第8話 ショック!嫌われた?!

次の休み時間。

リラのヤツが俺にまとわりついてきた。



「寂しかったよーレイジ、さっきの休み時間いなくなるんだもーん」



そりゃそうだ、先程の休み時間はオマエらの王だとかいう男に捕まってたんだから、そもそもリラはこの王部オトコの正体知ってんのか?と気になったが、口も聞きたくなかった。



「どいて、俺は美月ちゃんに用事あるの」



ここではっきりさせようと、俺はリラ押しのけて美月ちゃんのいることまで行こうとした、すると、



「おい、阿辺アベちゃんよ、どーいうことか説明してくんね?」



目の前を千波大翔センバヒロトが立ちはだかる。

ああ、そういえば昨日も美月ミツキちゃんの説明求められながら後回しにしてたっけな…。ここらではっきりさせようと、ある程度ありのまま伝えた。



美月ミツキちゃんは俺の幼なじみで大切な人なんだ、それがうちがなんだか留学生をホームステイ受け入れることになって、やってきたのがリラってわけ…」



まさかリラがライラックの苗木から出てきた妖精とは言えないんで、テキトーに理由作った。



「それはわかってっからさー、その美少女二人がなんでオマエみたいな平凡なオトコに惚れちゃうわけ?」



こうもはっきり言われてしまうとグサリとくる、確かに俺はブサメンではないがこれといって取り柄のない平凡な高校生だ。

くやしいけど、阿辺怜士アベレイジという名前のとおりだ。



「レイジは優しいよ?リラにはピンときたもの」



ここでリラがしゃしゃり出てきて、俺に抱きついた。



「ヒョー!やるじゃん!」



一部の男子生徒から歓声があがる。



「ちょっと待って!」



ここで美月ミツキちゃんが自分の席からガタっと立ち上がった。



怜士レイジくんとは単なる幼なじみで、なんでもない関係ですから!」



いきなり否定され、俺は打ちのめされた。



「え、そんなぁ…」



「そりゃそーだよね、有名な会社の社長の令嬢が、庶民の阿辺アベちゃんなんて相手するわけないもんな」



大翔ヒロトのヤツ、相変わらずグサリと刺さること言う…。



「あの、誤解しないでくださいね、うちは父が一代で築き上げただけなので、由緒正しいお嬢様ではありませんから、皆さん気軽に話しかけてくださいね」



俺のショックをよそに美月ちゃんが好感度の上がる発言をしたため、教室中が沸いた。



「それなら」



ここで今まで黙ってた王部オウベロンがいきなり声をあげ、つかつかと美月ちゃんの元へと歩み寄った。



「この僕と最初のお友達になってくれませんか?」



公衆の面前でなんと大胆な発言を!しかも美月ミツキちゃんオトコ免疫ないんだぞ、怖がらすなよ…と思ってたら、当の美月ミツキちゃんポーっと頰を赤らめていた。



「いきなりカップル誕生か?」「くやしいけど長谷川さんならしかたないよねー」クラスの連中、口々に感嘆…。



「み、美月ミツキちゃん…」



俺はフラフラと美月ミツキちゃんの元へと歩み寄ろうとした。



「こっちに来ないで!」



いきなりの拒絶。



怜士レイジくん…あなたつくづく見損なったわ、ホームステイしてる留学生の娘さんに手を出してそ知らぬ顔をしているなんて、ほんっとサイテーね!」



このトドメのひとことが、教室中をさらに沸かせた。

一体どーしたらそんなに話が飛躍するんだ?俺はなにも手出しなんかしちゃいねーよ、と言おうと思ったら遅かった、



「お前マジかよ!」男子からはこう言われてど突かれ、

「ヤダー、サイテー!」「イケメンじゃないくせにね」「キモいわ」女子からは色々ひどいコトバを浴びせられ、散々な目に遭う。

一番仲良しの大翔ヒロトでさえ「マジか、このヤロー」と襟首をつかんできた。



「やめてー、私のレイジに何しますかー」



リラがこう庇ってくれるのが火に油で、そうこうしてるうちにど突きだけではすまされなくなり、誰かに髪を引っ張られた。



「イテテテ…やめてよ、俺の話も聞いてよ…」



こう言うも誰も俺の言うことに耳を貸さず、むなしくなる。

ここで思わぬ助け舟が入る。



「君たちやめたまえ!」



王部オウベロンだ。



「乱暴は良くないよ」



彼のこのひとことで、教室中がシンと静まり返る。



「君、大丈夫?」



誰かにど突かれて尻もちついた俺に優しく手を差し伸べる。

先程の休み時間に俺のこと脅した態度とは真逆だ。



「すてき…」「さすがロン様ね」「紳士だわ」


女生徒の間で感嘆の声があがる、男子生徒も男子生徒で王部オウベロンに見とれている。

ちぇ、化けの皮はいでやりたいもんだぜ…。

俺はなんだかムカついて王部オウベロンの手も借りずに自力で立ち上がった、これがまた好感度ダダ下がりだったんだが…。



−−絶対逃げてやる–−



俺はこう固く決心した。



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