第7話 戦場にかけるお友達

「お父さん!? お母さん!? 私の家族を撃たないでー!?」

 バン! バン! と眠り少女シリアの両親が戦場で敵の兵士に銃で撃たれて倒れた。

「イヤー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 眠り少女は悪夢少女セリアに悪い夢を見せられて精神が不安定にされ、どんどん孤独に追い込まれていく。

「ああ・・・・・・人の屍がたくさん・・・・・・泣いている子供たち・・・・・・私は行く当てのない難民のようだ・・・・・・私はどうやって生きていけばいいんだ。」

 孤独に追いやられていく眠り少女は頑張ろうとか、前向きに生きようという心を失っていき弱気になってしまう。

「よし! もう一息だ! 諦めろ! 生きるのを諦めろ! 人として生きるな! シリア! おまえは悪い少女として目覚めるのだ!」

 悪夢少女は眠り少女が葛藤する姿を見て傍観者の様に楽しんで見ていた。

「もう、この戦場には誰もいない。私は自分が何のために生きているのか分からない。自分が生きているのか、死んでいるのかも分からない。誰か側にいてくれないと、私の存在を認めてくれる人がいないと、私は生きていけない。だって私は弱い存在だから。」

 眠り少女は完全に孤独に飲み込まれようとしていた。

「さあ、私の手を掴みなさい。あなたがボロボロになるまで私が側にいてあげるわよ。セッセッセ。」

 悪夢少女が黒い手を眠り少女に伸ばす。

「私を必要としてくれるの? なんでもいい良い手でも、悪い手でも。一人になりたくない。誰でもいいから私を必要として!」

「堕ちた。おまえは寂しさに負けたのだ! 夢も希望も全て捨て、一人になりたくないからと言われた通りに悪いことをするだけの人形になり果てるのだ! セッセッセ!」

 予想通りの展開に悪夢少女の笑いが止まらない。

「ダメー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「え?」

 大きな声が聞こえ、黒い手を掴もうとした自分の手を止める眠り少女。

「シリアちゃん! あなたは一人じゃない!」

「私は一人じゃない?」

「あなたにはお友達の私がいるー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」「真理亜ちゃん!?」

 遂に悪夢の戦場に姿を現す超能力少女。

「バカな!? どうやって悪夢の世界に!?」

 悪夢の世界に超能力少女が現れて驚く悪夢少女。

「私は不可能を可能にする超能力少女。夢の世界に現れるくらい朝飯前よ! アハッ! それにお友達が困っていたら助けるのが本当のお友達よ!」

「真理亜ちゃん・・・・・・あれ? なんでだろう? 涙が零れてくる。アハッ。」

 超能力少女の言葉に悪夢に飲み込まれそうだった眠り少女の黒い壁にヒビが入り明るい光が入ろうとしている。

「悪い道に進ませるのがお友達じゃない!」

 悪夢少女は黒い手で眠り少女の手を掴んでしまおうとする。

「遅い! もう手遅れだ! この子の手を掴んでしまえばー!」

 悪夢少女は眠り少女の手を強引に掴みにかかる。

「させるか! 私の大切なお友達を奪わせはしない!」

 超能力少女が悪夢少女よりも早く、眠り少女の手を力強く握る。

「しまった!?」

 パッキーン! 眠り少女を覆っていた悪夢が割れ、明るい光が覆う。

「クスン・・・・・・いるんだね。私にもお友達が。」

「私とシリアちゃんはずっとお友達じゃない。」

「だって、私は体が弱くて保健室ばかりで寝てばかりだから、授業をサボってるって、真理亜ちゃんは私のことを嫌いだと思っていたから。」

 体が弱い性か、被害妄想が激しい眠り少女。

「そうね。嫌いよ。一人だけ授業をサボるシリアちゃんなんか大っ嫌い。」

「・・・・・・やっぱり。」

 暗い顔をする眠り少女。

「今度からは私も一緒に保健室で寝るわ! 二人で一緒に授業をサボろう! それがお友達よ! アハッ!」

「うん! そうだね! 今度からは私が保健室に行く時は、お友達の真理亜ちゃんが支えてね! 私一人だと途中の廊下か階段で倒れちゃうかもしれないから! アハッ!」

「任せて! 私たちはお友達よ! アハッ!」

「お友達! お友達の約束は絶対だよ! アハッ!」

 超能力少女と眠り少女にお友達の愛と友情と絆が芽生えた。

「なんなの!? この楽しい幼稚園児みたいな展開は!? 悪夢よ!? 何か悪い夢を見ているんだわ!?」

 悪夢少女が悪夢を見る異様な展開。

「コンコン。どうぞ。失礼します。いらっしゃい。」

 悪夢の戦場に鈍感少女コリアも現れた。

「ゲゲエー!? 鈍感少女!? なんでおまえがいるんだ!?」

「それは授業をサボって居眠りしていたからでしょうね。アハッ!」

 授業中にお昼寝をしていたから夢繋がりで悪夢の世界にやって来れたみたいだ。

「スリア先生が言っていた。お友達を助けに行くなら授業中に寝ても言いと!」

「はあ!? どんな教師だよ!?」

 スリア先生は、お友達教師少女です。

「コリアちゃん。」

「そうよ! 私一人じゃない! コリアちゃんもスリア先生も、みんな! シリアちゃんのお友達よ!」

「うん。みんな、私のお友達だよ。アハッ!」

 お友達がたくさんできた眠り少女は満面の笑顔が溢れていた。

「コリアちゃん! やっちゃいなよ!」

「OK! 真理亜ちゃん!」

 指示を貰った鈍感少女が戦闘態勢に入る。

「よくも私のお友達に酷いことをしてくれたな! 絶対に許さないぞ! ナイトメア少女のセリアちゃん!」

「許さないだと? どうするというのだ?」

「お友達になろう。」

「え?」

 咄嗟に鈍感少女の口から出た言葉に全員の動きが止まる。

「セリアちゃんも、みんなとお友達になろう! お友達になれば悪い夢も見せなくてよくなるよ。それより良い少女になって、みんなに楽しい夢を見せてあげて欲しいな。アハッ!」

 鈍感少女は悪夢少女にお友達に誘った。

「み、みんなに楽しい夢を見せるだと!? なんだか楽しそうだな・・・・・・って、私は悪夢少女だ! おまえらみたいな良い子ちゃんとお友達になんかなるもんか!」

 一瞬、心が揺らいだ悪夢少女だが、ノリッツコミで切り返す。

「そんなこと言わないで、お友達になろうよ! アハッ!」

「こらー!? 追いかけてくるなよ!? キモイんだよー!?」

「待て待て! お友達になってくれるまで追いかけてやる! アハッ!」

 鈍感少女はお友達をゲットするために悪夢少女を夢の世界で追いかけまわした。

「悪夢だ・・・・・・。」

「ああはなりたくないね。アハッ!」

「そうだね。私、鈍感じゃなくておバカで良かった。」

 目が覚めるまで悪夢少女の悪夢は終わらなかった。

 つづく。

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