第773話 海だー!
☆麻美視点☆
本日は8月23日! 西條先輩が企画した海水浴旅行の日だ。 一泊二日でバーベキューやお祭りが楽しめるみたいだよー。
というわけで、朝も早くに西條先輩の家に集合しているのだ。
「眠いよぅ」
「きゃはは、希望ちゃん半分くらい寝てるわね」
「朝早くに亜美に起こされたからな……ふぁー」
「早起きは三文の徳だよ」
「だと良いんだが……」
夕也兄ぃもかなり眠そうにしている。 これはバスの中では寝そうだねー。
「麻美、おはよーさん」
「おー、渚おはよー」
渚が西條邸へとやって来てこれで全員集合。 西條先輩が話を始めるのであった。
「では、皆さん集まったみたいだから行きましょうか。 着替え等の大きな荷物はトランクに放り込んで下さいな」
言われた通り、大きなバッグは側面のトランクに放り込んでバスに乗り込む。
「マロンもトランクに入るー?」
「みゃっ?!」
と、冗談を言ってやると体をビクッとさせて亜美姉の服に爪を立ててしがみ付く。
「なはは、冗談冗談ー。 可愛いねーお前はー」
「みゃ」
本当に人の言葉がわかるかのような反応をする。 賢い猫だ。
今日は西條家の私有バスという事で、キャリーバッグの中から出してもらっての乗車のようだ。
歩き回ったりするわけでもなく、亜美姉の膝の上でちょこんっと座っている。 本当に猫なのかー?
「マロンって猫なんだよね?」
今日はマロンもいるし夕也兄ぃは寝てしまいそうという事で亜美姉の隣の座席に着く。
「私も常々気になってはいるんだけど間違いなく猫さんだよ」
「だよねー」
「まあ、頭の良い猫もいるわな。 ちょっと賢すぎる気もしないでもないが」
前の席に座る宏太兄ぃがマロンの前で「ほれほれ」と猫のおやつをちらつかせて遊び始める。 マロン用にペットショップから買ってきたとの事。
「マンチカンってやつらは後ろ脚だけで直立することがあるんだって以前言ったよな」
「うん」
宏太兄ぃがおやつで釣っていると最初は手を上げて取ろうと頑張っていたけど、次第に立ち上がるような姿勢になってしまいには本当に直立してしまった。
「おおお! マロンが立ったよ!」
「すごー!」
これは可愛い姿だねー。 あまりにも可愛すぎてスマホで撮ってしまったー。
宏太兄ぃはご褒美におやつをプレゼントしてあごの下をくすぐるように撫でる。
「こうやって芸を覚えさせるといいぞー」
「らじゃだよ!」
亜美姉はバスが発車するまでの間、マロンに直立芸を仕込んでいたよー。
バスが発車すると、急ブレーキなどで危ないからという事でマロンはまた大人しく亜美姉の膝の上で座らせている。
夕也兄ぃと希望姉は予想通り寝てしまったよ。 亜美姉の隣で正解ー。
「亜美姉、新作の方は進捗どおー?」
「んん。 ぼちぼちかなぁ。 一応構想はもう完成してるから文字に起こすだけだけどね」
「亜美姉は仕事速いなー。 アシスタントの出番がないー」
「あはは。 受験の間はアシスタントはいいよぉ。 まだ時間あるし」
「りょーかーい」
今は私も受験生の為小説の方はお休み中。 連載分も全部提出済みなので今はフリーなのだー。 受験勉強に集中できるようにはなっているけど、結構遊んでるね。 いや、ちゃんとやってるんだよー?
