第776話 ビーチフラッグ大会
☆亜美視点☆
「ふぅ、食べたねぇ」
「おう」
奈央ちゃんの別荘へと海水浴に来た私達は、お昼のバーベキューを少し早めに楽しみました。
大量に用意してきたおかげで宏ちゃんと遥ちゃんが2人で食べ尽くすという事も無く、皆それぞれ満足いくぐらいには食べられたみたいだ。 食べたばかりなので、少し休憩を挟んでからお片付けをすることにしたよ。
「しかし、結構バーベキューしてるグループ多いな。 至る所から美味しそうな匂いが漂ってきやがるぞ」
「まあバーベキュー場併設の海水浴場ですもの。 普通ですわよ」
「匂いかいでるとまた腹が減ってくるな」
「え、あれだけ食べて?!」
宏ちゃんのお腹の中はどうなってるんだろう? 普通あれだけ食べたらしばらくは大丈夫なはずだけど。
「お前あんまり食ったらこの後のビーチフラッグきついぞ」
「まぁ、お前には勝てそうにないから別に」
そう言えばこの後はビーチフラッグ大会があるんだっけ? キッズ部門、男子部門、女子部門に分かれている。 男子の方には夕ちゃんと宏ちゃんが、女子部門には私、奈々ちゃん、奈央ちゃん、紗希ちゃん、遥ちゃん、麻美ちゃん、渚ちゃんが参加予定だ。
どうなるんだろう、楽しみだねぇ。
◆◇◆◇◆◇
13時だよー。
スピーカーからビーチフラッグ大会参加者募集開始の案内が聞こえてきたので、私達参加組は受付へと向かう。
「結構な人がいるね」
「優勝賞品がこの大会を主催してるホテルの無料宿泊券ですしね」
要は来年使える無料券だね。 私は別にいらないけど。 ペアチケみたいだけど、私は皆で行きたいからね。 でも優勝は狙うよ!
ただ、こういう超スプリント戦はスロースターターな私はあまり得意ではないんだよねぇ。 逆に強いのはスタートダッシュからフルスロットルな奈央ちゃんや麻美ちゃんだ。
「かきかき」
用紙に必要事項を記入して提出っと。 ちらっと参加者たちを見た感じ、足には自信がありそうな人やそもそも賑やかし参加みたいな人まで様々だ。 私達は他のお客さんの目にはどう映るんだろう?
「皆、OK?」
「うん」
「えぇ、亜美は私が倒すわ」
「いやいや、当たるとは限らないけど」
奈々ちゃんは相変わらず私を目の敵にするね。 昔からだけど。 他にも奈央ちゃんからも熱い視線を受けている。 もうバチバチである。
他にも紗希ちゃんが奈々ちゃんをライバル視してたり、遥ちゃんが奈央ちゃんをライバル視してたりと中々熾烈なライバル関係が形成されているよ。
「すいませーん。 西條奈央様ー?」
「はい?」
「お客様はキッズ部門に……」
「大学生ですわよ!」
どうやら見た目で子供扱いされてしまったらしい。 色々説明してちゃんと大人部門に参加できるようになったようだ。 大変である。
「まったく。 人を見た目で判断しないで欲しいですわね」
「仕方ないっしょー。 どう見ても子供だし」
「むきーっ!」
紗希ちゃんにおちょくられて暴れまわる奈央ちゃん。 うん、こうやって見ると子供だ。
両腕をブンブン振り回しながら紗希ちゃんに突撃するも、片手で頭を押さえられて空回りしている姿なんか特に。
誰が見ても天下の西條グループのご令嬢には見えないだろう。
「こん中じゃ奈央か亜美ちゃんが優勝候補かしらね?」
参加募集にやって来た人達を見回した奈々ちゃんが、そう言う。
「世の中広いんだから、どんな凄い人がいるかわからないよ?」
「いや、亜美や奈央ちゃん以上の化け物はそうはいねぇだろ……」
夕ちゃんにそんな事を言われてしまう。 奈央ちゃんはともかく私は人間である。 しかし、この観光客さんの中に一流アスリートが紛れ込んでいるとも中々考えられないし、奈央ちゃん辺りが優勝する可能性は高い。
「私だって自信ありよん!」
「紗希ちゃんも足速いもんね」
そうそう。 奈々ちゃんとほとんど変わらないタイムを持っていて足は速い。
「それだけじゃないのよビーチフラッグってのは。 むふふ」
不敵に笑う紗希ちゃん。 どうやら自信ありのようだ。 紗希ちゃん、何か秘策でもあるんだろうか?
