第7話 決闘

最初その言葉を聞いた瞬間聞き間違いだと思った。いや、思いたかった。

「師匠、今なんて言いました?」

「聞こえてただろ?殺り合おうか?」

「嫌です。」

「まぁ、そういうなよぉ!!!」

そう言った瞬間に全身から炎が燃え上がり、そのまま殴りかかってきた。

「危なっ!?ちょっと今日はもう修行終わったし、せっかくの誕生日なんでゆっくりしたいんですけど……。」

「お前、ときどき若者とは思えないこと言うな……。」

「俺に落ち着いた行動を身につけさせてくれたミランダさんのおかげですよ。」

「それは私に落ち着きがないってことかー!!」

そういって再び殴りかかってくる。師匠が動けば動くほど山火事になり、被害は拡大していく。しかしこの森は特殊で、どんな焼失しても半日ほどで完全に修復する。

「ほらほらどうしたーー!!いくら食後でも反撃の1つや2つできるだろーー!!!」

「うわっ、ちょっ、仕方、ない、ですね。分かりましたよっ!!」

そういって大きく後方へと跳びながら全身に黒雷を纏う。それに呼応してか師匠も全身に白炎を纏った。彼女、レヴェーナが独自に大成させた独自武術、「魔鋼流」を2人とも極めている。単独で独自の武術を体系化するほうも異常だが、それもたかだか4年で極めるほうも正直どうかしている。それもこの世界における大人と判別される年齢には間違いなくとどいていないのだ。

「あんたとの戦いはまだ勝負がついてねーからな。今度白黒はっきりつけてやるよ。」

「全く、黒雷を纏った途端生意気になるのはどーにかならねぇのか………。」

いつものように雰囲気が豹変した弟子を前にレヴェーナは独り言ちる。

「魔鋼流 真術 黒禍ツ星(くろまがつほし)」

「魔鋼流 真術 白灯ス星(しろともすほし)」

2人がそれぞれそう口にすると、グリフィスの右には全長1mの黒い球体が、レヴェーナの左右には同じ大きさの白い球体がつくられた。黒いほうからは黒雷が迸り、白いほうからは白炎が燃え上がる。

一呼吸おいたところでそれぞれが生み出した球体どうしがそれぞれぶつかりあい、一瞬で大爆発が起こる。その爆心地では両者による全力の殴り合いが勃発していた。

一撃一撃が即死級の殴打を両者ともに難なく受け流す。グリフィスの回し蹴りをレヴェーナはしゃがんで躱す(かわす)と、飛び上がるようにしてグリフィスの胴体へと拳を叩きこもうとする。しかし、その攻撃を回し蹴りの勢いのままに裏拳で弾く。

そういった攻防を30分ほど繰り広げた。

「短期間でよく私と対等に殺り合えるようになったな。しかし、そんなお前だからこそ私やお前の持つ力のことをもう少し知っておく必要があるな。」

そう言った途端、レヴェーナが発する白炎に謎の変化が起こった。

「なんだよ、それ。一体何をしやがった?」

俺は思わずそう呟いた。



炎や雷が体から発生する仕組み(設定)については次回の話の冒頭で説明描写が出る予定です。

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