第775話 バーベキューを楽しもう

 ☆奈央視点☆


 我が別荘地の海へと皆でやって来て、早速海水浴を楽しんでいるわ。

 それぞれ思い思いに遊んでいるわよ。

 奈々美、麻美、紗希はゴムボートを今井君に押させて寛いでるし、亜美ちゃんと希望ちゃん、渚は波打ち際に座って話をしている。 遥は海でもガチ泳ぎしてるし佐々木君は海に潜ってなやら海の生き物を観察してるわ。

 春人君はパラソルの下に寝転んでるし。 な、何しに来たのかしら? 楽しんでるのかしらね?


「春人君ー。 泳がないんですのー?」

「あー、もう少ししたら行きますよ」

「い、今は何してるの?」

「充電ですかね」


 じ、充電ね。 まあたしかに皆の全力についていくのは結構体力がいるものね。 特に麻美と紗希のペースに合わせようとすると大変だわ。 長年紗希とつるんでる私でも大変だもの。


「では行きますか」

「ですわね。 紗希達に合流しましょう」


 ゴムボートに乗り寛ぐ紗希達のグループへと近付いて行く。 今井君も押すのは疲れてきたのかゴムボートに捕まったまま休憩している。

 そんな今井君に鞭打つように笑いながら「エンジン止まってぞ夕也兄ぃ!」と発破をかける麻美。 容赦無いわねあの子。


「おー春人ー。 エンジン係変わってくれー」

「嫌ですよ。 頑張ってください」


 と、今井君の応援要請をサラっと拒否した春人君。 はぁ、かっこいいわ。


「なはは! しょうがないなぁ夕也兄ぃは。 私が手伝ってやろー」


 自分からゴムボートを降りて今井君の隣に並び「うおりゃー」という元気な声を出しながらボートを押し始めた。 自分が楽する為に今井君をエンジン係にしたんじゃないのかしら?


「速いぞ麻美エンジンー! きゃははー!」

「元気ですわね相変わらず」


 私もゴムボートに乗り込み寛ぎグループに参加する。 春人君はゴムボートの取手部を掴み、ボートの行方に身を任せるように脱力して浮いている。 変な人が多くて疲れるわね。


「奈央、バーベキューは何時から?」

「今10時だし、早めの11時くらいから始めましょ」

「りょ!」

「麻美。 皆にも伝えたいから移動よろしく。 まずはあそこでガチ泳ぎしてる遥ですわよ」

「りょーかーい!」


 元気良く返事したかと思うととんでもない速さでゴムボートを押しながら泳ぎ始める麻美。 あっという間にガチ泳ぎしている遥の前に飛び出して正面衝突していく。


「おわっ?! な、何だよ一体?!」

「精が出るわねー。 集合時間伝えてなかったから伝えにきましたわよ。 11時には集合してバーベキューね」

「おー! わかった!」


 遥に伝え終えたので次は佐々木君ね。 彼は今少し沖の方で潜ってるみたいだわ。


「麻美、佐々木君探せる?」

「おー! 任せてー! 水中ゴーグル着用! ターゲット宏太兄ぃ! 索敵開始ぃぃ……ブクブク……」


 元気良く潜水を始める麻美。 ちなみに姉の奈々美は相変わらずゴムボートの上でだらけているわ。


「ブクブク……ぷはー! 宏太兄ぃの位置捕捉しましたー! 向かいます! うおー!」


 せわしなく動く麻美を見ながらボートの進む先を見つめていると、海面から急に佐々木君が顔を出した。 これまた狙ったかのようなタイミングで、ボートは佐々木君の後頭部を直撃した。


「のわっ!? 何だ一体……ってお前等か」


 何か手に謎の生き物を持ちながら振り向く佐々木君。


「お昼のバーベキューは11時から始めるってさ」


 私の代わりに奈々美が伝えてくれたので、私は黙っている事にした。 佐々木君は「11時だな!」と返事したかと思うとすぐさま潜り直す。 何してるのかしらね?