◆◇◆◇◆◇
というわけで時間になりました! ビーチフラッグ大会の始まりである!
まずはキッズ部門。 ある程度の年齢層に分けられた子供達が、1本のフラッグを目指して頑張って走る姿は可愛らしいの一言。 負けて泣いてしまう子もいたりして応援に熱が入る。
「楽しそうだね」
「希望ちゃんも出れば良かったのに?」
「私はそこまで速くないから。 それに目立ちたくないよぅ」
マシになったとは言えアガリ症の気はまだある希望ちゃん。 人前に出て目立つのはまだまだ抵抗があるみたいだ。 こういう時にこそ特訓に使えば良いのに。
キッズ部門が全て終了し、優勝した子が表彰台でインタビューを受けている。 可愛いねぇ。
次は大人男子の部が始まるとの事。 これには夕ちゃんと宏ちゃんが参加。
「2人とも頑張んなさいよー」
「おー」
「まあ適当に頑張ってくらぁ」
どちらも何とも気の抜けた感じである。 まあその時になればやる気出すんだろうけど。
「あの2人、どっちが上位に残るかしら?」
「夕也でしょ」
紗希ちゃんの問いかけに奈々ちゃんが即答する。
たしかに短距離のタイムは夕ちゃんの方が少し良い。 順当なら夕ちゃんだけど、対戦相手にも寄る気がするよ。
男子の部は滞りなく進み、キッズ部門とは違った真剣勝負が見られて中々楽しいね。 あ、宏ちゃんの番だ。
「佐々木君、頑張ってねー」
「宏太兄ぃ負けたらドロップキックだぞー!」
紗希ちゃんと麻美ちゃんの応援もあり、まずは宏ちゃんが1回戦を突破。 結構余裕があり、スタンディングでフラッグを取っていた。 にも関わらず、宏ちゃんは首を傾げながら戻っていく。
「どしたんだろ?」
「宏太くん、なんか微妙な顔してたね?」
「余裕だったのに何かあったのかしら?」
考えて見てもよくわからないので、次の夕ちゃんの応援に集中する。
夕ちゃんも特に苦戦する事なく1回戦を突破。 しかし夕ちゃんも何やら気になる事があるらしく、首を傾げながら宏ちゃんの所へ歩いていく。
「2人で何やら話してますわね」
「2人とも何か気になってるみたいだしその事じゃないか?」
遥ちゃんの読みは多分当たっている。 2人が気になっていることが同じ事かどうか、それを確認しているんだろう。
とはいえ、そんな事お構い無しに勝ち進む両名。 遂に決勝戦で対決する事に。
「終始首を傾げながら、結局決勝まで残りましたね」
と、春くん。 やっぱり2人は速いね。
「始まりますよ。 どっちと頑張ってくださいー!」
渚ちゃんは夕ちゃん贔屓せずに両方の応援に回るようだ。 良い子である。 かく言う私も両方応援だよ。
お互い好スタートを切り走り出すも、一瞬夕ちゃんがバランスを崩す。 その隙に宏ちゃんが抜け出し、体勢を立て直した夕ちゃんが少し差を詰めてからダイブ。
しかし、僅かの差で宏ちゃんがフラッグを手にして宏ちゃんが優勝した。
「おお! 佐々木君やりますわね!」
「夕也兄ぃあそこで躓かなきゃねー」
「でも良い勝負だったよ! 2人ともパチパチだよー」
といったところで次はいよいよ私達女子の出番だ。
私も頑張るよ。
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