2.本当に収納魔法?
「それで、どうしてアンタはクエストについてきてるわけ?」
「何を当たり前のこと。シオン君の魔法を、より近くで見るために決まっているだろう? 単細胞女である貴様には、分からないか……」
「た、単細胞女ァ!?」
「あ、あはは……。二人とも、喧嘩はやめてほしいなぁ」
いがみ合うコールさんとシーナさん。
そんな二人を見て、僕は思わず苦笑いをしてしまった。
とにかく馬が合わないのだろう。コールさんがクエストに同行したい、と言ったときからシーナさんはへそを曲げたままだ。
僕としては、仲良くしてほしいんだけどなぁ……。
「ところで、コールさんは王宮魔法使いなんですよね?」
「あぁ、その通り。新たな才能を求めて、王宮から派遣されてきたのさ」
話題を変えようと、僕はふと思い出したことを訊ねる。
すると彼はどこか得意げに胸を張るのだった。
「それじゃあ、僕の収納魔法を見て?」
「その通り! レッドドラゴンを収納するという、前代未聞の離れ業を目の当たりにしてね。キミの可能性に惚れ込んでしまったのだよ」
「そ、そうなんだ……」
満面の笑みを浮かべるコールさん。
思わず身を引いてしまう僕だったが、褒められるのは悪い気がしない。それにもしかしたら、彼なら僕の収納魔法について、何かわかるかもしれなかった。
視線は少し怖いけど、王宮魔法使いなんだもんね……。
「だったら、今日もクエストを頑張らないとね!」
僕は胸の前で拳を握って、自分に言い聞かせる。
そして、先陣を切るようにして先頭を歩くのだった。
◆◇◆
「それで? 王宮魔法使いさんは、シオン君の魔法をどう見てるの」
「ふん。単細胞は、自分で考えるということもできないのか?」
「ぐ……! いちいち、突っかかってくるわね……!」
後ろを歩きながら、コールとシーナは言葉を交わす。
王宮魔法使いが鼻で笑うのに対し、女戦士は奥歯を噛んで、手が出そうになるのを堪えた。ここでまた喧嘩をしては、まだ幼いシオンの教育によくない。
なのでシーナは深呼吸をしてから、改めて彼に訊ねようとした。
するとその前に、コールは真剣な表情で言う。
「まだ、可能性の段階だ。あいまいな情報で混乱させるわけには、いかない」
「…………?」
それに彼女は首を傾げた。
いったい、どういう意味なのだろうか、と。
「もっとも、これは単細胞年増女に説明しても理解できないだろうがな!」
「なっ……!?」
しかし、そう考えた次の瞬間にはまたも、理由なき暴言が飛んできた。
シーナの思考は一気にそちらを向いて、意味深な言葉など忘れてしまう。そして、これ以上話す意味はないと、シオンの方へと行ってしまうのだった。
「…………」
そんな彼女を見送って、コールは一人。
小さくこう口にした。
「あれは本当に収納魔法なのか、見極めなくてはな……」――と。
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