第10話 父に強制終了されました

あの後、アリシアナはマリアと少しお話をした。


記憶喪失になってから、マリアが自分に自己紹介するのは3回目だということを聞き、かなり申し訳なく思った。


マリアは私が産まれる前、私の母の侍女だったらしく、お母様が亡くなる間際に、お母様がマリアに『アリシアナを頼む』と言い残した事が理由で、私付きの侍女になったとの事だった。



そして話題は昨日自分が送ったという、手紙の話になる。

手紙の内容を聞き、私は流行病について思い出した。


(そうだわ…10歳の夏ならまだ来てないんだわ…。)


私が思い出してハッとしていると、心配で我慢の限界だったのか、アリシアナの父ヴィクトールがドアをノックしてきた。


「アリシアナ?…大丈夫?変なことされてないか?入っても大丈夫かい?」


(あの声は…私のお父様(仮)…?)


アリシアナは、まだ魔力循環は続けていて、思考がジークフリートに漏れていることを忘れていた。


(シア…(仮)じゃなくて実際、君のお父様だよ。)


ジークフリートに指摘されて、『どう説明すれば…』と一瞬悩んでから話すアリシアナ。



(申し訳ありません…お父様…に失礼なのは100も承知なんですが…ごめんなさい…殿下を巻き込みたくなかったのですが…。)


私は見た夢を思い出しながら、もうジーク様を巻き込まないのは無理だと思って謝った。


(よく分からないけど、シアに巻き込まれるのは大歓迎だよ…気になってたんだけど、シアお父上のことは知ってるみたいだけど記憶が残ってたの?)


不思議そうだけど答えの予想はついてるようで、たぶん、それを聞いたことによるアリシアナの反応を知りたくて聞いた様だった。


ジークフリートは魔力循環をしてなければ恐らく、『夢で見たの?』と聞いたことだろう。


(いえ、お父様……は寝てる時に見た夢でみたんです。)


アリシアナは事情を知らないジークフリートにいつまでもお父様に(仮)を付けるのは気が引けて、付けそうになりつつもすんでのところでつけるのを辞めて言った。


(夢?)


また、反応見て探っているジークフリート。

ジークフリートはアリシアナが探るために聞いているという事に気づいていると知っていてあえて聞いているようだった。


(はい、私を産んでくださった実のお母様は当時、お父様以外の将来を誓い合った婚約者がいたみたいなんです。でも――)


続きを話しかけたところでもう一度ヴィクトールの声が聞こえてきた。


「アリシアナー?」



「…………申し訳ありません…お父様、大丈夫です。」



(…続きはまた後で話しますのでその時に…。)


アリシアナはヴィクトールが入ってきたので、仕方なく1度話を中断した。


それを聞いたジークフリートは、婚約を取り付けた時のヴィクトールとの話を思い返し、『なるほどな…』と少し納得していた。


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