第2話 情報が少なすぎて対処法が分かりません…。
家族の自己紹介と一通り今の状況についての説明を聞いたアリシアナ。
ゲームの知識としての知っている事もあったがアリシアナは謎が多いキャラだったので黙って聞いていた。
私の名前は、アリシアナ・ステラ・アステール・グラスフィリア。
公爵家の長女で、今は10歳になったばかり。
1週間前の洗礼の儀式から帰った後『1人にして欲しい』と言い、人払いをしたらしい。
数時間して、侍女が夕食に呼びに来たところ、部屋の隅で首から生きているのが奇跡というくらい大量の血を流し、壁にもたれかかるように倒れた状態で発見され、そのまま1週間ついさっき目覚めるまで眠りっぱなしだったそうだ。
首の怪我は魔法で治療され、塞がっているし、跡も残っていないのに未だにズキズキと痛い。
そして父親だという人が教えてくれた現状報告の最後に、『明日、記憶喪失の件も含め王宮からお医者様が来るからね』と言われた。
自分がここに寝ていた経緯を聞いたアリシアナが真っ先に考えたのは『自殺じゃないのそれ』と他人事のような感想だった。
だか、この1週間調べ尽くした結果、近くに刃物が落ちてないこと、窓も空きっぱなし、前日までは元気だったこと等々、自殺するような動機が家族にも思い当たらなかったこともあり、自殺とは思われていないようだ。
刃物なんて、アリシアナ魔法結構チート級のスペックだったはずだし首をかっ切るなんて朝飯前だと思うのだけど……。
犯人は見つかっていないという事らしいがそれも自殺未遂だからなんじゃ……。
そう思ったものの、父母から『絶対見つけるから、安心して休むんだよ。』とにっこり微笑まれると本当は自殺かも…なんて言えなかった。
家族との話の後、目が覚めて最初に会ったブロンドの髪のメイドさん改め侍女の名前をマリアと言うらしい彼女から読めば何か思い出すかもしれないと、以前のアリシアナが毎日つけていたという日記を手渡された。
(あぁ、これゲームのアリシアナも毎日つけてて、クリア時に持ってたら2周目で別のエンディングに行けるやつだ。なぜか2周目のエンディングの内容を思い出せないけど。)
「マリア…さん?…ありがとうございます。」
「いえ、当然のことをしたまででございます。それと、私のことはどうぞマリアと呼び捨てで結構でございます。」
「……分かったわ。」
私は日記の最初のページを開いた。
日本語じゃなかったし、すごく綺麗な字で書いてあったので一瞬、『これ読めないんじゃ…。』と不安になったが、なぜかスラスラと読めた。
初めの方は普通の日記だった。
だが、最後のページだけ他の日と違っていて、短い走り書きのような乱暴な字でこう書かれていた。
『この文を見たら1人になってから下の一文を口に出して唱えなさい。いい?絶対に1人になってからよ!』
なんともゲームのアリシアナらしい口調で書いてある。
正直、ゲームのアリシアナが何を思ってヒロインを殺そうとしたのか全くわからない。
まあ、もちもん王子をとられた恨みなんだろうけど…。
最後はどんなエンドでも必ず死んでいたアリシアナは不自然なほど王子に執着していた。
ゲームのアリシアナはどこか心が壊れているような描写が多々あるのだ。
でも、アリシアナの情報はゲームを全部やっていた私にも謎なのだ。
不自然なくらいにアリシアナサイドの描写が出てこないからだ。
伏線ばっかりボロボロ出てきてるのに隠しキャラのルートの全ルートまで全部クリアしてもアリシアナについて1つも出てこないのだ。
アリシアナの謎の言動の内、1番は王子ルートに入った直後だと思う。
"君恋"の中で1番衝撃的だったのは?と聞かれれば10人中10人が『王子ルートに入った直後のアリシアナの豹変』と答えるだろう。
そもそも、"君恋"では王子ルート以外の時は
王子ルートに行くためには隠しキャラ以外の他のキャラの全ルートをクリアする必要があり、王子ルート以外ではアリシアナは優秀すぎるサポートキャラなのだ。
それが、王子ルートに行った途端に、あれほど仲良くしてくれていたアリシアナの態度が急変するのだ。
挨拶をしても無視をされ、話しかけてもあなただれですかと返され、最後には殺されかける。
王子ルートの終盤なんて、一切口を開かずに人形のような無機質な顔をしてただ見つめてくるのだ。
そのスチルが当時の私には軽くトラウマになりかけた。
何一つ喋らないまま、処刑されたり、狂って自殺したりして王子ルートのアリシアナは破滅していく。
ヒロインの殺害未遂がアリシアナの指示なのかそれともなんらかの罠かなにかにはまっただけなのかとにかくさっぱりわからないのだ。
……と、ここまで長々と語ってきたが、要は情報が少なすぎて対策のたてようがないのだ。
どうしょうもないのでとりあえずは、
ヒロインをいじめない事。
王子に惚れない事。
対策してないのと同じような感じだが、多分、それさえ守れば、見た目、家柄、共に最上級なアリシアナなのだ、人並みに幸せな人生はおくれるだろう。
私は無理矢理考えをまとめると、唯一の手がかりである日記の最後の走り書きを実行するため、『ごめんなさい…やっぱり思い出すことはないみたいです…あと、まだ少しきつくて…少し寝たいので1人にしてもらえないかしら?』と日記を読む私を心配そうに見ていた家族や使用人に伝えた。
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