「野球が題材って難しそう」
「ルールとか覚えたらそうでもないよ。 まあ話作りはまた別だけど」
亜美姉はもうルールも全部頭に入っちゃったとの事。 さっすが亜美姉。 今や歩く野球ルールブックになっていることだろう。
「歩くルールブックじゃないよ?」
「なはは」
私の考えをあっさりと看破されてしまったー。 さっすが亜美姉。 恐ろしいほどの読心術。
バスが走り出して30分が経過。 最初は物珍しそうに窓の外を見ていたマロンもさすがに飽きたのか、亜美姉の膝の上で丸くなっている。 こういう所を見ると猫なんだけどねー。
「本当に大人しいわねその子」
「うん」
「うちのハムスター達も大人しいぞー」
「そいつらはどっちかって言うと夜行性だからな」
通りで夜中になると滑車で遊ぶ音が聞こえてくるわけだー。
「奈央ー海まだー?」
「まだですわよ。 というかあと2時間は見えてこないわよ」
「うへー結構長いわね。 私も少し寝ましょー」
まだまだ時間はかかるようであるー。
私は本を読んだり亜美姉と談笑したりしながら時間を潰した。
特に小説の話題では盛り上がる。 私が小説の世界に飛び込んだのは亜美姉の影響が大きい。
正直この世界に帰ってきてくれて嬉しく思うよー。
◆◇◆◇◆◇
バスは更に約2時間走った辺りであーる。 次第に道が山道っぽくなってきた所で、ちらっと窓に目を向けるとそこには……。
「海だー!」
「おー、本当だねぇ。 マロン、あれが海だよー」
「うみゃ」
亜美姉に抱き上げられたマロンが窓の外の海を見て前足を伸ばす。 興味あるようだー。
「んー……海見えたのー?」
「ええ、見えてきましたわよ」
寝ていた皆も続々と目を覚まして窓の外に視線を向ける。
「へぇ、綺麗な海じゃない」
「この辺りは美化に力を入れてるもの。 それなりには綺麗ですわよ」
これは泳ぐのが楽しみだー。
「綺麗な水着の姉ちゃん楽しみだな夕也!」
「お前なぁ……奈々美にぶん殴られるぞ」
「ぶん殴る気も失せるわよ」
宏太兄ぃは相変わらずだなー。 そういえば水着は西條先輩が用意してくれてるんだっけー? どんな水着だろー? 夕也兄ぃを悩殺出来るかなー?
「麻美ー? 妄想ワールドに入ろうとしてない?」
「はっ?!」
お姉ちゃんに声を掛けられて我に帰る。 危うく夕也兄ぃを水着で悩殺する妄想ワールドを繰り広げるところだったよー。
「なははは」
可愛い水着だと良いなー。
バスは更に15分程走り、別荘地へと到着。 バスから降りると、色々な家が建っている中で1軒だけコテージ風の大きな家が建っていた。
「ここよ」
「おおー、雰囲気良いねぇ」
「オシャレじゃーん」
木の温もりや匂いに包まれた良い家だ。 マロンも爪の研ぎ木には困らないだろうねー。 あ、でも西條先輩に怒られそー。
「部屋数はそれほど多くないから3人部屋と2人部屋にに分けるわね」
というわけで部屋割りは男子3人部屋、お姉ちゃん、亜美姉、希望姉の3人部屋、西條先輩、神崎先輩、蒼井先輩の3人部屋、そして私と渚の2人部屋に決まった。
「荷物を置いて少し休みましょう。 お昼は海岸でバーベキューするわよー」
「お、良いなぁバーベキュー!」
「早く食いてえなー」
大食いコンビの宏太兄ぃと蒼井先輩は早くもバーベキューモードに入ってしまったようだー。
海で泳ぐよりそっちが楽しみらしい。 変わってるなー。
「ここが私と渚の部屋だー!」
「そやな。 お、海見えるやん。 ええ眺めや」
「だねー。 そだ、今晩も受験勉強するのー?」
「もちろんや」
渚は頑張り屋だー。 出会ってからずっと見てきたけど、本当に妥協を知らない努力家だ。
「じゃあ夜は一緒に勉強だー」
「やったるでー」
「その前に海だー!」
休憩が終わったら海水浴とバーベキューが待っている。 楽しみだよー。
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