第5話 押しかけカノジョ
次の日。
フツーに目が覚める。
ベッドの中で思いっきり伸びをしてから起き上がる。
--昨日のアレ、夢だといいんだが--
一階へ降りた。
リビングダイニングに陽が射し、テーブルの上に無造作に惣菜パンが置いてある。
今日は焼きそばパンだ。
母親は漫画のネタが見つかってスイッチが入ったのか部屋にこもりっきり、
恐らく当分出てこないだろう。
父親は毎朝早く、俺が起きるより先に家を出る。
これが我が家の朝のスタイルだ。
朝からあんまりたくさん食えない体質だ。
キッチンへ行き、自分でカフェオレをいれながら昨日のことを思い出す。
--ありえねーよな…自分でいうのもなんだが、俺ってフツメンだし、とりたてて取り柄もねーのにあんな美女に好かれる訳ない。ドッキリか?いや、夢かもしれない--
一緒にライラックの妖精と妖精の女王のティタニアを見た父親は仕事、母親は部屋にこもり当分出てこないから、確かめようがない。
今日は登校日、焼きそばパンを詰め込みカフェオレで流し朝食を終え、いつものように身支度をした。
なんとなく怖くて庭が見れなかった、ライラックの苗木があったらアレは現実だと認めざるを得ないから…。
--もしアレが現実ならヤバいよな…逃げよう…両親ともになんだかリラに好意的だし、このまま家にいたら取り込まれる--
制服に着替えながらどうするか考えた、高校の近くに従兄の
輝浩兄さんは俺の4つ上で理系の大学に通う二年生、超現実主義だ。
当然リラを妖精だと言っても信じないだろうけれど、メーワクな外人のオンナが彼女ヅラして家に居座る…と言えば、わかってくれるだろう。
早速LINEを送る。
輝浩兄さんはもともと無精だからなかなか気づいてくれないんだが、既読つくと返信が早い。
早く気づいてくれますように…。
俺はとりあえず怪しまれない程度の数日分の着替えをカバンに詰めて家を出た。
今日は「いってきます』を言わずにコッソリ出た、どうせ仕事スイッチが入った母親の耳には入らないし、万が一昨日のことが現実だとしたら、リラのヤツが反応しついてきたら困るから。
昨夜は俺と一緒に寝るなんて言い出したらどうしようと思ったが、すんなり苗木に戻ったからホッとした。
どうやら夜中12時になったら一旦は戻らにゃならん決まりごとがあるらしい。
今日は俺が
これから
でっかい門構えの横っちょにあるインターフォンを鳴らす。
門から玄関まで数メートルは歩かなければ辿りつかない。
『はい』とインターフォンに出たのは
「おはようございます、
…少し前まではお抱えの運転手が運転する車で外出だったお嬢様が、両親の事業の経営が傾きかけたがために徒歩になったのはかわいそうなんだが、
こうして仲良く登校できるには素直に嬉しい。
『お待ちください』
相変わらず抑揚のない声で事務的な対応、俺が子供のときからそんなかんじだったから、気にならなかった。
朝から上機嫌で
「どこ行くの?」
という声とともにうしろから腕を巻きつかれた。
「うひゃっ!」
声が裏返り小さく叫んでしまった。
フワリと花のような良い香り…。
言うまでもなく、リラだった。
ああ、現実だったのかとガックリきた。
「なんだよ、ジャマすんな!」
なんだか無性に腹がたち、腕を振りほどく。
「え、ジャマなんかしないよ、一緒にいたいんだもん」
そう言ってまた腕を絡めてくる。
ふわふわとした長い金髪が俺の手先に触れる。
だいたい自分の好みは黒髪でサラサラのストレート、金髪でましてやふわふわと波打ったような髪の毛なんかにちっとも萌えない。
イラっとして腕を振りほどく、またリラが腕を絡めてくる…の繰り返しをやっているうちにギイと音を立てて門が開き、
「おはよう
ああ、リラと一緒にいるのを見られてしまった…。
なんと説明しようか…と、とっさになにも言えずにいたらリラのヤツに、
「はじめまして、私リラって言います。レイジの恋人です、よろしくね!」
なんて自己紹介されたもんだから、俺の怒りが頂点に達した。
「いい加減にしろよ!しつこいんだよオマエは!だいたいいきなり現れて恋人宣言なんてされても知るかよ!」
朝から大声で怒鳴りつけてしまった。
俺自身の感覚では昨日から理不尽きわまりない、母親に頼まれ自分は欲しくない苗木を取りに行かされ(美月ちゃんと一緒に出かけられたのは良かったが)、
その苗木から訳わからん妖精の女が出てきていきなり恋人宣言されまとわりつかれている。
確かに美女なんだが全くタイプじゃないし、第一俺には
なのに…。
「なんかよくわからないけれど、怜士くんひどすぎない?彼女いるならいるで、言ってくれたら良かったのに…あ、はじめまして、私、
「ち、違っ、、、」
否定しようとしたら、
「はじめまして〜リラです、日本語わかるよー」
リラのヤツしゃしゃり出てきやがった!
「だ・か・ら!ちがうんだって!この女俺のカノジョでもなんでもねーから!」
俺は二人の間に入って思いっきり強く否定した、すると…。
「ひどい…ひどいわ」
いきなりポロポロ涙流して泣きやがった。
「
リラの涙を信じた美月ちゃんに思いっきり睨まれた。
「いや、だから違うの!そもそもこの女いきなり昨日…」
俺は必死で説明しようとしたが、
「さあ、もう泣かないで…」
「リラさん、ごめんなさいね、もっと話を聞きたいけれど、私これから学校へ行かなきゃならないのよ」
そうそう、これから学校、リラのいない所でゆっくり事情説明しようと思ったら、
「学校?私もそこ行く!」
とんでもない発言。
「いや、ムリだから、学校ってカンケーねーヤツ来るとこじゃないから」
実際マジでリラに学校へ行く資格なんてねーから正論述べたんだが、
「
なんだか
「ま、待って〜!」
俺も慌てて駆け出す。
リラもついて来ようとしたので、
「ついてきてもオマエ制服着てねーし、関係者じゃないから入れてもらえないよ」
一応親切(?)な言い方で伝えたつもり。
「…そうなの…、わかった…」
妙に素直に納得してくれたからホッとした。
早く
俺は
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