第821話 日本の守護神
☆奈央視点☆
ブラジルとの対戦が始まり2回のプレーを終えて1ー1。
サーブは日本チームの弥生へと移る。
「ナイサー!」
弥生もブラジルの選手に負けず劣らずなパワーサーブを放つ選手。 上手く主導権を握りたいところですわね。
「らぁっ!」
パァン!
弥生の声と共に強烈なインパクト音が聞こえ、ボールが真っ直ぐにブラジルコートへと飛んでいく。
相変わらず球速とコントロールの両立が出来た良いサーブですわね。 亜美ちゃんと2人で東西の月姫と並び称されていただけはある。 彼女もまた化け物の類ですわ。
しかし、そんなサーブもブラジルバレーの間では割と日常茶飯事なのか簡単に拾われている。
パワーサーブで崩すのは中々大変かもしれないですわね。
「来るぞ!」
「ブロック2枚以上はついて!」
パワーに優れたブラジルの選手のスパイクをちょっとでも止める可能性を上げる為に、クイック以外には必ずブロックは2枚以上欲しい。
今回は遥と奈々美が2枚でブロック。 紗希はクイックを警戒して
パァンッ!
「タッチ!」
奈々美の左手に当たりながらもその勢いに衰えを見せないスパイク。 しかし、そのスパイクに反応して飛び付く希望ちゃん。
「ぇぃっ!」
そのスパイクをワンハンドレシーブで拾い上げる。
「ナイスですわよぉ!」
さすが日本の守護神! 小さくて華奢な身体であれをワンハンドで上げる
さすがに上手く私には返せなかったみたいだけど、拾ったという事に意味がある。
私は急いでボールの下へ移動してトスを上げる準備に入る。
ここはAクイックに跳ぶ遥を囮にして紗希の時間差攻撃で!
ブロックはクイックに跳んだ遥に釣られてくれている。 その遥は打つ振りだけをしてそのまま着地。 その横から紗希が高々とジャンプし、ブロックのいないネット際からお得意の……。
「メテオストライク!」
を打ち込む。 後ろ気味に布陣していたブラジル守備の遥か手前の位置に落球する急角度の打ち下ろしスパイクである。
ピッ!
「どうよー!」
「ナイスやで紗希ー!」
「今のは奈央のトスが良かっただけよん」
「いいえ、希望ちゃんの好レシーブのおかげよ」
「奈々美ちゃんのワンタッチのおかげだよぅ」
と、希望ちゃんは謙遜しているけど、あのスパイクをワンハンドで拾い上げるのは並の選手じゃ無理よ。
「とりあえずブレイクしたし、このまま行きますわよ」
「よっしゃ! 次はウチに上げてぇな」
「状況見て私が考えますわよ」
弥生は口を尖らせながら「しゃあないなぁ」と言いながらサーブを打ちに行く。
パァンッ!
弥生のサーブはブラジルにはあまり効果は無さそうだわ。 この分だと今日のメンバーじゃ中々サーブで崩すのは辛そうね。 さっきみたいにラリーで何とか勝っていくしか道は無さそうかしら。
「単純なパワープレーでは崩れんてか」
「また来ますわよ!」
今度も紗希がクイックに対応する。 今回はそのクイックを使ってきた。 オープンやセミで攻めてくるブラジルにしては珍しい。
パァンッ!
ブロック1枚は簡単に躱される。 まあ仕方ない。
「とぅ」
「?!」
そのクイックに対して、またもや希望ちゃんが反応してダイビングレシーブしている。 今回は両手を使って完璧に拾い上げる。
「やるやん!」
「本当にねっ!」
急いでボールの下へ入りトスの準備。 遥がCクイックで入ってくる。 その後ろでは舌舐めずりしながらトスを待つ子がいるわ。
「しょうがないわね」
時間差のバックアタックで行きますか。 私もまだまだ甘いわね。
「はいっ」
「よっしゃあ! 喰らえやブラジル!」
遥の隣から勢い良く飛び出す弥生。
「おらっ!」
パァンッ!
ブロックは1枚いたがそれをストレートで躱し決めて帰ってくる。
「しゃいっ! ブラジルなんぼのもんやねん!」
「いやいや、今のも希望ちゃんのレシーブのおかげですわよ?」
「希望、今日もキレキレね」
「あ、あはは。 あれぐらい、奈々ちゃんのスパイクと比べたらまだまだだよぅ」
「おお、たしかにせやな。 言われてみたら藍沢さんのスパイク受けた時の方がビリビリしよるわ」
「きゃはは」
たしかに奈々美のスパイクはブラジルチームのパワーにも勝ると思うけど、それでもあんな風に拾えるのは希望ちゃんぐらいかも。 新田さんでも出来るかどうか。
「よっしゃー、どんどん行ったるでぇ」
弥生のサーブ。 これも当然拾ってくるブラジル。
「ここも2枚でブロックー!」
弥生と遥でブロックにつくも、ここはきっちりと決められて3-2。 それでもリードしているのは大きいわよ。
「このリード大事に行きましょ。 ミスは無いようにね。 あと、ここからは同時連携も使っていきますわよ」
「お、どんどん行きましょ」
コートに散らばりブラジルからのサーブに構える。
パァンッ!
相変わらず小細工無しにパワーサーブをぶっ放してきますわね。
「おわっ?!」
真正面とはいえ強烈なサーブ。 普段レセプションに慣れていないと拾うのも難しい。
弥生はこれでも亜美ちゃんと同タイプのオールラウンドな
「ナイスですわ弥生」
「ちょい乱れてもうた。 すまん!」
「構いませんわよ! 走って!」
ここは確実に取りに行くために同時高速連携で攻めるわよ。 前衛3人と後衛の弥生がほぼ同時に助走に入りジャンプ。 私もジャンプトスの体勢に入りながら相手のブロックや選手の立ち位置を横目で確認し、トス先を選択する。
「紗希っ!」
「あいよー!」
腕を振り始めている紗希にトスを合わせる。 もう何度も合わせたトス。 ドンピシャで紗希の振る手の先へコントロールする。
パァンッ!
ピッ!
ブロックの追いつかない超高速の連携にはブラジルさんも舌を巻いたご様子。 恐らく情報としては知っていても見るのは初めての連携。 身体と頭がついていかないでしょう。
4-2でローテーション。
「さて、ここからですわね」
「何がや?」
「希望ちゃんがいなくなるここからの数プレーが鍵ですわよ」
「あぁ、たしかにな……」
現状安定してブラジルの攻撃を防げているのは希望ちゃんだけ。 その希望ちゃんが抜ける事によって私達日本の防御力はダウンする。 ここを凌げなければ私達に勝ち目は無いわよ。
「ここしっかり守り切るわよ!」
「了解!」
希望ちゃんの代わりに
サーバーは遥。 この子もパワーサーブを武器とするタイプ。 だけど、その手のサーブはブラジルには通用しないようね。 これも簡単に拾われている。
「ブロック2枚!」
「せーの!」
紗希と徳井さんの高さのあるブロック2枚。
パァンッ!
「ひぃ?!」
「ワンチ!」
紗希がワンタッチを取ってくれるも、そのボールに反応出来ずにあっさり決められてしまう。
希望ちゃんがいない穴は埋まりそうにありませんわねぇ……。
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