第9話 衝撃の事実
放課後になる前に俺はトイレ行くフリして勝手に早退した、荷物持ってくとなんかバレそうなんで、手ぶらで逃げた。
−−
今日のすったもんだでLINEが既読になったか・レスがきたか、全く確認できなかった、でも
後から考えたら学校へはどう通うとか親への連絡とか全く考えてなくて、それだけ切迫詰まってたんだと思い知らされた。
マンション入り口で
応答なし…。
もう一度同じことしてみる、やはり応答なし…。
もしかしてLINE目にしてなかったのかと絶望的になっていたら、カチャと音が鳴り、『
玄関の呼び鈴を鳴らし、中から出てきた人物に驚き腰抜かしそうになった、
「あらあ、アナタまた会ったわね!」
出てきたのは燃えるような赤い髪をしたセクシーな美女の妖精の
それがなんでここにいるのか、マジで意味不明だった。
「悪ぃ、今カノジョ来てたんだよねー」
なんと
なんだか昨日から悪い夢を見続けてるみたいだった。
「なっ、なんでアンタがココにいるんだよ!」
最後の砦とここへ逃げてきたのに、目の前が真っ暗になったような気がした。
「ん?二人はもしかして知り合いか?」
「中へ入ったら?」
妖精の女王がいた時点で本当は逃げ出したかったんだが、他にどーすりゃいいか思いつかず、しかたなく部屋へ入った。
そんな硬派な従兄がなぜこんなプレイメイトのような女とつきあってんのか、まるで理解できなかった。
二人の馴れ初めを訊こうとしたら、
「ね、
先に兄さんに訊かれてしまった、なーにがティナだよ…。
「えー、コホン、実は私の妹が日本に留学していて、このレイジくんのおうちにホームステイしているのです」
苦しい言い訳だ。うちと
「へぇ、そうなんだ」
「
俺の中でこの二人の組み合わせはあり得なかった、だって
「軽薄なバカ女はキライだ」と常日頃から発言していて、この超セクシーな外国人の女(って妖精だが)は、どう考えても
「いや、月の綺麗な晩に眺めてたんだよ…ほら、俺ってさ、天文にも興味あるじゃない?」
「そうだっけ?」
なんか怪しい。チラと妖精の女王見ると、ふふと意味ありげに笑ってた。
俺が怪しんでいるのも気づかず、兄さんは言葉を続ける。
「その日は満月で今日も月がきれいだなぁって眺めていたら、この
ますます怪しい!
日頃から他人の運命の出逢いとかいう発言を鼻で笑っていたようなタイプなのに、
このザマはなんだ!
これも妖精の魔力(あれ?妖精って魔法使えたっけ?)かと思うと、ゾッとした。
「信じらんない…」
思わずつぶやいてしまう。
「ところでさ、LINE読んだよ、今までの話まとめると、ティナの妹さんが
「そ、そーなんだよ!すんげーウザくてさぁ」
すがるように窮状を訴えようとしたが、
「いいじゃん、
「あら、そんなことないわよ」「いや、そんなことないんだが」
妖精の女王ティタニアと俺はほぼ異口同音に答えた、
「じゃあいいじゃん、それとも何か?他に好きな
図星だ。
俺の顔は自分でもわかるくらいみるみる赤くなってった。
「ハハーン図星か、相手はどんなコなの?」
「幼なじみの美月ちゃん」
俺はティタニアが聞いてるのも構わずに正直に答えた、自分に他に好きな女の子いるから諦めてと説得してもらいたい気持ちもあったから…。
そして美月ちゃんは昔兄さんとも一緒に遊んだことあって知っていたから、
打ち明けても恥ずかしくはなかった。
「へぇ、おまえまだあの清楚系美少女のこと好きなんだ?まー確かに
50人くらいって…、いい加減グループ名覚えてよ…と、俺は呆れた。
と、同時に
「清楚ですって!?」
いきなりティタニアが声を荒げ、目が吊り上がった。
「うわ、おっかねー!」
マジで怖い顔になったんで、俺は小さく叫ぶ。
ふと気づくと、
「!?」
昨日から驚きの連続で、頭が追いつかない…。
「今だけ彼の時間を止めたのよ」
ティタニアはそう言って
