第820話 パワー対決
☆奈々美視点☆
ブラジル戦当日。 ロッカールームで着替えながら作戦会議中よ。
「相手は世界ランク3位の優勝候補ブラジル。 今までの相手とは少々格が違いますわよ」
「そうね。 にしても監督の采配大丈夫なのかしら?」
今日のスタメンは私に弥生、紗希、奈央、遥、希望というメンバー。 目には目を歯には歯をパワーにはパワーをといったような采配。
「私はありだと思うよ。 この間見た通り、ブラジルのパワーバレーには生半可な力で対抗できないと思うし、私達もパワーに偏った編成で挑まないと押し切られかねないからねぇ」
「私もそう思いますわよ」
「そう? ならいいんだけど」
亜美と奈央がそう言うなら大丈夫なんでしょう。 別に監督の采配を信用してないわけじゃないわよ?
「で、戦い方はどすんの?」
綺麗な黒髪をポニーテールに結い直しながら紗希が今日の作戦について聞いてくる。 今日の試合の組み立てに関しては奈央に一任されている。 スタメン以外のメンバーはささっと着替えを済ませてベンチへと向かったわ。
「とりあえずまずは様子見しましょう。 どれぐらいパワーがあるのか肌で確かめてから考えますわよ。 ただし、ブロックに関してはセミオープンより遅い攻撃に対しては必ず2枚以上で対応。 これは絶対ですわ」
「了解だぜ」
「攻撃は基本的に時間差と同時高速連携を混ぜていきますわ。 時間差中心で攻めるので、遥と徳井さんは毎回クイックに跳ぶくらいでお願いします」
「OK」
「奈々美と紗希と弥生は出し惜しみ無しで」
「当たり前や。 ハナっから全力やよ」
「きゃはは。 コメットインパクトとメテオストライクでボコボコよん」
「パワーで私にかなう人間がいるかしらね」
ちなみにゴリラじゃないわよ?
「それじゃあ行きますわよー」
「おおー!」
いざブラジル戦が行われるコートへと向かうのであった。
◆◇◆◇◆◇
「日本! 日本! 日本! 日本!」
あらら、これまた盛大な応援ね。 コートへ出て来てみると客席では応援団長のゆりりんを始め、日本からの応援客達が大きな声援を送ってくれている。
「気合入るわね」
「そうやな。 わざわざフランスにまで応援に来てくれた人達の為にも、負けるわけにはいかへんで」
昨日は今一つ調子のノリが悪かった弥生も、今日はかなり調子を上げてきているみたい。
「ブラジルはキューバに負けてはいるが1セット取って一矢報いている。 ここでお前達とキューバがどれぐらいのレベル差にあるのか、大まかに測ることもできる。 全力で当たれー!」
「はい!」
セット取られなきゃ私達の方がキューバより強いって事でいいのかしら? まあ相性とかもあるだろうしそんな単純な事でもないでしょうけど。
「よーし、行ってこーい」
「はい!」
今日も監督に送り出されてコートの中へ。
「いやー、こうやって近くで見ると肩幅とか凄いわねー」
「ほんまごっつい身体しとんな……」
「はぅ。 見ただけでパワーがあるってわかるよぅ」
「まあ、言っても同じ人間だからな。 ビビるこたぁないさ」
「遥の言う通りですわよ。 パワー自慢なら私達のエースだって引けを取りませんわよ」
「まあ、やってみないと何ともね」
キューバとの試合を見た感じだと、ブラジルで一番パワーがありそうなのはエースの人だった。 まず初っ端注意よ。
ピーッ!
試合開始の合図。 サーブは日本チームの奈央からスタート。
「日本! 日本!」
客席から流れてくる日本コールに乗り、奈央が得意のドライブサーブを見舞う。
ネットを越えたところから、急激なドライブ回転によって床に引き寄せられるかのように落ちるサーブに、ブラジルの
「パワーだけや思うたけどなるほど世界3位なだけあるわ。 バレーボールこなすやん」
上がったレシーブに対しては
他の選手はまだ助走に入ってはいないしクイックは無さそうかしら?
トスは私のいるサイドとは逆サイドに立つブラジルのエースの元か方へ上がった。
間に合う! 3枚ブロックよ。
今日もセンタースタートの遥、そして今日はライトスタートの弥生と共にブロックを形成する。
「いくぞ、せーの!」
遥の合図でタイミングを合わせてブロックに跳ぶ。
「っ!」
パァンッ!
「っ?!」
「うおっ?!」
「マジ?!」
3枚のブロックを完全に無視して一番ブロックの低い弥生の指の先にワンタッチさせながら打ち込んできた。 パワーだけなんかじゃなくて上手いっ!
当然クロスに構えていた希望も届くはずはなく、あっさり点を取られた。
「なるほど、世界ランク3位ね」
「指先第二間接より上がまだビリビリしよる。 やっぱパワーもあるで」
「的確に低いブロックを見極めて上から打つ。 よく見えてますわね、お相手さん」
「ああ。 さすが世界トップクラスのチームだけあるぜ。 パワーでごり押しかと思ったら冷静な目も持ってら」
「気を引き締めてかからないといけませんわね」
「ぅん」
最初のワンプレーで相手ブラジルの強さを認識して気を引き締める。
コート内に広がってブラジル側のサーブを待つ。 偵察した時に見てわかっていることだけど、ブラジルはフローター系のような変化球は一切打ってこない。 全員が全員小細工無しの力押しのサーブ。
「来ますわよ」
パァンッ!
やっぱ強烈ね。
「はぅん!」
だけどそんなサーブも上手くいなしてレシーブして見せるのが希望。 さすがに日本の守護神だけあるわ。
「上手いですわね!」
結構な弾丸サーブだったと思うけど、希望からすればそうでもないってとこかしら?
「よし、見せてやりなさい日本のエースのパワー!」
奈央は私に合わせた長いトスを上げた。 私は助走に入って腕を振り出し惜しみせずにいきなり全力スパイクの体勢に入る。
腰を大きく捻り弓のように体を反る。 体勢を戻す勢いと腕の振りを利用し、力の全てをボールにぶつける。
ブロック2枚の横、空いたストレートに向かって打ち込んでやった。
ピッ!
「よっし!」
「ええで藍沢さん! どないやウチらのエースの力は!」
「何であんたが踏ん反り返ってんのよ」
「とはいえナイスですわ。 今の一発であちらさんの顔色が変わりましたわよー」
「あれだけの威力、本国でもそうそう見られるものじゃないっしょー」
「やっぱり奈々美のパワーは人間離れしてんなー」
「ゴリラさんだよぅ」
「後で覚えときなさいよ希望」
「はぅ」
とりあえず開幕のプレーでお互いが主砲の威力を披露。 こっちにはまだ同時高速連携や弥生、紗希のハイレベルな攻撃陣が控えている。 ブラジルも本気で来るでしょうし、ここからがこの試合の本番ってとこかしらね。
「まずここ止めて流れを奪うわよー! 皆気張っていきましょー!」
「おー!」
「やったろうやないかー!」
コートメンバーを鼓舞して士気を高めていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます