部にとてつもない威力の正拳突きが放たれた。接触面を中心に眩しく光輝くとともに少年の背中からは円錐状に拡散するように白い炎が吹き出していた。

結果、その場に残ったのはボロボロで気絶した少年と満足そうに笑う女性だけだったという。

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