「なに、アンタ清楚な女が好きなの?」
美人だけど怖い表情で俺に迫ってきた。
「こ、怖いっすよ!そーだよ、俺は清楚でかわいらしい美月ちゃんが好きなんだよ、だからリラを好きになるの、ありえねーから!」
正直に言えばなんとかしてくれるだろうと思った、けれども、
「はぁぁ、よりによって清楚ねぇ〜!我々妖精族の女はなぜだか人間に清楚だと思い込まれて迷惑してんのよねー、妖精であるとバレると、こんなハズじゃなかったとか妖精っていえば清楚じゃないの?って言われるから、いつしか清楚系な女がイヤになったのよね〜」
意味不明なこと言いだした、知るかよ…。
でも確かに疎い俺でさえ妖精の女は清楚ってイメージあったから、リラやティタニアが出てきたときは仰天したもんだ。
「じゃ、俺はあんたら妖精族が最も嫌うタイプの女が好みってことか」
しめしめ、ここをもっとうまく突けば、リラを説得してくれるかもしれない。
「そういうことになるわね、言葉の上では…でも実際は外見的特徴なんかじゃなくてね、嘘つきとか欲張りとか腹黒いとか、性質的に良くない女が我々妖精族の女が嫌うタイプで、私が個人的に清楚系をイヤなだけなんだけどね」
それで鬼の形相になったのか…。この手で女王からの説得は厳しいと一瞬ガッカリしたが、ふとひらめいた。
「 なぁ…もしかしてアンタ旦那いるの?」
普通に質問したつもりが、
「ちょっと!この私に向かってアンタとは何様!?」
軽くキレられた、
「す、すんません…」
メンドくせーなぁ、一応謝っとく。
「ええ、いるわよ、それが何か?」
開き直ってやがる、だいたい人間界の常識じゃ、既婚者が独身者を欺き誘惑するなんてひでー話だ、それ言ったところで通用しなさそーだが…。
「いやさ、俺のクラスに
ありのまま伝えると、
「それ!どんなヤツなの!?」
予想以上に食いついてくる。
「えっと、俺よりうんと背高くて超イケメン・薄茶色の髪と瞳で、モデルでタレントとか言ってすでに有名らしいんだけど、俺は今日になるまで知らなかったんだよ」
ここでティタニアは深くため息をついた。
「ああ、まちがいなく私の夫オベロンだわ…なんだってまた
ティタニアは不満げにブツブツつぶやく。
「昨日リラとの会話でアンタ…いや、ティ、ティタニア様が旦那が嫌うタイプと浮気してるって話してたけど、バレたんじゃないすか?」
まさか妖精の王様が嫌うタイプの男が自分の従兄とは驚いたが、ここでうまく話を運んで全員人間界から撤退してくれないだろうか?という期待があった。
「そうねえ…確かに彼は超現実主義者で自信過剰なとこあってしかもイケメンだから、オベロンは嫌いかもねぇ…」
そうそう、その調子!さらに俺はとどめを刺すように、今日感じた不安を伝えた。
「そのオベロンさん、なんか俺の清楚でかわいらしい美月ちゃんにちょっかいかけようとしてましたよ?いいんですか、ほっといて?」
自分で言っといて思い出しムカついてきたが、『美月ちゃんは清楚』を強調して伝えてみた、ここまで言えば慌てて自分の夫を引き連れ、ついでにリラも引っ張って妖精界へ帰ってくれるだろう。
「ぬあぁぁぁんですってぇぇぇぇ〜!!??」
俺は盛大にビビって腰抜かした、だって絶世の美女とも言えるティタニアの赤い髪の毛が、いきなり炎のようにメラメラ燃え出した上に顔立ちもこの世の者とは思えないほどに恐ろしい顔抜けなったから!
「ヒィィ〜〜!」
俺は情けない悲鳴をあげた。
「オベローン!
ティタニアが突き抜けるような大声でオベロンを呼び、俺は
−−うわ、幸せだよな、これに気づかないなんて−−
今すぐこの場から逃げ出したいのに腰が抜けて動けない、いや、もしかすると金縛りにあってたのかもしれない。
こうして俺はますます深みにハマりそうだと憂鬱になった。
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