 まあ佐々木君が何してようと別に構わないけれど。


「さて、あとは亜美ちゃん、希望ちゃん、渚ですわね」


 先程まで3人で座って話していたはず。

 ビーチの方に目をやり3人を探す……。


「いたいた。 何かもうバーベキュー場にいますわね」

「きゃはは。 佐々木君や遥より気が早いわねー」


 多分お腹を空かせてるんじゃなくて、どんな風になってるのかの下見とか、バーベキューの前準備をしてくれてるんだと思うけど。


「亜美姉のとこまで行くー?」

「いえ、面倒だからここから伝えますわよ」

「どうやって伝えるのよ……」

「まあ見てなさいな」


 まずは亜美ちゃんに向かって大きく手を振りこちらに気付かせる。 しばらく手を振り続けていると向こうも気付いて手を振り返してきた。

 そしたら次は手旗信号で亜美ちゃんに用件を伝える。


 パッパッパッ……


「何してるんですか奈央さん?」

「手旗信号」

「て、手旗信号ってあんた。 さすがの亜美でも読めないんじゃ……」


 と、奈々美が亜美ちゃんの方を見た時である。

 亜美ちゃんもキレキレの手旗信号で返事を返してた。


「ら・じ・や・だ・よ」

「嘘でしょ……」

「きゃははは!」

「あははは、凄いなぁ亜美姉も西條先輩もー」

「俺にはただ適当に手を振ってるようにしかみえなかったが?」

「伝わったのでヨシ!!」


 さすが私のライバル。 手旗信号も余裕みたいね。



 ◆◇◆◇◆◇



 11時ですわよー。


 予定通りバーベキューを始める為に集合した私達は、早速準備に取り掛かる。


「火を点けるわよー」


 鉄板を温める為に火を点ける。 その間に他の人は、持ってきたバーベキューの具をクーラーボックスから出して並べてくれる。


「美味そうだな」

「高級品ばかりだもの」

「さすが奈央だな!」

「まあね」


 鉄板が温まってきたらいよいよ具を焼いていくわよ。 お肉もとうもろこしも、野菜や魚なんかも全部焼いていく。


「おお……腹減るなぁ」

「宏太、まだ生焼けよ」

「わかってらい!」


 今回のバーベキューは、佐々木君と遥がめちゃくちゃに食べるのを想定して多めの具材を用意してある。 さすがに食べ尽くされる事は無いと思うけれど……。


 更に数分程鉄板で焼き続けて……。


「もう大丈夫そうかな? お肉とかも食べられそうだよ」

「よっしゃ!」

「いただきます!」


 言うが早いか、約2名が物凄い勢いで具を取り始める。


「あ、ちょっと2人とも! 皆の事も考えて……」

「うめー!」

「やっぱりバーベキューと言やぁ肉だよな!」


 ダメだわこりゃ。 話を聞いてないわよこの2人。


「無駄よ奈央。 この2人が満足するまではどうしようもないんだから」


 皆もはや慣れたもので、2人が取らなかった具を少しずつ食べながらゆっくりとバーベキューを楽しむ。


「皆でバーベキューは新拠点でやって以来だわね」

「いなかった人もいるわよー」


 そういえば紗希、遥、渚はいなかったわね。


「高1の時にもしたけど、あの時はまだ麻美ちゃんも渚ちゃんも春くんもいなかったしねぇ」


 そう考えるとこのメンバーが揃ってバーベキューするのは初になるのかしら? 随分と賑やかになったものねー。

 っと、そういえば新拠点の名前を付ける付けないみたいな話があったわね。

 せっかくだからこの場で会議でもして決めちゃうのもアリかもしれない。

 そう思ってバーベキュー中の皆に話を振ってみると、亜美ちゃんが「皆の家だよ!」とすぐに候補を挙げてくれた。 どうやらずっと考えていたらしいわ。 特に他の候補も無かったのでとりあえずは「皆の家」と呼ぶことに。


 ふふ、いいわね。

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